500年後の魔法
血と火の匂いが濃くなってきた
ダッシュしてここまで来たが、もうこれは確実に分かる。
これは戦場の匂いだ。丘の向こうで魔物と人間が戦っていると見た。
丘の上に到着し確認すると下の草原にざっと300匹はいるであろうゴブリンとそのゴブリンに包囲され逃げ場を無くした10人くらいの人間達と二台の馬車の姿が姿が目に入った。
不思議なことに、このゴブリン達は統率された部隊の様な動きで人間達を翻弄している
。
――成る程、ゴブリンロードが指揮を取っているかのか。
見ると一際、体格が良いゴブリンが指示らしい物を出している。
ゴブリンロードとは、ゴブリンの上位種で単体ならそこまで脅威では無いはずなのだが大体100〜150匹くらいのゴブリンを引き連れて行動するからゴブリンより圧倒的に危険だ。
しかも、こいつは勝てると思う戦いしかしないの厄介だ。
ゴブリンロードにしては、率いているゴブリンの数が少し多いと思ったが俺からしてみたら塵芥なのでどうでも良いか。
――――まぁ、助ける義理もないしどちらが勝つか高みの見物でもするか。
人間側は三人だけそれなりに強い奴がいるらしく火と土の魔法を駆使したり、剣、槍を使いゴブリンを倒しているが馬車を守りながら戦っている為か防戦一方だ。
一般人も戦っているが集団戦に慣れていなくゴブリンに剣を突き刺して抜け無くなったりしている。
ゴブリン単体になら突き刺すのは好手だが、多数のゴブリンを相手にするなら一般人は咄嗟に剣が抜けなくなりパニックに陥るので悪手だ。
思った通り一般人が次々と倒れて行く。
人間達の士気が目に見える様に下がっている。
……早く手当しないとあの一般人達手遅れになるな。
――それにしても、前世の俺なら直ぐに助けに行ってたのに俺も変わったな
まぁ、前世の今際の際で進んで人助けするのを馬鹿らしいと思ったせいだな
見た限りではこの後、ゴブリン達が勝つだろう。手練れの人間達は、馬車が気になるのか先程から隙が生じて少しずつだがダメージを受けている。手練れの人間が1人でも倒されたら人間に勝ち目は無いだろう。
――ここら辺で野宿したら血の匂いがするだろうから、さっきの所まで戻って野宿の準備でもするかと思った時、戦場に変化が起こった。
馬車の中から少女が表れて、百近いゴブリンが一気に凍りついた。
水魔法?いや違うな……氷魔法だ。だが何故だ?魔族でも無い限り氷魔法など扱えない筈なのに
だが間違い無く今の少女は人間だ。
生前の時に魔族共とは数え切れない程の凌ぎを削った。見た目は人間しか見えない奴等も多々いたがその身に纏う魔力の質が違う。今更あいつらが纏う気持ち悪い魔力を間違う筈が無い。
どうやら、魔法使いの少女は今の一発で魔力を殆ど使ってしまい気絶してしまった。
――――興味深いな
多分だが、これが500年経ったこの世界の魔法なのだろう。
助けてやって話しでも聞いてみるとしよう。
魔法について面白いことが聞けそうだしな。