本日ハ晴天ナリ
最寄りの駅から乗った学校までの直行バスを降りると目の前に久しぶりな学校が見えた。シンボルツリーの欅は若葉で赤く見え、春風に揺れている。
去年買って貰った白蝶貝の綺麗な腕時計を見ると針は8:03を指していた。
立ち止まっていたらブレザーの少女が横を通り過ぎて行った。ブレザーの前を閉め、スカートも短すぎず、綺麗な水色のリュックサックを背中に背負っている。ピカピカのローファーは烏色に輝き、アスファルトでステップを踏んでいた。
──…新入生かなぁ。
少し羨ましい気持ちになる。止まっていた足を動かし、教室へ向かう階段に脚を載せる。ヒラヒラと揺れるスカートが、懐かしい空気が、学校に来た事を実感させた。
教室は3階。3階まで登るのは少し辛い。だって春休み中は友達と遊ぶ時くらいしか外に出なかったから。
少し緊張しながら新しい教室の扉を開ける。
クラスメイトは去年と同じ。
「おはよう」
「久しぶり。おはよう! 元気だった?」
すぐに気付いて駆け寄ってくれる友人に強ばっていた肩から力が抜ける。
去年と違うのは窓から見える桜だけ
本日ハ晴天ナリ 桜ハ満開
───さあ、最後の高校生活を始めよう。