いつもと違う少年の笑顔
今回はとても短いですが直ぐにもう1話掲載するかもなので勘弁してください!
「…雨ね。」
降りしきる大粒の雨。ザァザァと屋根に流れる雨音が静かなリビングに響く。
そして薄暗いリビングのソファーにカーファ、ノア、ミーニャ、ミズハの4人が重苦しい雰囲気を醸し出し腰を下ろしていた。
「ユウ大丈夫かにゃ…」
「大丈夫、って、信じる、しか、ない…」
「……」
4人は血が出るほど手を握り自分の無力さを嘆いた。
この家に居なくてはならない、八英雄の大事にとって最も優先される少年、ユウは今この家にはいなかった。
それは時を遡ること数十分前。
「本当に1人で平気なの?」
「…うん大丈夫だよ」
笑顔を浮かべ大丈夫と手を振るユウ。その笑顔に「笑顔」はなかった。
借りたいもがあるって言ったから私の部屋に入れたけど何か少し暗いなぁ。
私の部屋で出掛ける準備をしているユウの顔はいつもより少し…ううん、結構暗かった。
普通のユウだったら散らかってる私の部屋を見たら直ぐ怒って、それでも仕方ないなって笑いながら片付けようとする。だけど全くそんな素振りを見せない。
「や、やっぱり私も…」
「いいから」
「…うん」
いつものユウからは感じられない黒い雰囲気。その後、私は何も言えないで部屋を出ていく12歳の小さな背中を見送ることしか出来なかった。
「あれ?ユウどっかいく…あっ」
もう少しで午後に回る時間帯。リュックを背負ったユウを見つけたミーニャは声をかけようと近づくが自然とユウへと伸ばした手がピタリと止まる。
思いつめたような、暗い、重い雰囲気に掛ける言葉が見当たらなかったのだ。
何故そうなのか知っているから余計に。
「(もうそんな時期にゃのか…)」
自分の横を声もかけずに素通りしていくユウを見て伸ばした手を握りしめる。
この意気地無し、なぜ止めたのか、と。
それから丁度玄関で靴を履いていたユウと階段から降りてきたカーファとノアはばったりと会う。
そして2人も明らかにいつもと違うユウに気圧され言葉が喉につっかかる。
「ユウ、あの、いってら…」
バタン。
ノアの振り絞った声は玄関の扉が閉まる音によって中断された。
そして八英雄と少年が住む家に静寂が訪れた。




