表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

召喚されてきた少女たち(2)


 あまり強く言っても口喧嘩になってしまうから、こういう時はやんわりとした姿勢を崩さずに促す。

 わたくしが笑顔で対応しているのに、逆上して文句を言えば言うほど彼女の立場が悪くなる。

 女官になれる程度の器量があるのなら、これ以上は自分が悪くなるとわかるだろう。

 わからなかったらやばいわ。

 

「くっ……失礼します……!」

 

 ふう、と溜息を吐く。

 案内役の女官も「で、ではわたくしが代わりの者を探してまいります」と頭を下げて踵を返す。

 はあ……部屋に入る前からなんで疲れなければいけないのか。

 

「では、まいりましょうか」

「は、はい。こちらです」

 

 もう一人の案内役の女官が扉をノックする。

 声をかけて扉を開き、わたくしが入るとソファーに縮こまっている丸い少女と、はしたないとしか言いようのない短いスカートから伸ばした両足をテーブルに乗せて手のひらサイズのツルツルの板を眺める少女がいた。

 丸い少女は真っ黒な髪と瞳。

 この世界では珍しい眼鏡。

 はしたない方の少女は右の前髪がピンク色で、左が身と後ろの髪が黒という不思議な色合い。

 瞳は大きく、茶色。

 ナチュラルなように見せかけて、かなり大胆にメイクをしているのがわかる。

 ああ、なんか一目瞭然。

 というか、これをわたくし一人に丸投げってあの王子、もう一発殴らないとわたくしの気が治まらなさそう。

 殴っても許されるでしょこれ。

 溜息を吐きたいのを一旦堪え、笑みを浮かべたまま入室してきたわたくしに視線を向けた二人の少女に向かってスカートを摘んでお辞儀をした。

 

「初めまして、異世界からのお客様。わたくしはロゼリア・ラクルテルと申します。お二人の相談役を仰せつかりました。わからないことや、ご希望などございましたらお気軽にわたくしまでお話しくださいませ」

「相談役ぅ?」

「はい」

 

 案の定、反応してきたのは聖女様と一緒に召喚されてきた少女。

 かなり怪訝そうな表情でこちらを睨み、手のひらサイズの板を指で叩く。

 あれはなにかしら?

 異世界の道具?

 

「昨日召喚されて、今までの間になにかご不便をおかけしましたでしょうか? また、今後生活をしていく上での不安などございましたら、わたくしにご相談ください」

「あっそ。あーしは別に不満とかないしぃ。このまんまお城のごーかな部屋で生活させてもらったらそれでいーやー。あ、でもぉ、スマホの充電器ほしー。ねー、スマホ充電できないのぉー? Wi-Fiはー?」

「すまほ……? わいふぁい……?」

「ないよねー。あーあ、つまんなーい。電波もないし動画サイトとかも見れないしー。動画とか写真撮ってたらあっという間に充電なくなっちゃう〜。もー。異世界とかめっちゃ映えスポだらけなのにぃー。SNSで配信とかしたらサイコーにアゲじゃん」

 

 独特な話し方の方だな。

 ちらり、とその隣の聖女様を見ると、俯いて気配を必死に消しておられる。

 ……一度引き離した方がよさそうね。

 

「それでは、そちらのお嬢様はこのままお城での生活ということでよろしいでしょうか?」

「うん!」

「もうお一方の――そちらのお嬢様は、ご希望などございますか? もし、希望がないようでしたらわたくしの屋敷にお招きしたいと考えているのですが」

「え……?」

 

 にこり、と微笑んで見せる。

 ようやく顔を上げた聖女様。

 ここに居場所なさげなのが、継母が来たばかりの頃のわたくしのようだ。

 

「お聞きしたところによりますと、城のお部屋は広くて苦手なご様子だったと。それでしたら、わたくしの住んでいる屋敷にお招きして、慣れるまで生活をしていただければと思いましたの。城に比べれば狭く煌びやかさもなく、ご友人とは離れての生活になるかと思うのですが……」

「っ……」

 

 聖女様がちらり、と隣の“友人”の様子を窺う。

 やはり、力関係が明確。

 やや依存も入っている。

 口をもごもごとさせるが、視線に気づいた友人の方は冷たい目で聖女様を見下ろす。

 いや、睨みつけていると言っても過言ではない。

 その視線に萎縮して聖女様が口を噤む。

 

「勝手にしたらー? アンタの面倒見なくて済むのあーしも気ぃ楽だしぃー」

「そ、それなら……は、はい」

「よかった。でしたら、わたくしが帰る時にご一緒いたしましょう」

 

 聖女様を保護する流れは作れた。

 この場でこれ以上話すことはなさそうだけれど……さすがに来たばかりで帰るのは無理ね。

 ひとまずこの世界についてどのくらいの説明を受けているのか、話を聞いてみましょうか。

 

「では、次はわたくしにもお二人のことをお聞かせくださいませ。お二人はどのような世界に住んでおられたのですか?」

「えー? めんどくさーーーい。話したってどーせわかんないじゃーん。うっざーい」

「そうですか。それでは今後のことについてお話しましょうか? お二人が召喚された際にどのような説明をされているのかわたくし聞いておりませんので、どの程度この国の現状についてご存じかわからないのですが……召喚された理由はお聞きになっているかと思います」

「あー。あれねー。なんかモンスターと戦ってとかいうやつでしょー。ゲームみたいに」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ