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ちょっとだけ昔のお話。バカと分かった英雄様。

レギムンド王国。王の間に続く廊下にて一人の女性が汗を流し駆ける。

手には数枚の書類ともう片方の手には大きな袋が握られている。


途中通りがかったその女性を見た侍女は頭を抑えため息をつく。またか。と。

王の間に着くまでに女性は何度哀れみの目を向けられただろう、何度同情の目を向けられただろう。


王の間に辿り着いた頃には息も上がり絶え絶えになる。服は汗で濡れ、髪も乱れていた。


ギィー


彼女が扉を開けるとそこには数人の王国兵士と王の側近、そして王様が居た。

王様は彼女を見て放った第一声が


「またあのバカ英雄達か!」


彼女は肯定、と頭を縦に振る。そして胃痛と目眩が同時に王を襲う。

深い溜息と共に漏れた疲れの色に側近は心配の声を漏らす。


レギムンド王国が誇る最強の中の最強。伝説にして生きる英雄。どんな力もその英雄達の前では塵も同然。そんな英雄が八人おりこの国を守っている。

傍から見れば羨ましい、未来盤石だと思うだろう。実際、確かにこの国は救われている。しかし、だ。その英雄達は驚愕するほどの偉業を持ち、驚愕する程常識を知らないのだ。


それを知ったのは英雄を讃える凱旋式。彼らは言った


「俺達に誰か常識を教えてください!」


民衆は笑いを誘うために冗句だと思ったのだろう、誰もその話を絵空事だと捨て置いた。しかしそれ放って置けない立場の人間は耳を疑った。

昔よりその英雄達を知るものは「またバカがバカ言ってる」と遠い目をした。


王は凱旋式の後、王城でパーティーを開いた。民も集まり賑やかにダンスや晩餐を楽しんでいる。主役の英雄はといつと箱のような物に料理を詰めるのに必死になっていたので聞いたところ家にいる少年の為にと言っていた。

王は後でまた作らせると一旦その作業を止めさせ王の間に英雄達を呼び出した。

安心したかった、確認したかったのだ。輝かしい偉業を成し得た生きる伝説が「バカ」ではないと。


「聞いておきたい事があっての」


王はそれとなく聞くために他愛もない話から入った。そして今がこの時。そう思い話を切り出す。


「ところで凱旋式の時に放ったあれなんじゃが」

「おう!なんだ!」


王にする態度ではないが今はどうでもよかった。


「確認なんじゃが子供はどこから生まれてくるか知っておるか?」


常識と言えば常識。何のアクションも起こさなくても恥ずかしがったり「何を聞いてくるんだ」的な事を言ってくれればぶっちゃけよかった。


結果。


「土の中からにゃ!それくらい知ってるに決まってるにゃ!大切に大切に、願って願ってやっと生まれてくるんにゃ!」


「…ふぁー」


バカでした。


どうやってそんな考えになるのか頭の中を覗きたいくらい全員バカで常識をしらなかった。

お金の使い方、国境って何、アホみたいに何も知らなかったのだ。どうやって今まで過ごしてきたのか不思議なくらいに。


王はその日、初めて目眩で倒れた。


それが常識知らずの英雄達初めての王様泣かせだった。

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