表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/33

伝説。生きる英雄「龍殺し」

王が倒れてから数日後の朝、事件は起こった。それは朝番の兵が巡回の為いつもの見回りルートを歩いていた時のこと。


「ふぅ、」


いつもの巡回警備。まだ起きるには少し早い時間帯ではあるがこうして見回りをしている。

今日の巡回は俺ともう一人。いつもはあと一人いるのだが王が倒れた事により城の警備に回された。

三日前、王の間にて王が倒れているのが発見されてパーティーどころではなくなった。まぁ目眩で倒れたって言ってたらしいから大丈夫だとは思う。だけどそういう話はあまり下っ端の兵には教えられない。


俺は欠伸をしながら最後に広場の通りを歩いた。早起きのお年寄りの方々がチラホラと目に入る。早起きは健康保つ秘訣なんだそうだ。前に聞いた事がある。信憑性がないけどな。


そして広場に差し掛かったところもう1人の巡回兵が汗を流しながら猛ダッシュで俺の元に走ってきたのが見えた。


「先輩!」

「どうしたエデム、何かあったのか?」


もう一人の兵、エデムは俺に息を切らしながら身振り手振りで伝えようとするが混乱しているのか動きがめっちゃくちゃだ。

一先ず近くの椅子に座らせ落ち着いてもらう。

こんなに取り乱すような事があったのだろうか。


それから落ち着いてきたエデムから何があったのか話を聞く。


「それが、いつも俺が通る巡回ルートを通ってたら、その…ドラゴンが道のド真ん中で寝てて…」

「そうか…」


ん?ドラゴン?ドラゴンってあの伝説種の?いや、いやいや、まさか。落ち着け、俺が取り乱してどうする。恐らく聞き間違えたに違いない。


俺は一拍置いてエデムに聞き直す。きっと俺の耳が難聴だったんだ、歳は取りたくないものだ。


「その、ドラゴンが道の真ん中で寝てたんです!」

「…ドラゴン?」

「ドラゴンです!」


………


聞き間違えじゃなかった。いや、でももしかしたらドラゴンに似た何かかも知れない。一先ず現場に向かってから、それから考えよう。


もしそれが本当なら俺の手に余る問題だが出来るだけ自分達で解決しようと心掛けている。じゃないといつまでも頼りっきりのダメ人間になりそうだから。

俺はエデムに連れられ例のドラゴンが寝ている道に行くと


「…ドラゴンだね」

「はい。ドラゴンです」


本当にドラゴンが道のド真ん中で寝息をたてて寝ていた。

自然と頭は冷静だ。人は極限状態になると思考がクリアになるって聞いたけどホントらしい。


「先輩、これどうするんですか?」

「どうするつってもなぁ」


エデムは俺の方を向いてドラゴンを指さす。


どうするって言ってもどうも出来ないだろ。ドラゴンだよ?伝説種のドラゴン。古くから世界を見守ってきたって言うあのドラゴン。人がどうこう出来るレベルの話じゃないって。


だけどまず疑問なのが何故ドラゴンがこんな往来で寝ているのかだ。

普通ドラゴンは人が立ち入れないような山奥の祠や、洞窟、山の頂上に住んでいると聞く。それに人前にもあまり顔は出さないって言われている。それがこんな場所で寝ているなんて異様としか言いようがない。


「…まさか、」


多分。いやあの話が本当なら間違いない。

俺はドラゴンを見据え汗を垂らす。

ドラゴンが寝ている光景、俺の記憶の中になぜこうなっているのか思い当たることがあった。

それは昨昼の出来事。


いつもの訓練の休憩時


「そう言えば一昨日顔を出した八英雄、凄いよなー」


水飲み場で水分を補給していると地べたに寝そべり休んでいるある兵士が口を開いた。


「隕石をぶっ壊したり、万軍をたった一人で返り討ちにしたりさぁ」

「バケモンみたいに強い奴らがいた裏ギルドも壊滅させたらしいぞ」

「伝説のダンジョンをたった一人で踏破した奴もいるって…」


「マジかよ、本当すげぇな…」


そんな憧れた声を漏らし笑い合う中、俺はどうせ盛られた話だろうと鼻を鳴らした。

普通ありえないと思うだろう。だってそんなデタラメな奴ら今まで聞いたことがない。

いたとしたらもっと前に噂されてるはずだと思った。



そしてこの現場と一致する話。そう、その話に出てきた八英雄の一人、ある女の偉業。


「龍殺し…カーファドーレの、ドラゴンか…?」


話のタネとして大袈裟に盛られた話だと嘲笑していた。まさか、本当にそうなのか?


俺は暫く放心状態に陥る。その時


「やっと見つけた!こんな所にいたのね!」


上空から天使が舞い降りた。そう錯覚させるほど美しい姿形、綺麗な髪、目を奪われるその存在そのもの。吸い込まれそうな眼。正に美を体現したような女性がいた。


その女性は俺達の前に現れるとドラゴンに駆け寄ると


「せいっ!」


蹴りを入れた。


「…ん?」


あまりにも突拍子な出来事で女性の魅力から引き戻された俺は一瞬目を疑った。


その女性はドラゴンが起きたのを確認するとその背に跨り何かをブツブツと呟く。

すると突然ドラゴンはカッッと目を見開くと跳躍し羽を広げる。負担に耐えきれなかった道は抉れ石片が舞う。


「そこのお二人さん!この事は言わないでくれると助かるわ!それじゃあ!」


そう言ってドラゴンと共に去った女性。その形が見えなくなるまで俺とエデムは口を開けたまま突っ立ったまんまでいたのだった。


のちにその女性がカーファドーレ、「龍殺し」だということを知りその兵士は圧巻し、震え上がったという。


そして壊れた道は王に告げられ壊した犯人が英雄だと知りまたも倒れた王であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ