常識外れの「億戦錬磨」
「あれ?八英雄ってバカなのに難しい言葉使えてるじゃん」
とか思わないでくださいね!!これは神(作者)の魔法によって一時的に使えてるだけなのです!!
「なぁ、コイツは俺一人でやらせてくれないか?」
目の前には俺を見据えるデカイ鳥。
ユウから聞いた話ならコイツは国一つ落とせるほどめっちゃくちゃ強い奴らしい。
もしこの鳥がアスルガンダじゃなく俺達が住むレギムンドに来ていたのなら…
俺は王国戦士長として、いや、一戦士として戦ってみたい。
そんな俺の意見を汲んでくれたのか、端から戦う気が無かったのかミーニャ、ティルファ、ミズハは傷ついている兵士の看護に回ってくれた。
「さぁ、やるぞ神翼。今からお前の相手はレギムンド王国八英雄が1人「億戦錬磨」が相手をしよう」
久しぶりに胸躍る戦いになる事を願おう。何故だろう、おかしいのかもしれないがワクワクして仕方がない。自然と口角が上がってしまう。
あの時のライガとユウの戦闘の時もそうだった。
必死に戦う、生き生きと踊るユウを見てワクワクしていた。
「ははっ、俺も影響されてるな」
俺は愛刀「天上天下」を右手に持つ。
魔力は必要最低限に抑える。手加減じゃない、己の技だけで戦いたいだけだ。
「さぁ行くぞ!」
俺は神翼に向かって跳躍する。
空中戦はあまり得意じゃない…だからここだけは力を借りるか。
「ミズハ!!」
「はいはい。”空駆けよ”」
飛行魔法の超短節詠唱。
淡い光が俺を纏いやがて霧散する。
飛行魔法は言わば超越魔法に近い。元々空を飛ぶ生き物ではない者達を強制的に飛ぶようにさせる魔法。
それはこの世界に存在する属性、火、水、風、土、光、闇どれとも違う無の属性。
無属性魔法は魔法記によって覚える事ができる。もちろん魔法記なしでも覚えることは可能。そして簡単なものが多い。
しかし無属性に初級、中級、上級は無く、全ては使えるか否か。たったそれだけなのだ。練習しても使えないものは絶対に使えない。簡単なものでも使えないならそれまで。絶対に習得することは不可能となっている。
そして過去の文献には無属性を試した結果の中から飛行魔法はもっとも習得するのが難しいとされている。
100万人に1人の確率だとか。
使えればそこからセンス云々の話だ。そしてそのセンス云々に関して言えば
ー八英雄はバケモノだろう。
「おおぉぉぉ!!!!」
「キュァァァ!!!!」
鋼以上の強度を持つ羽は並のものではまるで歯が立たない。いや、例え百戦錬磨の達人だったとしても勝つことは不可能に近いだろう。
しかし常識外れのクライスは別だった。
羽と羽の切れ目に的確に斬撃を加え、反撃の羽を紙一重で躱す。それを幾度も繰り返す。
まさに「億戦錬磨」
その名に恥じぬ、何者にも負けないレギムンドが誇る八英雄の1人が、その姿がそこにいた。
「ふんぬ…!っらぁぁぁ!!!!」
遥か上空からのスピードの乗った神翼を「天上天下」で迎え撃つ。
「ふんっだらぁぁぁ!!!!
力での勝負は完璧にクライスに軍配があがり神翼は吹っ飛ばされる地面に叩き落ちる。
それを見ていた負傷した兵士達は呆気に取られていた。
災害、国落としの神翼。
数々の猛者たちが挑みそして誰一人として討伐できなかったあの神翼がまるで手も足も出ないその光景に。
「マジかよ…」
「これが、レギムンドのバケモノか…」
圧巻、感嘆、憧憬。いつの間にか兵士達の中に渦巻く恐怖は姿を消していた。
意識を取り戻しクライスの戦闘を見ながら手当てを受けているデルバは思う。
「常識を知らな過ぎるバカでなぁ」
枠から外れすぎだこのアホんだらぁ。
「ふぅ…いっちょ上がりだ!!」
凄まじい音と共に倒れ伏す国落とし、神翼。
数々の災害、天災をもたらした神翼の歴史は一人の戦士によって幕が閉じられた。




