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アスルガンダの戦い~バケモノ対バケモノ

「うぅーユウに会いたいにゃ…」

「やめて。私まで、会いたく、なる」


アスルガンダまでの馬車。もうすぐで着くと馬引きの老人が言う。

その道中、何度も老人は思ったことがあるという。


「本当にこの人達が最強の英雄達なのか」


と。


まぁそう感じるのも仕方ないと思う。

英雄って聞いてどんなのか想像し憧憬を抱くのはごく自然のことだし。こんなのかな、あんなのだろうなってハードルが上がるのも仕方の無いこと。だけどその伝説的な話を聞き及び、それを成した英雄が馬車の中で子供みたいに駄々をこね、挙句には暴れる始末だ。そんなものを見せられて英雄と信じられる方が無理な話ってものだろ。


アスルガンダに向かったレギムンド王国の英雄は「絶対殲滅」ノア・マクレーン。「水蓮氷花」タチバナ・ミズハ。「億戦錬磨」トア・クライス。「幻廻天」ミーニャ・ネコット。


どっちに行くかはジャンケンで決めこっちは負け組となっている。


「くっ…!俺がチョキを出さなければ……クソー!!!!」

「もーうるさいよクライス。早く片付けてユウの所に行けばいいでしょ」


呆れ気味に息を吐くミズハだったが


「そんな涙流しながら言っても説得力ないにゃ…」


右手がチョキで固定され1番悔しがってるのが明白だった。


「だって悔しいんだもん!!何が嬉しくてユウが居ない場所に行かなくちゃいけないのさ!」


涙ながらに叫ぶミズハに老人は苦い顔をする。


もうすぐでアスルガンダに現れたモンスターとの戦闘が始まるというのに何と気の抜けた奴らなのだろうか。


今も暴れるモンスターは古代種、「神翼(フィーシル)」と聞く。

それはかつて国落としの名がつけられた伝説の神鳥。手に負えないのも無理はない。討伐が諦められた最古の鳥、誰も倒したことがないのだ。

その羽から繰り出される無数の刃風は大地を切り裂き大気を揺るがす。天気さえ変えてしまうその羽には多くの者が怯え、震えた。


文献に載る神翼には弱点すらないと言われている。最早本当に勝てるのかさえ分からない。


そんなバケモノと戦うというのに、何故。


「あ〜そのお菓子いいな〜」

「ユウ手作りクッキーだ。絶対にやらんぞ」


お菓子パーティーをしてられるのか。


「あ、おじさん。後どのくらいで着くの?」

「…あぁ、もう着くよ…」


ボリボリと食べる音に流石の老人も限界を迎え青筋を立てる。

言ってやる、お前らはこの国を救えるのかと。この国の命運を任せるに足る奴なのかと。


馬車を走らせながら後ろを振り向く。


「…どういうことだ」


しかしそこには既に賑やかだった跡はなく、四人の姿が無かった。


ーーアスルガンダ平野ーー


「おぉー!おっきいにゃー!」

「確かにデカイな!」


目の前にいる神翼に感嘆の声を漏らす。

馬車から1片だけ見えた途端既にその体は動き走り出していた。

それ馬車よりも当たり前に速く、現場に着いた。


ちらほらと見られる、倒れているアスルガンダ兵士。死んではいないもののかなりの重傷者がでている。


最前に立ち盾をかざすアスルガンダ王国戦士長デルバウィッチ。

彼は王国きっての古強者で、約30年。戦争において彼を退かせたものはたった1人しかいないという。ついた呼び名が「鉄壁デルバ」。

兵からも民からも愛されるデルバは今、仲間を守るため前線をたった1人で維持していた。


「ちっ…流石にキツいでなぁ」


この歳になってもまだこんなバケモンと殺り合わにゃならとはまぁ…。まだまだ俺も退役できそうにねぇでなぁ。


幾千の戦場を共にした俺の愛装もズタボロ。救援に来た他国の兵も使いもんにならんとな。…潮時かもしれんでな。


「キュェェェ!!!!」

「ぬおっ!?」


神翼の爪が盾を、そして鎧を貫通し遂には腹部に突き刺さる。

そのまま後ろへ吹き飛び口から大量の血を流す。背中から地面に倒れるデルバに後ろの兵は声を荒らげる。


しかし当の本人は口角を上げ笑みを浮かべる。

逆さから見ても分かるこちらに歩いてくる四人のシルエット。それは唯一デルバを退かせたレギムンドのバケモノ英雄。


「デルバか!!よく耐えたな!!」

「…遅せぇでな、クソ英雄」


その「億戦錬磨」の姿形を目に、デルバは意識を失った。




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