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24stein: ケネス・オッペル『フランケンシュタイン家の双子/亡霊』

今回紹介するのは、『フランケンシュタイン』の前日譚となる、ケネス・オッペル作『フランケンシュタイン家の双子』、『フランケンシュタイン家の亡霊』です。



・概要

ヴィクター・フランケンシュタインに双子の兄弟コンラッドがいる設定以外は、18C末が舞台で、登場人物たちも原作に準拠しています。

ヴィクターは家族や友人とともに、フランケンシュタイン城で平穏に暮らしていたが、コンラッドが不治の病にかかった事から暗雲が立ち込めます。

ヴィクターは、城に隠された秘密の部屋から病を治す秘薬の製造方法が書かれた錬金術の書物を見つけ、ジュネーヴのウルストンクラフト通り(原作者メアリーの母の苗字に由来。)に住む錬金術師ポリドリ(『吸血鬼』のポリドリとは別人)の指導の下、友人ヘンリーやエリザベスと共に材料集めの冒険を始めました。

洞窟などの様々な冒険やポリドリの裏切りなどの苦労の末に秘薬が完成し、瀕死のコンラッドに飲ませますが、効き目はなく死んでしまいます。

続く第二巻『亡霊』では、ヴィクターが死者と交流する霊薬を見つけ、霊となったコンラッドと再会します。その後、死者復活の秘法も知ったヴィクターは、コンラッド復活のために再び行動を始めます。

その方法は泥人形から魔術を用いて、コンラッドの魂を入れる肉体を作るというものでした。

しかし、魂のないはずの肉体は意識をもって行動し始め、”怪物”へと変貌していきます。

更には、フランケンシュタイン家の先祖に当たる人物も霊の形で、コンラッドの代わりに復活しようと目論見ます。

最終的に、ヴィクター達は、その”怪物”を破壊し、コンラッドは復活できなくなってしまう所で、物語は終わります。

しかし、ヴィクターは完全に諦めておらず、この執念が、科学的な手法で死体から生命を作り出すという原作につながる形になっています。



・錬金術・魔術描写の緻密さ

オリジナルな設定ながら、錬金術や魔術の描写は細かく、必要な材料を集めていく冒険的な要素もあります。

また、一見非科学的に見える中にも、背後に科学的な描写がにじみ出ています。



・魅力的な登場人物達

コンラッドや脇役以外のヴィクターの周囲の人間は、ほぼ原作どおりに登場します。

メアリー・シェリーの影響を受けてか、エリザベスはヴィクター達男性とも対等に渡り合い、小説家になる夢を抱いています。

親友クラーヴァルも、エリザベスを巡ってヴィクターとライバル関係になるなど、個性がはっきりと描かれています。

このように、原作より登場人物の描写が増え、魅力的になっています。



・怪物の描写

二巻『亡霊』では、ヴィクター達が、 コンラッドが復活するための肉体を、 泥人形から魔術を使って創造します。

その肉体は驚くべき速度で成長し、意識を持ち出して子供のように振る舞います。

この辺りは、 創造過程は違うとはいえ、原作の怪物に近い描写です。

それに対し、エリザベスとヘンリーは両親の様に愛情を注ぎます。しかし、何故かヴィクターにはなつかず、 不気味さを感じます。

さらに終盤になると、フランケンシュタイン城の地下の遺跡から、怪物が有史以前からからいたことを示唆する証拠がでてきますが、結局何だったのかはわかりません。

悪魔、悪霊の類なのか、アダムの様に人類の先祖に当たる存在だったのか。

せっかく、深みを出してこの設定をもってきたのであれば、謎に決着もつけて欲しかったです。


また、怪物に意識らしきものは発生しているのですが、それが自我かどうかはわからなく、喋ることもありません。この辺りは、原作の怪物と比較すると物足りない部分ですが、そこは前日譚という事であえてしゃべらせていないのかもしれません。




怪物があまり登場しない点は個人的に少し不満ですが、原作の前日譚的内容としては傑作です。

同じ著者にそのままリメイクを書かせたら、ヴィクターやエリザベスらの登場人物に更に共感しやすくなったでしょう。

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