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14stein: メル・ブルックス 『ヤング・フランケンシュタイン』(映画)

Hello, handsome.

やあ、ハンサムな君。

You're a good-looking fellow, do you know that?

君はとても格好良い事を知ってるかい?

People laugh at you.

皆は君を笑う。

People hate you, but why do they hate you?

皆は君を嫌う。でも、何で君を嫌うか知ってるかい?

Because they are jealous.

皆、君が羨ましいんだよ。


フレデリック・フランケンシュタインの怪物に向けた台詞



今回は、ユニバーサルの映画『フランケンシュタイン』シリーズのパロディ作品である、メル・ブルックス監督の『ヤング・フランケンシュタイン』を紹介します。



・パロディとして


70年代の作品ながら、あえて最初から最後までカラーではなく、ユニバーサル版映画と同じくモノクロにしているなどパロディとしてのこだわりが多く見られます。


著作権もあってか、この作品の怪物の姿は有名なホエール版と異なります。

原作の怪物の製作者ヴィクター・フランケンシュタインの孫フレデリックが主人公なので、既に怪物が一回創られて、新しい怪物だから容姿も違うという設定でもあるのでしょう。

頭が四角くなく、開頭手術の跡なのか丸刈りにされているのは、ボリス・カーロフの怪物よりもリアリティがあると言えるかもしれません。

ただ後できちんとした靴とスーツを用意してくれるなら、髪の毛位はつけてあげても良い気もしますが。


ホエールの『フランケンシュタイン』では、怪物が少女を間違って湖に投げてしまい悲劇が始まります。

しかし、こちらではシーソーに怪物が乗ると反対側の少女が飛んで家に戻るという喜劇に変わっています。

この展開になっていれば、悲劇は防げたのかもしれません。


また、『花嫁』の盲目の老人のシーンもパロディ化されています。

老人の好意は変わらないのですが、こちらでは、熱いスープを間違ってズボンにかけられたり、乾杯の時にコップごと壊されたり、葉巻と勘違いして指に火をつけられたりなど、怪物が酷い目に遭います。

『花嫁』の感動的なシーンがことごとく壊されていますが、悪意がないので笑ってしまいます。


その他にも、『Son of Frankenstein』のイゴールを模したアイゴールや義手の警官なども登場します。

先に、ユニバーサル映画の方を見ておけば、更に発見があって面白いでしょう。



・創造者の優しさ


主人公フレデリックが怪物を創造した後、暴れまわる展開は原作やホエール版映画と同じです。

しかし、フレデリックが逃げ出した怪物を捕まえて、怪物を救えるのは愛だけだと訴え、一人で対話を試みる展開は、この作品位でしょう。

ただ、いざ怪物と二人きりになると怖くなって、扉を開けてくれと叫んでしまう辺りが、おかしく、現実味があるのですが。

怪物はフレデリックを攻撃しようとしますが、フレデリックはとっさに怪物の事をハンサムだと色々と褒めて、怪物の方も子供の様に泣いて心を許しました。


原作にしろ、映画にしろ、創造者は怪物の元から逃げて、怪物に追われてようやく対峙する展開ですが、フレデリックは自ら怪物に対峙しました。

更に、お世辞にせよ、怪物の醜い姿を見て、ハンサムというのも、創造者の責任と優しさからでしょう。

原作でも、ヴィクターがもっと早く怪物に向き合っていれば、悲劇は回避されたのかもしれません。


その後、フレデリックは怪物にダンスを教え、自身も一緒に踊り、皆の前で披露します。

更には、怪物を救うために、自分の脳の一部を分け与える事までしています。

本当に、あのヴィクター/ヘンリー・フランケンシュタインの孫なのかと思うほどの優しさです。


もしかしたら、『Son of Frankenstein』に登場した初代ヘンリー・フランケンシュタインの孫の成長した姿なのかもしれません。

幼い頃に、初代の怪物と遊んだ事がどこかで記憶に残っていたのかもしれません。

『Son of Frankenstein』の孫の名前はピーターなので、この説をそのままつなげる事は出来ませんが。

(ちなみに、こちらの怪物役は同じ”ピーター”・ボイルだったりします。)


コメディという事もあり、フレデリックはどこか抜けているのですが、ここまで怪物を認め、向き合った存在はいません。

原作、ホエール版映画でも、自ら創造した怪物を殺して責任を取ろうとする姿勢は見られますが、怪物自身に向き合う事はありません。

怪物自身に対して真摯に向き合った事こそが、悲劇を回避出来た一因と考えても良いでしょう。



・来るべきハッピーエンド


この作品は、コメディですが、下品なジョークは見られるものの、変に怪物や弱者を虐める様な笑いは見られません。

怪物が暴れまわる割には、犠牲者もあまりいません。


フレデリックと恋人が幸せになるのは、『花嫁』でも見られましたが、この作品では、 怪物は人々と和解して救われ、人間の伴”花嫁”ができます。

それも花嫁が、フレデリック・”フランケンシュタインの花嫁”になる予定だった女性という捻りまで加えて。


原作、ホエール版の映画『フランケンシュタイン』、『花嫁』と比べても、一番のハッピーエンドと言えるでしょう。


この作品は、ホラーとしてのホエール作品のパロディであると同時に、ホラーとして怪物を怖がる人々の心理に対する皮肉なのかもしれません。


もし現実に怪物がいたら、このおかしいけれど救われる結末に辿り着く事を願わずにはいられないでしょう。

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