八英雄、決断の時~その2
「えーっと?なにがどうしてこうなった」
帰ってきたのは夕暮れ時の午後。いつものように買い物に行ったのは良かった。けれど思いの外安い食材が多くって色々買ってしまった。そして帰ってきたら
床に倒れるクライスにミーニャ。階段でへたり込むノアさんにヤミナ。うーむ。一体どうしたんだ?
「おかえりにゃ…ユウ…」
「いや、うん。ただいま?」
うつ伏せで助けを乞うような形でおかえりと言われても…普通に返してよかったのかな。
取り敢えず俺は無視して荷物をリビングへと運んで行くとこれまた状況が読めない光景が広がる。
「えっと…三人共なにしてるの?」
ライガさんミズハさんミルネが床に突っ伏して何やらブツブツと呟いている。怖いよホント。
俺は冷蔵庫に買った物を入れながらこの状況を唯一、まだ正常なカーファに聞いてみる。
「ユウの学校について話してたらこうなったのよ。ミズハは会えるなんて言ってたけどあのザマね」
全て片した俺はカーファに飲み物を持っていきながら事情を聞いたが…そういうことだったのか。
確かに俺の歳になれば学校に行ってるのは常識なのかもしれないけど…何せこの八英雄がいるから常識もクソもない。それにそこまで意識してなかったしなー。
「よく言うわよ。買い物に言った時に制服着た子供みて羨ましそうに見てた癖に」
「え?俺そんなふうに見てたの?」
「自覚ないのね…」
カーファは呆れたように溜息を吐き頭を抑える。まぁ良いなーとかああいうの楽しいのかなーとか思った事はあったけど…あぁ意識してたね。
「でも俺が学校なんて言ったらこの家どうなるの?掃除は?洗濯とか出来る?ちゃんとご飯食べられる?家燃えない?」
「ふん。出来るわよ」
「ちゃんと顔みて言ってね」
汗を垂らしながら顔逸らして言われても説得力皆無だよ。
俺は苦笑を漏らしながら夕食の支度に入る。今でも倒れてるバカ英雄共は無視だ。
「ねぇ…ユウは本当に…行きたくないの…?」
ズルズルとリビングに入ってくるノアさんに若干驚きながらもテキパキと手を止めずに料理を作っていく。
ノアさんの言葉。行きたくないと言ったら嘘になるかもしれない。興味はある。だけどそれ以前に…
「バカ英雄の世話が性にあってるのかな、そっちのが楽しいと思ってる」
「ユウ…」
ウルウルと潤んだ瞳からは数滴の雫、やがては感極まってノアさんは俺へと抱きついてくる。
「ちょ、料理中だから危ないってノアさん」
「うぅ…良い子…よしよしして…」
「俺がするのかよ!」
お腹に顔を埋めてくるノアさんにやれやれと思いながら頭を撫でる。しかし甘えん坊な八英雄はノアさんだけではない。
俺の言葉を聞きつけた八英雄が涙腺を崩壊させながら俺の方へと走ってくる。
「ユウぅぅ!!俺ばぁ!!うれじぃぞ!!」
「おいクライス!鼻水拭いて!!」
「ユウ~ご飯~」
「ミルネはそっちかよ!ちゃんと席ついて待ってろ!」
「は~い」
これはまだおれが学校へ行く日は遠いかな。




