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四人の英雄の姿形。

荒れ狂う牙に戦意を失わせる咆哮。その巨躯な体は易々と人を吹っ飛ばし一瞬にして戦闘不能にさせる。

俺みたいな雑兵がいくら束になってかかっても相手にすらならない絶対的力。今も王国軍の隊長クラスの人達が相手取っているが全く歯が立たない。

…こんなものどうしろってんだよ。


「おい下っ端何やってる!早く負傷者を運べ!」

「…はい」


何でこんな戦いになんか挑んでるんだん。

いくら武器を取って立ち向かっても、強力な魔法を撃ち放ってもまるで効きやしない。どうせ俺たちの国はコイツに蹂躙されて終わりだ。それならもういっその事逃げちまおうか…。


「おい!早くしないか!もう少しでアイツらが来るんだ!それまでに怪我人を何とかこの場から引き離すんだ!」

「アイツら…?」


そう言えばさっきからちらほらと声がしてたな。「もう少しでアイツらが来る」って。

また増援だろうか。

でも期待するだけ無駄だろうな。フェリフェラリアの王国軍総隊長様。この国最強って言われてた人ですら負けたんだ。どんなに強くても総隊長様以上に強い人でなきゃ意味が無い。だけど俺はそんなバケモンみたいなやつは聞いた事が無い。どうせまた


もう既に俺の中に生に縋る綱は千切れかかっていた。そんな時俺の横を通り肩に手を置いた何者かが言った。


「ご苦労」


その一言だけを告げその人はベヒモスの前へと歩いていった。


そしたら俺の周りの奴等は涙を流しその背中に感謝する。「ありがとう」「後は任せた」「勝ってくれ」


意味が分からなかった。絶望的な状況な筈なのに、フェリフェラリアの存亡の危機だっていうのに何でこんな…こんなに安堵の表情をしているのか。

俺が不思議な顔をしていたのを見兼ねてか、先輩騎士の人が肩に手を回し指を指す。


「よく見ていろよ新人。あれがレギムンド王国の英雄。そして今日、俺達の中の英雄(ヒーロー)になる奴らだ」


笑いながら、他の兵と肩を組み四人のいる方向を眺める。


そして俺は今日初めて


ー英雄の姿形を目に焼き付けた。


ーーーーー


「図体だけは一丁前ね」


目の前にいる私たちを餌としか捉えていないのね。ヨダレを垂らして睨みつけるクソ獣、じゃなくてベヒモス。気持ち悪い。


「腕が訛ってないといいわねぇ…最近殺ってないから少し遅くなりそうなのよね」

「鍛錬は欠かさずやるのが日課である。俺は問題ない」

「私は少し心配かな〜。アイツが手応えのある奴なのか〜」


ミルネ、それは違う心配をしているわよ。

でも、まぁたしかに


「少しは私達を楽しませてほしいものね?ベヒモスちゃん?」


「グオオォォォ!!!!」


地鳴らしを発生させ地面を盛りあげる。

宣戦布告と受け取ったベヒモスは恫喝する様に雄叫びをあげる。


後ろに撤退した兵士は震え立ち竦む。

しかしそれを目の前でいるにも関わらずどこ吹く風の者がいた。


「うっさいわよ!ったくもう!耳が裂けるんじゃないかと思っった!!」


カーファはベヒモスへと跳躍すると木刀を出現させ目に映らぬほどのスピードでベヒモスに叩きつける。

剣、槍、斧、戦鎚、棍棒。全ての武器で傷一つはおろかダメージすら与えることが叶わなかったその巨躯が退く瞬間、それは木刀での


たった一刀だった。


「ふん。さすがにこれで倒れられたらツマらないって者だわ」


よろめく巨体に鼻を鳴らし腕組む「龍殺し」は手に持った木刀を地面に突き刺す。


この場にいた目の前で戦う英雄達を知らぬフェリフェラリアの兵士達は目を見開き口を開ける。

何だこれは。と。


聞き及んでいた。レギムンド王国にはバケモノがいると。

200メートルの隕石を残骸すら残さず無砕した者がいると。

兵士一万でも足りないくらいの力を持つ輩たちがいるギルドをたった一人で蹂躙した者がいると。

伝説種の火竜三体を倒し手懐けた者がいると。

フェリフェラリア、アスルガンダに現れた、一体で国を崩壊させられる程の力を持ったモンスターを単騎で討ち取り復興に貢献した者がいると。


嘘が飛びかい誇張されていった眉唾物だと信じなかった。しかし現実に、今ここでそれは破綻した。


生きることすら1度は諦めた、それくらい強い、絶対的力を持ったモンスターがたった4人の者達に手も足も出ない光景を見れば


ー当たり前だろう。


「それそれ〜」

「ぬんっ!!」

「楽しいわねー」

「あはははは!!!」


血を散らし、ただ声を上げることしか出来ないベヒモス。やがてその声も小さくなり挙動すら起こさなくなる。


「あれ、終わりかしら?」

「え〜これでもすっっっごく手加減したのに〜」

「完了であるな。」


時間にして僅か10分。古代種は崩れ落ちた。


1人の女性「龍殺し」はフェリフェラリア兵士の方へ向き直ると腕を組み仁王立ちし声を張り上げる。


「こんなのにやられるなんて情けないわね!!新兵から出直しなさい!!」


その言葉に男共は頬を紅潮させ胸を射られたのであった。


それから告白をし玉砕したものが百にもいったのはまた別のお話。

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