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少女たちの旅立ち

 雨のあがった翌日、二人とも無事に退院出来た。退院の朝まで雨が降ってたせいか、大きな虹が彼女たちを出迎えてくれた。


 美由は美奈子と共に新しい生活を始めるらしい。彼女がとても幸せそうな口調で言っていた。この調子ならうまくいくだろう、と李帆も安心していた。

 そして李帆は記憶が戻ったことにより、連絡先が判明したので李帆の父親が病院まで猛ダッシュで引き取りに来た。

 

 父親の正光はちょうど出張で東京にいた。それを見計らって李帆は美由に会うために家出したという。

 

 もちろん李帆は怒られた。ずっと説教された。

そして強く抱きしめられた。無事でよかったと何回も呟いていた。泣きながら呟いていた。

 

 少し引越しした時の事を整理してみる。

 

 李帆がなぜ十二歳のとき、引越ししたのか。両親が離婚して、父親のほうについていったからだ。それも急に決まったので仲直り出来ないまま離れ離れになってしまったのだ。

 

 そしてここは静岡駅、李帆が家へと帰るときがやってきた。それと同時にここは彼女が事件に巻き込まれた現場だ。ちなみに事件の犯人はもう捕まったらしい。

 李帆はその犯人を憎んでいるが、同時に感謝しているところもあった。


 その犯人もこの奇跡の一部なのだから。


「いつか遊びに来てね。ごちそう作って待ってるから」


 李帆と正光が九州へ帰るので、その見送りに美由と美奈子が来ていた。


「来年の夏休みには来たいなぁ。来れたら一緒に海に行こうね、約束だよ!」

「うん、約束!」


 そんな約束をしていると李帆たちが乗る新幹線がホームにやって来た。


「新幹線来ちゃったね」


 美由は少し残念そうに言った。


「じゃあまた会おうね」 


 李帆はそういって父親のあとをついていって新幹線に乗った。そして少し経つとドアが閉まる。

 そして動き出す直前に美由は最後に大声で何かを持って叫んだ。


「このヘアピン、毎日つけるからねー!!」


 李帆もヘアピンを片手に持って大きく横に振った。そして新幹線は動き出した。


 二人の世界のように、どこまでも。




「次は静岡、静岡です。お降りの方はお忘れ物にご注意ください」


 ある夏休みのこと。とある電車のなか。電車のなかにいる少女。

 

 その少女はアナウンスを聞くと、少し大きめのリュックを背負って立ち上がった。

 電車が停まり、ドアが開いた。

 少女は人ごみを避けながら電車から降りる。そして改札口を通り、人の少ない階段の途中でリュックから一枚の地図を取り出した。


「やっぱり久しぶりに来ると、かなり変わってるもんだね。……どんな顔してあいつに会えばいいんだろう」


 少女がこの街に来るのは三年ぶりだ。彼女はここで生まれて十二歳までここで育ったのだ。だから彼女にとっては故郷である。そして彼女はある人物に会うためこの街に戻ってきた。


 そのとある人物とは喧嘩したまま離れ離れになってしまったので、さっき呟いていたとおり、どんな顔をして会えばいいかわからなくて困っている。


「一応地図持ってきて良かったわ。どこに何があるのやらさっぱりだ」


 少女が地図を見ながら悪戦苦闘していると後ろから女性の叫び声が聞こえた。


「ひったくりです! あの男!」


 少女はその声につられて声のしたほうを振り向いた。するとマスクをつけた若い男性が声の主のものと思われるバックを片手にダッシュで少女のほうへ向かってくる。


 男はきれいに掻い潜って外へ逃げようとする。誰も男を取り押さえるため動く人はいなかった。遠くのほうからは二人の警備員が向かってきているから任せれば安心だと思っているのだろうか。


 しかし少女は男が近くに来たころでやっと反応した。そしてこのまま男が真っ直ぐ走ってくれば少女とぶつかってしまう。しかも彼女は今、階段にいる。もし少女がタックルでもして男を止められるのなら事件は解決するが、彼女がそんな力があるようにはあまり思えない。だから少女は慌てて端の方に避けた。

 しかし、


 ドンッ


 彼女は男とかなりの勢いでぶつかった。もちろん階段の下まで彼女の体は転がっていった。

 彼女は避けた。確かに端の方へと避けた。

 しかし彼女も男も同じ方向に避けたためぶつかってしまったのだ。


「警備員さん、こっちです!」

 

 少女はそのまま倒れて動かなかった。そして男は少女を無視してはるか遠くに逃げていった。その男のあとを警備員はすぐに追っていく。しかしあの人ごみの中だと追いつくのは難しいだろう。


「大丈夫ですか!?」


 もう一人の警備員が少女に近づいて確認する。しかし少女は警備員の声にまったく反応しない。警備員は反応がないことを確認すると脈の確認を行った。


「脈はあります。早く救急車を呼んでください!」




 少女は目を覚ました。そして周りを見る限りここは病院であると気づいた。しかしいつも見慣れている家の近くの病院ではないような気がした。もっと遠い、どこか別の世界にいるようだった。


 ようやく目が光に慣れて視界が良好になった。


「なんで、こんなところにいるの?」


~完~


最後まで読んでいただきありがとうございました。この小説は唯一完結している作品である思い入れがあります。これからも色々なジャンルに挑戦していきたいです。

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