第7話 身体を動かすのは大事なこと。
区切るのが難しいです・・・。
文字数多かったらすみません。
吉報だ。
俺は日頃から「外や庭で運動したい」と言っているのだが、過保護な両親からはなかなか許可が降りず、落胆していたそんな時。
流石に6年間も運動とは程遠い生活を遅らせていたことに不安を感じたのか、サーシャの後押しもあり希望が通ったのだ。
そういう訳で、早朝の6時。
俺は今サーシャと共に庭に来ている。
「では今日から基礎的な運動をはじめましょうか」
「はい!よろしくお願いします」
俺は敬礼をしながら元気よく応える。
メニューは腕立て伏せ、上体起こし、走り込み、とまぁ所謂体力作りだ。
俺は早々に準備運動を済ませ、家を出る。
まずは走り込み、という口実を得た俺は周辺環境の把握に力を入れる。
どうやら俺を含めた一家一同が在住している場所は、村というのがしっくりくる集落のようだ。
舗装のされていない道に、点々と広がる畑や稲田。
朝早いと思うのだが、作業着を身につけた中高年層の住民らしき人々とすれ違う。
「おはようございます。おはようございます。おはようございます」
「おはよぉ、見ない顔だねぇ」
「んぉ?かけっこかぁ坊主、きぃつけやぁ」
「おはようさん、元気だなぁ」
皆、人当たりのいい人ばかりだ。
空気も美味しいし、田舎最高だな。
って、ここが田舎なのかもわからないじゃないか。
褒めてるんだけど決めつけは良くないよね、うん。
なんて余裕があったのは最初だけ。
コースは村一周だったが家に着く頃には息は絶え絶え、足がガクガクで立っているのも限界だった。
どれだけ楽をしてきたんだ俺!これじゃあまともに旅なんて出来ないんじゃないか?
朝食を取った後、休憩をはさみながら腕立てと上体起こしをするが・・・まあ結果は予想の通りだった。
「腕立て伏と上体起こし、共に30回。よく頑張りましたね」
サーシャは微笑みながら庭で仰向けに倒れて荒い呼吸を繰り返す俺にそう告げる。
なんてこった・・・全部終わらせるのに午前中のほとんどを費やしてしまった。
向こうではそこそこ体力に自身あったのにな・・・うぅ。
「えっと、この後お勉強ですけど・・・今日は控えておきましょうか」
「ハァ・・・ハァ、すみません、先生」
と、分難な提案に安堵していたのだが――――
「えぇ!?私は平気ですよ!」
・・・いつのまにか目の前に、エリスが立っていた。
今日は白か、柄は・・・無いな。
エリスは以前まで動物柄のパンツを履いていたのだが、一度だけ俺がそれを呟いてしまったことがある。
もちろん制裁を受けたが、それを気にしているのか以来柄物を履いていないのだ。
え、何故それを知っているかって?そんな小事どうでもいいことだろう。
妹には欲情なんてしないが、スカートの中は男のロマンだ。気になって何が悪い。
と、それはさて置き――――
「そうはいってもなエリス、お兄ちゃんこれから勉強だと集中できないかもしれないよ?」
「兄様は別に結構です。さ、行きましょサーシャ先生」
そう言うとエリスはサーシャの手を取り、家の中へと向かおうとする。
「え!あ、アルティス君!午前中はゆっくり休んで下さいね?午後からなら参加しても大丈夫ですので!」
サーシャは絶句している俺にそう告げると連れ去られていった。
辺りが静寂に包まれる。
・・・エリス、俺はそんな子に育てた覚えはないぞ。
俺はがっくりと項垂れながら家へ入り、そのまま浴室へ向かいシャワーを浴びた後、自室で『エリスの成長記録』に今日あった出来事を記入し、昼食まで読書をするのであった。
次の日、俺は激しい筋肉痛に襲われたのだが・・・言うまでもないな。
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7歳になりました。
勉強と共に、基礎運動を続けていた成果か、体力はそこそこ付いてきたと思う。
もちろん、魔法の修練もしている。
修練方法だが、どうやら魔力は使えば使うほど最大容量が増えるらしい。
ただ、やはりというか魔力=精神力らしく、体内の魔力容量が一定を下回ると意識が薄れ、枯渇すると昏倒する。
これは試したので間違いない。
通常これを行っても微量ずつしか増えないことから、試す者は少ないらしいのだが・・・俺は違った。
常に魔力を2割程残し、他は放出している。
そのおかげか上がるわ上がるわ。
最近では魔力をMAXまで放出して、2割を保つのも一苦労である。
そんなこんなで苦労しているある日。
「そろそろアル君も慣れてきたと思いますので、次の段階。剣術の基礎練習をして欲しいと思っています」
いつものようにと基礎運動を1時間程度で済ませ、中へ入ろうとした俺へサーシャが告げる。
俺の名前、かっこいいし気に入ってるのだが・・・少し呼びにくいのだ。
なので、俺からサーシャに「アルって呼んで下さい」と提案したところ、快く承諾してくれ、
今では俺のことを『アル君』と呼んでくれているのだ。
「剣術、ですか」
「はい。実は私は、これでも心得があるんです。人へ教えられるかどうかまでは自信がありませんが」
そう苦笑しながらキョロキョロと、何かを探している様に辺りを見渡す。
「あ、もしかして剣ですか?」
「いえ、木刀をと思ったのですが・・・少し待っていて下さい」
そういうとサーシャは家へと入っていってしまう。
不意に、暇になってしまった所為かエリスのことを思い出す。
そういえば、最近エリスが俺の近くに来ていない。
まさか、俺嫌われてるんじゃ・・・いやいやそんなわけ、いや待てよ。
一人悶々とした思考に耽っていると、木刀を持ったサーシャが戻ってくる。
「お待たせ致しました。どうやら倉庫に――――」
「あ!先生聞いて下さい!」
「はぇ!?ど、どうしたんですか?」
っといかん、サーシャを驚かしてしまったか。
落ち着くんだ、俺!
「じ、実は、最近エリスが近づいて来てくれないんです!何か原因を知りませんか!?」
「え、えぇ?うーん」
突然のことに驚いたのか、困惑しながらも考えてくれている様だ。
「・・・そういえば、この前エリスちゃんとお茶した時にそのようなことを」
「聞いたんですか!?なんでも良いです、何か言っていませんでしたか!?」
「う、うん。確かね、『最近兄様から、濃い変な何かを感じて気持ち悪くなるんです』って言っていた気がします」
え・・・変な何か?ってまさか・・・魔力のことか!?
いやでも・・・魔力感知の知識なんて書物でも見たことがない。
てっきり無いと思っていたけど・・・エリスは感知できるのか?
「えっと・・・お役に立てましたか?」
「はい、凄く!ありがとうございます」
この話が聞けて助かった。
魔力感知はともかくエリスの心情を聞けたのは大変嬉しい。
とりあえず、魔法の修練はエリスから離れた自室や庭でのみ行うことにしよう。
と、結論にたどり着いた所でサーシャとの訓練のことを思い出す。
「あ、すいません。関係ない話で中断させてしまいました」
「いいえ、いいんです。むしろもっと色々聞いて下さい。関係ない話だなんて・・・さみしいですから」
「え?先生、なんて言ったんですか」
「何でもありません」
ボソッと何かを言っていた気がするが、まぁいいか。
「さて、ではまず手本を見せますね。素振りですが・・・本気で行きます」
サーシャはそう言うと、木刀を両手で持ち、下ろした状態で軽く息を吸い、そして吐く。
軽く深呼吸を済ませたのか、上段に構えた状態で停止する。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
あれから、どれ程経っただろうか。
精神統一をしているのか、サーシャはまだ動かない。
一見、風景画の様に変化のに無い状態に思うかもしれないが、違う。
というのも先程から、サーシャは尋常ではない気配を放っているのだ。
威圧・・・しているつもりはなのだろうが、妙な圧迫感を感じる。
ふっ、と気配が消えた。その時――――。
木刀は振り下ろされていた。
周囲の葉が少し宙に舞う。
「・・・ふぅ、こんな感じです」
「・・・凄いです。目で追えませんでした」
これは本当だ。一瞬の出来事だった。
本当に見事という他ない、思わず見とれてしまった程だ。
ただ、これを腕力のみで行ったということにも驚愕した。
あれほど細い体の何処にそんな力が・・・。
「てっきり先生はインドア派だと思っていました」
「いんどあ・・・ですか?」
俺の言った言葉を理解できなかったのか、可愛く首を傾げる。
「あぁ、えっと。並の剣士では真似出来ないことなのではと思いました」
「そ、そんなことないですよ?努力次第では誰でも出来る・・・はず?」
慌てて俺の発言を否定しようとして、自分でも不安に思ったのか疑問形になってしまう。
「こ、こほん。とにかく、素振りをして欲しいのです。回数は自分で決めてみて下さい。
あ、でも無茶はくれぐれも控えて下さいね?」
「はい。先生、少し木刀をお借りしても良いですか?」
「どうぞ」
サーシャから木刀を受け取る。
う、結構デカいし重いな。
これを振るうのか・・・。
何度か振ってみる。
身長の所為か、バランスを取るのでも一苦労である。
「なるほど・・・わかりました。50回程から始めます」
「はい。頑張って下さい」
早速俺は素振りを始める。
ブン、ブン、と空を切る音と俺の息遣いが周囲に響く。
ちらり、とサーシャの方へ視線を向ける。
サーシャもこちらを見ていたようで目が合い、微笑みかけてくる。
母性の感じる笑顔だ。
恐らく、まだ拙い素振りを見て子供だと思ったのだろう。
まだまだ子供だ・・・と思う反面、俺の中身は20代の大人なのだ。
そう考えると途端に恥ずかしくなり、視線を前方に戻し、素振りに集中するのだった。




