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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

30代おっさん、初めての恋。

作者: 猫面人

 三木健太は恋をしたことがない。いや、それには語弊がある。正しくは「三木健太には彼女が居たことはない。」だ。今年で32になるが、年齢イコール彼女いない歴だ。未だ童貞である。

 彼が毎日の習慣としている自慰行為の最中(もなか)、とある可能性に気が付いた。右手が恋人とは良く言ったものだ。彼は致す際、必ず右手を使ってきた。といっても意図してそうしていた訳ではない。単に利き手だからだ。

 そして彼は、決して使ったことのない左手が、まだ処女である可能性に思い至ったのだ。

 左手をまじまじと見つめる。震える左手。奥底から沸き上がってくる興奮。脂ぎった手のひらが赤く染まる。眩暈がするような衝撃と、突き抜けるような快感が全身を駆け巡った。


 三木健太は左手を愛でる。毛を丁寧に剃り、ハンドクリームを塗りたくり、女物の香水を付けた。爪を磨き、マニキュアを塗り、右手で優しく撫でる。もちろん、おはようとおやすみのキスも欠かさない。

 綺麗だ。かわいい。初々しさがたまらない。女性経験のない彼が、思いつく限りの愛の言葉を囁く。左手はそれに応えるように彼の頬を撫でた。


 しばらくして、彼は結婚式を挙げた。自宅で独りきりの式ではあったが、彼には左手があった。十二分に幸せを感じていた。左手もいつもより輝いて見えた。

 まるで世界に祝福されているような、強烈な多幸感。

 いつもそばにいたはずなのに、妙な気恥ずかしさが身体を熱くした。

 燃え上がるような感覚に襲われ、身震いするように左手で触る。ああ、ついに。ついに彼は卒業したのだ。

 もう彼は童貞ではない。

 童貞ではない。

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