八英雄~王城の会議室にて。
今回短めすみません!!
「では作戦会議を始める」
俺は千人将のテルダ・リンクス。そしてここはレギムンド王国の王城会議室。そこには八英雄全員が集まり真剣な表情で居座っていた。俺はそこの警備を任され扉の前に立っている。
正直何故警備を任されているのか意味が分からないが任された以上任務は果たす。
早速司会を取り仕切る王国戦士長のクライス様はある議題を上げる。
八英雄全員が揃って真剣な面持ち。どんな話題が飛び出してくるんだ?国家規模の事か?それとも過去最大の戦争とかか?
俺は次第に頬からタラタラと汗が流れてくる。一体どんな事が議題に上がるか固唾を飲んでいると
「最近ユウが冷たいと思うんだ…」
クライス様が顔を俯かせ燃え尽きた雰囲気を醸し出す。
他の八英雄も重い空気を放ち全員が意気消沈していた。
ユウ?確か英雄が拾った子供の名前だった様な。え?まさかその事で王城で会議を開いた訳じゃないよな。いや流石に…
「これは超重大な事案だ。最優先事項だ。いいか、ユウの機嫌を損ねる事をした覚えがある奴は手を挙げてくれ。」
その為でしたー。
って言うか全員手挙げてるし!!
「前に間違ってユウが取っておいたお菓子食べちゃったにゃ…」
いやいや、それだけじゃ怒らないと思いますよ。
ミーニャ様は肩を落とし溜息を吐く。目には隈が出来ていて明らかに寝不足だと分かる。
「私も、この前、パンツ、脱ぎ捨てた、まんまに、しちゃった…」
ノア様は魂が抜け落ちたように全身から覇気が感じられず目が完全に死んでいた。
それから各々が思い当たる節を言っていた。全員が全員声が小さく落ち込んでいる様子だった。
しかし上げられる問題は「廊下を走った」「トイレを流し忘れた」「靴の踵を折ったまんまにした」など、どれもクソしょうもなかった。
王からの話ではユウという少年はとても優しく清純だと聞いている。そんな子がこれくらいで怒るのだろうか?
普段の生活を知らないからもしかしたら潔癖だったりキレイ好きな性格なら有り得るからもしれないが、話を聞く限りそんな性格ではないと思う。
「そう言えば、この前キッチンで聞いっちゃったのよね…」
八英雄のヤミナ様が静かに口を開ける。
「もういいかな、って…その後グツグツした音が聞こえて…もしかしたらユウ君…いなくなる準備をしてどこかに行っちゃうんじゃないかしら…」
その話を聞いた他の八英雄は畳み掛けられるように止めの一撃を食らいテーブルに倒れた。
中にはすすり泣く声と「ユウ、ユウ…」と嗚咽を漏らす声が聞こえる。
正直な話、何言ってんだコイツらって思った。グツグツ?それ鍋でも作ってたんじゃ無いんでしょうか、もういいかな?それ煮込み終わったって事何じゃ?
少し考えたらピースが嵌る様に分かってくる。冷たくなった理由が。そしてユウという少年に同情した。
家での苦労。後でお菓子でも持っていってあげよう。
そして俺は少しでもその子の気苦労が無くなるように八英雄の前に歩みを進めた。
「あのーみなさん」
突っ伏した八英雄の視線が突き刺さる。その瞬間一気に緊張し脂汗が滲み出る。それでも頑張っている少年の為にと声を出す。
「その、ユウ様が冷たい理由は恐らく八英雄様を心配しての事だと思われます。」
俺のその言葉を聞いた八英雄は徐々に顔を上げ始める。
「聞いた限りでは、普通の事が分からない模様の八英雄様にどうにかして教えようと頑張る姿のユウ様が浮かび上がりました。」
軽くディスってしまったがもうこの際どうでもいい。
「ユウ様はきっと立派に普通の生活を送る八英雄様を見たいのだと思います。そうすればきっと、ユウ様は笑顔でいつもの様に接してくれると私は思います。…雑兵の戯れ言、失礼しました」
そうして俺は部屋から出た。これで少しは少年の苦労も減るだろう。それと冷たいというのは多分杞憂だと思う。
王城の会議室で自分達に冷たくなったとか議題に上げる程のバカ親、もとい英雄達だ。きっと愛情が深まっていつものような態度でも冷たく思ってしまっているんだと思う。
後はあの英雄達次第です。
俺は今も会議室にいるであろうレギムンド王国が誇る八英雄に向けて密かにエールを送った。
一人称のレパートリーを増やそうか迷ってるんです…。ミーニャの一人称どうしましょ。