ファッションショー
そろそろ約束の時間。本に栞を挟んでから棚に戻す。
俺が読んでいた魔法教練の本は初期から上級者向けまであって凄い分かりやすく書いてある。まぁそれもそのはず。なんてったってミズハさん直筆のオリジナル本だ。
俺の為にと何冊か書いて作ってくれた本。繊細に、綺麗に手書きで書かれたそれは王立図書館にあるどの物よりも高価で貴重だと俺は思う。
俺は本を戻してリビングから出ると何だか上から妙に刺さる視線を感じた。こう、じっと観察するやうに見つめ…
「って何で天井に張り付いてるんだよ」
「バレた?」
「バレてるから話しかけてるんじゃん…」
何か上に蜘蛛みたいに張り付いてるノアさんがいた。って言うかどうやってるんだよあれ。
なんだか髪を垂れ下げる様を見ると怖い感じがする。軽くホラーだよあれ。
俺は降りてくるようにノアさんに頼むと張り付いていた手足が取れ真っ逆さまに落っこちてくる。
けれど驚異的なバランス感覚で体制を立て直し両足で着地する。
「9時になった」
「…そのためだけに張り付いてたの?」
コクリと頷くノアさんに溜息しか出ない。本当に天然だ。どうせ自分から言い出してあんな事始めたんだろう。
俺は裾を引っ張られながら上に向かい、ノアさんの部屋の前で一時待機と命じられたので座っていることにした。
それから数分。準備が出来たのか「入っていいよー」と合図が会ったので扉を開き開口一番に、目に入ったのは少し異様な光景だった。
「…何してんの?」
オシャレな服を着てポーズを取る女性陣。まるで人形みたいに動かないでビシッとキメている。これほんと何がしたいの?
全員の服装見る限り俺が買ってきたやつじゃないから自分で買ってきたんだろうな。ミルネとミアナのはこの前の買い物のだろうし。…あ、なるほど、見せたいものってそういう事か。
「全員凄い似合ってるよ」
一言俺がそう告げると
「遅いわよ!何分やらせるつもり!」
「似合ってないのかと思ったわ」
カーファは頬膨らませミアナは胸を撫で下ろす。褒めて欲しいなら普通にそう言ってくれればいいのに。俺は一人一人に感想を伝える。全員自分の魅力を最大限に活かしてる。ミズハさん何か前までタンクトップに下着一枚とかだったのに。成長したな。
他にも服があるとのことなので暫くファッションショーに付き合うことになった。
皆ノリノリで着替え恥じらいながらも感想を求めてくる。苦笑しながらも俺も結構楽しんでみんなを褒めちぎった。
可愛い系のノアさん、ミルネ、ミーニャに、綺麗系のカーファにミズハさん、色っぽい系のミアナ。
元々美女美少女の八英雄の女性陣は何かと言い寄られる事とか変な目で見られることがあるからこれ着て歩くと倍に増えそうだな。いや、倍じゃきかないか。
そして満足したのか普段着に着替えて俺の前にやってくる。
「今日はありがとねユウ。」
「このくらいお安い御用だよ。俺も楽しんでたし」
服装1つでここまで変わるのかって感じさせるほどガラッと雰囲気、可愛さ、綺麗さを変えるのを教えて貰ったし。
アクセサリーとか付ければもっと凄くなるんじゃないだろうか。これは後で試してみよう。
あ、俺がやるんじゃないからな?皆に着けてもらうんだからね?勘違いするなよ。
それから一週間。毎日服装が変わる女性陣に天変地異の前触れかと恐怖したクライスとライガさんであった。




