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9stein: 水木しげる 『ゲゲゲの鬼太郎』

 今回は、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』を中心に、フランケンシュタインと関係する4点について紹介したいと思います。



1.水木作品でのフランケンシュタインの怪物の登場


 水木しげる先生の代表作である、『ゲゲゲの鬼太郎 』の『妖怪大戦争』の巻では、バックベアード率いる西洋妖怪の一員として、吸血鬼、魔女、狼男と並んでフランケンシュタインの怪物が登場します。

 しかし序盤で、怪物はこなき爺と戦って、海底に沈められてしまいます。

怪物は数コマしか登場しないので非常に残念ですが、ユニバーサル映画や他の派生作品の様に、喋れなかったり、片言だったりせずに、きちんと話している点は評価できます。


 アニメ版ゲゲゲの鬼太郎でも、『妖怪大戦争』の回で何度も登場しています。

尺の関係で、多少は見せ場が増えていますが、吸血鬼に比べると出番が少ないです。


 また、フランケンシュタインの怪物は『水木しげるの世界の妖怪大図鑑』でも、紹介されています。その文章は次の様になっています。


「フランケンシュタイン スイス

フランケンシュタイン博士によって作られた怪人間。

人間の死体の各部分をつなぎ合わせて作った一種の人造人間で、良いことをするだろうと思っていた博士の期待をうらぎって、悪い事ばかりをする。

しかも、手におえないほど力が強い。

花嫁をあらたに作りあたえてなだめたが、人間の思いどおりにはならない。ついには、自分を作った博士をも殺してしまう。

いまや、二十世紀怪奇映画のスター的な存在でもある。」


 妖怪図鑑ということもあり、メインは水木しげるの絵なので、ドラキュラや狼男なども含め、あまり文章は多くありません。なので、正確さを要求するのは間違っているかもしれませんが、気になって仕方がない点があります。

 図鑑では、スイスの妖怪にされていますが、怪物が造られたのは、現在のドイツのインゴルシュタットです。創造主のヴィクター・フランケンシュタインがスイスのジュネーヴ出身だったので、一応、ヴィクターの子供だから、スイス出身にしたのかもしれません。

 原作では、怪物は花嫁を造って欲しいと願いますが、それが果たされる事はありません。

花嫁が創られるのは、ユニバーサル版映画『フランケンシュタインの花嫁』です。

 ただ、『フランケンシュタインの花嫁』では、怪物を造ったヘンリーは殺されないので矛盾しています。創造主が死ぬ点はむしろ、原作よりです。


 この様に、どこか映画と原作が混じった説明になっているのは残念です。

 ただ、タイトルはフランケンシュタインとしてるものの、フランケンシュタイン博士が造ったと書いている辺り、フランケンシュタインが怪物の名前ではないと気付いている点は評価に値します。



2.鬼太郎とフランケンシュタインの怪物の類似点


 鬼太郎とフランケンシュタインの怪物には、幾つか類似点があります。

 まずは、どちらも人間社会に属す事を望みながら、そこから疎外されている点です。

怪物は、生来の醜さゆえに、実の創造主にさえも見捨てられます。

鬼太郎には妖怪の仲間たちがいますが、人間を助けるというスタンスは、妖怪側から理解される事はあまりありません。


 また、鬼太郎の目玉親父は、ヴィクターが怪物を創造したインゴルシュタットを本拠に活躍したイルミナティのシンボル・プロビデンスの目を彷彿とさせます。


 鬼太郎のモデルの一つは、死後出産に由来する子育て幽霊だとされています。

一方、フランケンシュタインの怪物は、メアリー・シェリーが死産を経験している事もあり、死んだ胎児だという説もあります。

これも共通点と言えるでしょう。


 これらを鑑みると、鬼太郎は日本のフランケンシュタインの怪物、あるいはフランケンシュタインの怪物は、西洋の鬼太郎だと考える事も出来るかもしれません。



3.水木先生はフランケンシュタインの原作を読んだのか?


 水木作品に登場するフランケンシュタインの怪物の描写から、水木先生は少なくとも、ユニバーサルの『フランケンシュタイン』映画は見ているか、あらすじは知っていたと推測されます。


 しかし、水木先生は、ダンテの『神曲』や、エッカーマンの『ゲーテとの対話』を熟読している人です。そんな水木先生が原作を知らなかったとは思えないのは、私だけでしょうか。


 けれども、フランケンシュタインの怪物の扱いはぞんざいだし、原作を知っていたにしては、『妖怪大図鑑』の説明が間違っているのが気になります。


 厳密にいえば、フランケンシュタインの怪物は、吸血鬼や狼男と違って、魔法や妖怪ではなく、科学の産物(錬金術要素も強いが)なので妖怪の物語の中では目立たないのかもしません。


 また、水木先生が活躍し始めた時点で、既に映画化され、多くの人が取り上げてるフランケンシュタインよりも、まだ手がかけられていない日本の妖怪を選ぶのは、作家の方向性としては正しいでしょう。


 さらに言えば、『悪魔くん』の直接の影響は、ゲーテのファウストですが、権力への反逆など『失楽園』のサタン、ひいてはフランケンシュタインの怪物に似た要素もあります。

同じ西洋ものでは、悪魔くんとフランケンシュタインの怪物が被っているので、棲み分けが難しかったのかもしれません。


 そういった点から、水木先生はフランケンシュタインの原作を読んでいながらも、あえて怪物を遠ざけて、そのエッセンスを鬼太郎の中に取り込んだと考えるのは、こじつけすぎでしょうか。


 水木先生に直接聞ければよかったのですが、もう妖怪となってしまい、その機会は無くなってしまったのが残念です。




4.フランケンシュタインの怪物との遭遇


 自らも妖怪とよばれたほどの水木先生であれば、フランケンシュタインの怪物と普通に仲良くできた気がします。

 もしかしたら、次の様な話もありえたかもしれません。


 深大寺城跡の堀から、這い上がったフランケンシュタインの怪物。

周囲に助けを求めるが、人々は逃げまどうばかり。

怪物が途方に暮れて、住宅街を歩いていると、「ゲゲゲ」と愉快な歌が聞こえてきました。


その歌に惹かれ、怪物は家の扉を開けました。

そこには、狭い部屋でひたすらマンガを描く水木しげるがいました。

「電気代の集金か! 金ならないから帰ってくれ!」

集金人と勘違いした水木しげるは、怪物の方を見ずに、手を抑えて追い出そうとします。

しかし、怪物はびくともしません。


 そこでようやく水木しげるは怪物の方を振り向いて気づきました。相手が人間ではない事に。

 驚いた水木は大声を出しました。

「お前、手を怪我してるじゃないか!」

 水木が驚いたのは怪物の醜さではなく、怪我をしている事の方でした。


「それに全身、つぎはぎだらけ。お前も戦争で負傷したのか?」

しかし、怪物は言葉をしゃべれず、ただ首をかしげるだけでした。


「俺も、あの戦争で片腕を失ったんだ。お前を赤の他人だとは思えない。とにかく、上がっていけ」

怪物は水木に導かれて、ちゃぶ台の前にドシンと座りました。


「これは、いもだ」

そう言って、水木は、余っていたふかし芋を怪物に差し出しました。

お腹が空いていた怪物は、ふかし芋をおいしそうに食べました。

「イモ、イイ!」

食べ終わった怪物は満足そうにその言葉を何度も繰り返しました。


その時、プゥと奇妙な音がして、怪物は驚きました。

「すまん。屁が出た…」

ただ、怪物の方は、何かの楽器の音の様に思っている様でした。

なので、水木は、器用におならを鳴らしてメロディを奏でました。それは、あの「ゲゲゲ」のメロディで、怪物は魅入られた様に、熱心に聞いていました。



演奏会が終わると、水木は疲れている怪物を布団に横たわらせました。

そして、怪物の枕元で、祈りを捧げます。

「エロイムエッサイム。エロイムエッサイム。我は求め訴えたり。素晴らしきバックベアード様。あなたは、孤独な俺に、手を怪我した西洋妖怪を授けてくれた。偉大なる妖怪の導きに感謝する…」



 それから数日して、水木しげるの家に住みついた怪物は、ある日、水木が描いていたマンガの原稿を指さして尋ねました。

「トモダチ?」

怪物が指さしていたのは鬼太郎です。

「ん、ああ。鬼太郎っていうんだ。確かにお前も妖怪みたいなもんだし、友達になれるだろうな」

「キタロウ、トモダチ。トモダチ、イイ!」

怪物は嬉しそうに、鬼太郎を見つめていました。

「俺が描いた鬼太郎のマンガがあるから、読んだらいい」

そんな様子を見た水木は、そう言って、怪物に漫画を手渡しました。


しばらくして、怪物は鬼太郎のマンガを読み終えた怪物は叫びました。

「マンガ、イイ!」

「ああ、マンガはいいものだ。お前も、マンガを描いてみるか?」

水木しげるは冗談半分に怪物にペンを差し出しました。

 怪物は、水木しげるの手からペンを受け取り、手伝いを始めました。

こうしてフランケンシュタインの怪物は、水木プロの一員となったのでした。


 外れてしまった自らの頭のねじを探しに、怪物が、つげ義春と共に旅に出るのはまた別のお話。



水木しげると鬼太郎は、メアリー・シェリーとフランケンシュタインの様に後世まで語り継がれる事でしょう。


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