第5話 美しき家庭教師
大分改変しました。
アルティスです。
あれから一年が経ち、俺が6歳になった夏のある日のこと。
父様が俺の家庭教師に、と一人の女性を連れてきた。
歳は20辺りだろうか、顔は芸術的に感じる程に整っている。
髪は透き通る様に綺麗なプラチナブロンドで、長さはロング。
頭には白のカチューシャを付けていて、深海のように碧い瞳の上に赤縁のメガネを掛けている。
それだけでは生真面目な印象を受けるかもしれないが、優しげな目元が穏やかな女性だと教えてくれる。
身長は175cm位で、母様よりも高く、スレンダーな身体の上に白いワンピースを着ており、
余程外は暑いのか、つばの広い麦わら帽を被っている。
「初めまして、アルティス君。
今日から家庭教師をさせて頂く、サーシャ・レミオンといいます。
宜しくお願いします」
と、麦わら帽を取り、お辞儀をした後微笑み掛けてくれる。
「アルティス・フィールドです。よろしくお願いします」
――――これが、師匠との最初の出会いである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
挨拶を済ませ、俺の部屋へと移動した。
俺は机の前の椅子に座り、サーシャは脇のベットに腰を掛ける。
机にはノートと教本、それと筆記用具がある。
「さて、まずは何から始めましょうか・・・そういえば、アルティス君は秀才だと伺いました。
この世界、ひいてはこの国についてどの程度まで勉強されていますか?」
父様に俺のことを聞いたのか、俺の学習範囲はどの程度か問いかけてくる。
「確信が持てているのは、基礎の範囲だけですよ」
俺は知っている範囲を大まかにサーシャに伝えていく。
この世界にはカルヴァート大陸、北方魔族大陸、西方魔族大陸、未開の地の4大陸があり。
俺がいるのはもちろんカルヴァート大陸であり、人類の領域だ。
このカルヴァート大陸は5つの国に分かれていて、1つの国を中心に囲うように4つの国に別れている。
中心に、ホルスタイン王国 この国は魔法に傑出しており、多くの魔導師を輩出しているらしい。
右上に、アルヴェルス王国 この国は商業に重点を置いるらしく、とても潤っているみたいだ。
右下に、ロードレイン王国 この国は人間至高主義を掲げているらしいが、あまり興味はないな。
左下に、ミリシオン王国 この国は亜人種国らしい、過去にあった事件の件で人間排斥を行っているらしい。
左上に、サイランス王国 俺がいる国で、人間も亜人も平等に扱われる平和な国のようだ。
と、こんなかんじだろうか感じだろうか。
「そ、そうね・・・とても6歳とは思えないわ」
サーシャは怪訝そうに俺を見てくる。
掻い摘んではいると思うんだけど・・・。
あ、そういえば生前の俺、6歳の頃なんて鼻水垂らして外を駆け回ってたな。
まいったなぁ、変な印象を与えてしまったかもしれない。
そう思っていると、サーシャは頷きながら会話を再開する。
「わかりました。では歴史から始めるとしましょう。」
そういうと、サーシャはカルヴァート大陸の由来から話し始めた。
何と約1500年も昔に、魔王が誕生したらしい。
それから元は一つであった魔族大陸から、魔物が送られてきたみたいだ。
最初のうちは、各国で対処出来る程度だったのだが、魔族は急激に勢力をつけていき、遂に国が落とされ始めたとか。
流石に不味いと思った大国の王は、古来から伝わる勇者の召喚を行った。
召喚に応じた勇者のカルヴァート・エイオスは、仲間を集い様々な困難を乗り越え、やがて魔族を退かせることに成功したらしい。
そのまま勇者一行は魔族大陸に進行したのだが、やはり魔王の力は強大で、撃退にまでは至らなかったみたいだ。
その後勇者は人類を代表し、魔王と不可侵協定を結んだとか。
で、その栄光を讃えて大陸の名前にカルヴァートという名を残し、帰っていったと。
うん、まさしく勇者の伝説だ・・・その人物は凄く頑張ったんだろう。
けど、はいさようならと返されるものなのか?
俺が王なら勇者なんていう宝の塊、絶対帰さないけどね。
真相はきっと長い歳月を経て、忘れ去られたのだろう。
そんな黒いことを考えている間にも、話は続く。
「それから300年、大戦の影響で国は内政に追われ、他所に構っていられない時期、新たな魔王が現れたの」
「え?不可侵協定を結んだ魔王は滅んだんですか?」
「いえ、健在よ。今も生きていますもの」
驚いた。
まさか今でも、1500年間も生き続けているなんて。
どんな存在なのだろう?醜悪な姿の化物なのだろうか?
女神のこともあるし、いずれ世界を回る予定だけど・・・会わないといいな。
「それでは世襲ではなく・・・別の何者かなのですか?」
「えぇ、力も魔王に迫るものを持っていたの。そして力を見せた二人目の魔王は、やがて魔族を二分して、10年程争いあったそうです」
へぇ、これは興味があるな。
第二の魔王はわざわざ人類ではなく、第一の魔王に挑んだわけか。
いや、もしかしたら第一の魔王が阻んでいたのかもしれないな。
って、二人目・・・?
「そして――――」
「すいません、サーシャ先生」
おずおずと手を上げながら話しかける。
つい気になり、遮ってしまった。
「何か気になることでもありましたか?」
サーシャは何を気にしているのか疑問に思ったのか聞き返してくる。
「先程、先生は二人目とおっしゃいましたよね?魔王とは人間なのですか?」
「あぁ、そのことですか。いえ、確かに二人目と言いましたけど成る程、少しニュアンスが違いますね」
苦笑しながら一人、納得する。
自分の発した言葉に疑問を抱いたようだ。
「確かに魔王は人ではありません。ですが二人共、人間の様な姿をしているそうなのです。私も又聞きなのですけれどね」
「そうなのですか。すみません、気になり話を遮ってしまいました」
「いえ、今のは私の配慮が足りませんでした。
いけませんね、自分勝手に話していたみたいです・・・他におかしな所はありませんでしたか?」
恥ずかしかったのか、少し頬を赤くしながら問いかけてくる。
美人が恥ずかしがる姿は・・・反則だ。
「大丈夫です。先生の話はとても分かりやすいですよ」
俺は微笑みながら無難な言葉を返す。
あぁ、なんて有意義な時間なんだろう、楽しくてしょうがない!
ましてや美人の家庭教師と二人きり、男なら嬉しくないはずがない!!
コンコン
惚けたことを考えていると、扉をノックする音が響く。
「開いてますよ」
「失礼します」
俺がそう答えると一人の少女が入室してくる。
最近、うちで働き始めた侍女の一人、サラスだ。
歳は12で、背は年相応だと思う。
肩に掛からない程度に伸ばした濡鴉色の綺麗な髪、凛とした目元に黒い瞳と清楚な印象を受ける。
顔立ちは言うまでもなく整っており、可愛い。
ただ、性格なのか感情が乏しく、最初は接し方に困ったものだ。
「食事の準備が整いました。アルティス様、サーシャ様、食堂へ移動下さいませ」
「サラス。その前に、ちょっとしゃがんでもらってもいいかな?」
「?、はい」
俺は懐からハンカチを取り出しながらサラスに声を掛ける。
サラスは俺の問いに疑問を感じたのか少し首を傾げたが、言葉通り片膝を床につけしゃがみこむ。
サーシャは意図を理解したのか微笑んでいる。
俺はしゃがんだサラスの顔に付いている小さな汚れをハンカチで拭う。
「あっ、う、んん」
サラスは目を閉じ、されるがままになる。
汚れは拭き取ったのだが、楽しくなった俺はサラスの両頬を摘み、グニグニと左右に引っ張っては戻すを繰り返す。
柔らかな、マシュマロか何かで出来ているんだろうか?
「・・・あの、アルティス君?」
「おっと。ごめん、サラス」
無我夢中にグニグニしていた俺をサーシャの一言が現実へ呼び戻す。
「いえ・・・ありがとうございます」
サラスは恥ずかしそうに頬を赤く染め、軽く俯く。
俺は感情が乏しいのではなく、緊張からかそれとも対話が苦手なのか、人前では取り繕っているのだとみている。
ふふふ、可愛い奴め。
と、まぁサラスいじりも十分楽しんだことだし、食堂へ行こう。
「ではサーシャさん、食堂へ案内しますね。ほら、行こうサラス」
「はい。私がご案内致します」
こうして、記念すべき初学習の一日目は幕を閉じた。
これは後で聞いた話なんだが、第一の魔王と第二の魔王が50年間終わらぬ戦争を繰り広げた後、どうやら第一の魔王直々に大陸を2つに裂き、戦争を終わらせたのだとか。
そして出来たのが今の北方魔族大陸と西方魔族大陸であったとさ。
分かれた後も大陸とか呼ばれる大陸を裂くとかどんな化物だよ・・・あー、どうか会いませんように。本当に会いませんように!




