バカ、もとい八英雄の日常。その3
城下町。
色々な種族で賑わい食べ物、装飾品、武具、薬品など様々な物が売られている。
俺達が今いる通り、カラカラ通りは冒険などに役立つ物中心に売られている別名冒険者通りって所。
ノアさんはそこで刃研ぎ粉、刃折れの剣、初心者用の回復薬セットを買ってと頼んだ。俺に。
まぁこういう事になるだろうなぁって思って呼んだんだよね。ウチの英雄共は全員禄に買い物出来ないし。お金の使い方とかは教えたのにまるで覚えてくれない。何か買おうとする度に俺が行かないと問題が起きてる。
ミーニャなんかお金の価値知らなくて捨てたって聞いたからな王様に。
そん時は本当にビビったわ回収するにも捨てた場所にはヌシとか呼ばれてるヤバい魔物が住んでるって言うし。
思い返すと頭痛くなる話だ。もうやめよ。
その後は俺の用事、食べ物が並ぶ通りに行く。
果物、野菜、肉、菓子、全分野全て揃ってる通りだ。品揃えもいいし何より新鮮だからよくここには顔を出す。
俺は顔見知りの肉屋に行って「いつもの」っておっちゃんに言うと
「あいよ!」
って元気のいい声が返ってくる。
「お肉、いっぱい買ってるけど、あの子達に?」
隣で見てたノアさんは俺に渡される肉の量を見て呟く。
まぁそりゃあこんだけ大量に肉を買ってるんだし大体の察しはつくか。
俺は肉屋のおっちゃんから受け取り持ってきたリュックに入れながら頷く。
「そうだよ。そろそろ欲しいと思う頃だしね」
「今から行くなら、私も、ついてくよ?」
ノアさんは俺の肩をちょんちょんと叩いて聞いてくる。なんか小動物みたいだな。
ノアさんってエルフだし美形だから一見したらお姉さんって感じだけどいざ関わってみると結構甘えん坊だし、イチイチの動作が可愛いんだよな。言ったら何か言われそうだから止めとくけど。
「じゃあ一緒に行こっか」
俺は代金を払い通りを出る。途中何回もノアさんはナンパされてたけど全てスルーしてた。「なんか見えない壁が…」みたいな顔してて完璧にナンパされてた人眼中になかったと思う。二つの意味で。
それから家に帰る道を少しそれて別の道を行く。
こっからは多少道が荒く補整されていない箇所が出てくる。足元に気をつけて進まないと捻りそうだ。
まぁ今は関係ないか。
俺は道に手を構えるノアさんの方をむく。
「えい」
ノアさんは道に魔法を放つ。途端荒かった場所がモコモコと動きやがて綺麗な補整された道となった。
えい。これで終了。
一般の人が魔法使っても何日かは掛かる作業を、えい。で終わらすノアさん。まぁ伊達に英雄とか言われてないよ。さすがだね。
ノアさんは俺の方をむくとキラキラと目を輝かせて「褒めて褒めて」と全身でアピールしてくる。俺は苦笑しながらもヨシヨシと頭を撫でる。これじゃあどっちが子供か分かんないな。
そこから数十分歩くと、とても大きな建物が現れる。四角の単純な造りで外装とかは何もされてない。なんとも雑な感じ。
俺は「小さい人用」と書かれた扉から中に入る。
「あっ、やっと来たわねユウ!もう遅いわよ!!」
俺は中に入るや「龍殺し」カーファに怒声を浴びせられる。
ここはドラゴンハウス、龍が住む家。カーファが英雄となった切っ掛けの三体の火竜がここに住んでいる。
「龍殺し」そう呼ばれているカーファだが殺す事は嫌い、いつもクエストで問題視される龍に関しては説得、手懐けなどをして殺すのを回避する。元々動物が大好きだからとカーファは無駄な殺生は避けたいらしい。
んで、今は龍の手入れの為昨日からずっとここに居る。
「カーファの分の飯だってあるんだぞ。ありがたく思えよな」
「ふ、ふん!持ってきて当然だわ!」
俺は溜息を吐きながらカーファの元に行く。途中何度も龍に擦り寄られペロペロと舐められた。
龍は懐いている者には凄く人懐っこくて愛嬌がある。
そしてここで飼っている三体の龍、奥の方で寝ている小さいのがキュー、俺の後ろをずっとついてくる一番人懐っこいコイツはフェナ、カーファが座っている図体のデカいのがジーバ。
俺はリュックと袋を下ろしてカーファの元に飛ぶ。
ノアさんは奥にいるキューに近付いていった。
「ほれ昨日も一応置いておいたの気づいてたか?」
「…知ってたわよ。」
ボソリと呟いて俺の手から弁当を受け取る。
「あ、ありがと…」
最後に俺に背を向けながら消えてしまいそうなほどの小さい声でお礼を言う。
カーファは人一倍、人の好き嫌いが激しく、その美貌故に求婚してくる男性全てを「死ね、興味ない」で一刀両断。それでも今尚、絶えず届く恋文や、求婚にウンザリしているご様子。
でも仲の良い、まぁバカ英雄とは凄い楽しく会話するし笑みも絶えない。後付け加えればツンデレ。さっきのやり取りがいい例だな。
「それで?今日は家に戻ってくんの?」
「そのつもりよ」
カーファは弁当を食べながら答える。偶にだけど長期で家を空けることのある八英雄。カーファはまぁ龍関連もあるけど大体は同盟国の防衛戦の手助け。
クライスは言ってた。
「何でどこの国も未だに利のない戦いを続けるんだろうな。俺でも分かるぞ。戦争で人が死ねばその仲良くしている人が悲しむ。これだけで損じゃないか。」
バカ英雄でも分かることが他の国のトップの人は分からんのだろうよ。馬鹿みたいに意地の張り合いで長期化した戦争だってある。俺たちの軍事力を舐めるな、それだけで戦争を仕掛けた国だってある。
それでもこの辺の国はもう戦争は辞めてる。さっきも言ったけどあくまで防衛戦。戦争を仕掛けてくる相手国を返り討ちにするだけ。
大体レギムンド王国とやった奴らは戦争一切しないって誓ってる。なぜって?生きる伝説、八英雄が明言してるんだよ。
「次戦争でもしてみろ。お前らの国は無いぞ」
ってな。まぁこれ言わせたの俺なんだけどね。バレたらヤバいけど。
八英雄のみんなに頼んで言ってもらった。これで戦争は無くなっていくからって。そしたら笑顔で皆頷いてくれたよ。その時は柄にもなく涙でそうになった。それくらい嬉しかった。
まぁそのおかげもあってレギムンド王国近辺の国は戦争をしないと誓っている。
「ねぇユウ。その…」
「ん?」
カーファは食べ終わった弁当を片付け俺に向き直る。いつもスッパり言うカーファにしては珍しくモゴモゴしてる。
「いつも、美味しいご飯、ありがとね…」
「…おうともさ。」
それからは3人で、日が暮れるまで龍達と遊んだ。
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「そろそろ夕飯作らないとだし、帰るか」
「お腹、減った。」
俺はフェナから飛び降りるとフェナは名残惜しそうにコッチを見てくる。
ノアさんもカーファもそれぞれ龍の頭を撫で終えると俺のところにやってくる。まだ遊びたいのは山々だけどウチの英雄共がお腹空かせてるからな。
そうしてドラゴンハウスを出て行った。
帰り道、カーファは補整された道に驚いたが直ぐにノアさんがやった事に気づいてお礼を言った。そして日が暮れた暗い道は危険だからとカーファ灯火を宿す。瞬間、暗かった道は綺麗に茜色に色が染まり綺麗だった。
他愛もない話で盛り上がり家に着く。
戸を開ければ
「あ〜ユウとそれにノアとカーファもおかえり〜」
「私たちはついでなのね」
眠たそうに上から降りて俺達を出迎えるミルネ。
「にゃ!?おかえりにゃユウ!今日の晩飯は何かにゃ!!」
「もうお腹ペコペコよー。ユウ君早くー」
リビングからひょこっと顔を出すミーニャとお腹を鳴らしながらミルネに次いで上から降りてくるミアナ。
「ユウ!おかえり!!腹が減ったぞ!!」
「おかえりユウ。今日は帰りが遅かったが夜道は大丈夫だったか?」
筋トレをしていたと思われる程汗びっしょりなクライスとライガさんが笑顔で出迎える。
「ユウ、おかえり。私は今日チャーハンが食べたいかな」
最後に下着姿で髪を拭きながら出迎えるミズハさん。
俺は溜息を吐きながら笑顔で迎えてくれたバカ英雄、家族に負けないくらいの笑顔で
「ただいま!みんな!!」
今日の食卓はいつも通り賑やかだった。