初戦闘
貰った地図を見ながらレブーム方面に通ずる森の中を歩いているが森に道が出来ていて時代が変わったことを実感する。
良い時代になったな…
昔は、森に道などなくて森を通るなら自分で草木を切り倒しながら道を作って行かなければならなかった。
魔王城に近づけば近づく程、鉄の様な硬さの草木になりそれなりの道を作らなければ傷を受けると、あの三人が煩かったのを思い出し溜息が出た。
ここら辺で少し休憩を取ることにしよう。
木を背もたれにして休憩していたら森に入った時から尾行していたゴブリン達と、今来た別のゴブリン達が、俺の周りを囲もうとしているのが分かる。
ゴブリンは、中々に知能があり罠を張ったり集団で襲ってきたりと侮れないやつなのだが、ゴブリンの一番の脅威はその繁殖力にある。
一匹見たら周りには三十匹はいると考えないといけない。
ざっと気配を探ってみたら50匹くらいかな?
それくらいの数がいることが分かる。
中々数を集めたな。
「ゴブリン、人の言葉が分かるかは知らないが一応言っておく。俺を襲うのは止めたほうが良いぞ?」
だが、ゴブリンはそんな俺の警告を無視して一斉に襲いかかってきた。
「言葉が分かると思っていなかったし、リハビリと思うことにするか」
――まずは、軽く試し切りしてみるか
村長から貰った剣を近くにいた10匹くらいのゴブリンに軽く振ってみる。
「ん〜、少し修行しないと駄目だな。剣筋が昔より悪くなっている」
俺に近かった10匹のゴブリンが音も無くバラバラの肉片に変わった。
どの肉片も同じ大きさに統一されていることから、俺の腕はそこまで落ちていない事がわかる。だが全盛期の俺ならゴブリン達を更に細かく切り刻めた筈だ。なので、納得がいかずその場で剣を二、三回素振りした。
その光景を見た、まだ生きてるゴブリン達に動揺が走るのを手に取るように理解した。
容易く倒せると侮っていた人間の子供が、抜き手も見せぬ一瞬で仲間を肉片に変えていたのだから、それは動揺するだろう。
ゴブリン達は、直ぐに勝てない事を理解し四方に逃げ様とする。
「勝てないと判断したら直ぐに逃げる所は好感が持てる。しかも四方に逃げることで生存率を上げるとか思っていた以上にこいつら賢いな。昔の俺なら見逃したけど残念ながら今の俺は見逃さない」
四方に逃げたゴブリンは、火でその身を焼かれ、水球に閉じ込められ溺れさせられ、真空波に全身を裂かれ、土でできた槍で頭部や腹部を刺されるなどで直ぐに全滅した。
「――魔法の同時使用は昔と変わらずに出来る。あと分かっていたが総魔力量も変わっていないか」
魔法の技術と魔力量は変わっていなかったが身体能力が少し落ちた。ゴブリンのお蔭で今の戦闘力は大体分かった。今は全盛期より劣るが、
この身体は成長途中だ。修行したら修行したら 前世の時より強くなるかもしれない。
強くなるかもしれない。
今の自分の力を確認した後、ゴブリンの遺体をこのまま放置しておくと腐るので土魔法で大きな穴を作りそこにゴブリンの遺体全てを転移させて火魔法を使い肉片を残らず焼いた。
ゴブリンを焼いて出る嫌な匂いは、風魔法を使い四散させる。
「――よし、そろそろ行くか。今日は出来たら宿に泊まってみたいからな」
ゴブリンを殺した場所から二、三十分くらい歩いた辺りで森を抜けれた。
地図を空間魔法の中から取り出し確認する。
余談だが空間魔法は俺が前世の旅の最中に作り出した魔法だ。
地図を見る限り全力で走ったら1時間辺りでレブームに着くだろう。だが、今のまま歩いて行っても一週間くらいで着くのだし新しい発見もあるかもしれないから走るのは止めておこう。
そのまま、歩き続けたらいつの間にか日が傾きつつあった。景色を眺めながら歩いていたからか全く退屈しなかった。前世では景色とか気にしなかったがこうやって意識しながら歩いてたらこの世界ってこんなに綺麗に感じるんだな…
夕日の美しさに感動し、その場に立ち止まり日が沈むまで夕日を見た。
――良いものが見れたし、今日はここらで野宿でもするかと思っていたら風に僅かだが血と火の匂いを感じた。
風上で戦闘か何かが起きてると理解し、このまま野宿するよりも見に行く方が良いだろう
そう決めてダッシュで様子を見に行く事にした。