私ができるまで
私の言葉に正しさは存在しなかった。
私の言葉は母に嗤われ、父に正され、いつしかその全てが他人の言葉になっていた。
両親は自信に溢れた立派な人、その言葉で私から自信を奪った。
彼らは私にとってあまりにも大きな存在であった。
故に私は彼らの言葉に従い、彼らの傀儡になり下がった。
私が彼らの思うように生きると彼らは私の頭を撫でたが、私には頭の上にある手が私を押さえつけているようにも感じていた。
彼らは私にとっての正義であり、目標であり、そして恐怖でもあったのだ。
私は彼らを恐れ、次第に彼らの望まぬ道を行くようになっていた。
そして、私にとっての彼らがそうであったように、いつしか私は彼らにとって理解のできない異物になっていた。
結局、私と両親の間には大きな溝が残った。
私は両親の支配する地を飛び出した。
しかし、外の世界も息が苦しいほど、私は両親以外の人間を知らず、生き方に無知であった。
彼らの支配を抜けたところで、私の居場所はなかったのだ。
私は望んだ。
誰かに共感される場所、私が私であることを許される場所を、そうして私が生まれた。