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ハレノの前進


「さて、それでは王都に帰るか」

「え?」


 ドレング町の宿屋に戻ると、ブリジット様が第一声ハレノ様にそう言った。

 騎士団後発の本隊は、今頃他の八つの地域に分かれて向かっているだろう。

 だが、ハレノ様が聖女として浄化に向かうと了承してくださったのはこの場所だけ。

 確かに、終わらせて帰ることはできる。

 ハレノ様に「そうですわね。成果は得られましたから」と覗き込むと、神妙な面持ち。


「私、他の地域にもちゃんと、その、浄化に、行きたいです」

「まあ……。ですが、怖かったのではありませんか?」

「こ、怖かったです。怖かったですけど……でも……今回、ここに来たからこそわかったというか……他の地域の人も、ここの人と同じくらい、困っているんですよね……?」

「ええ、まあ……そうですわね」

「私……困っている人を、助けたいです」


 たどたどしくも、しかし眼差しは真剣そのもの。

 すでに決意も覚悟も決まっているかのような眼差しだった。


「えっと、ダメ、でしょうか? か、帰った方がいいでしょうか?」

「とんでもない。むしろ、いいの? 本当に? 騎士団としてはとても助かるけれど……」

「は、はい。私、あんなに人に感謝されたの初めてで……だから……」


 自分の行いで人が喜ぶ。感謝される。

 そうよね、嬉しいわよね。

 まあ、わたくしとしてはそれだけではなく、王都でヒメナ様が聖女を騙っているようなのでハレノ様が聖女としての実績を積むのはいい材料になると思っている。

 ヒメナ様がいったいどんな状態なのかわからないけれど、“証人”は多ければ多いほどハレノ様に有利になるもの。

 ……でも、少し心配なこともあるのよね。

 ハレノ様、初めて会った時よりもずいぶん印象が変わったの。

 ダイエットが順調で、食生活が改善したこともあり肌も綺麗になっている。

 体重は目算十キロくらいは、減っていると思う。

 まあ、知らない土地に来たストレスや、馬車の旅によるストレスもあるのだろうけれど。

 純粋に、容姿がずいぶん――綺麗になっているのだ。

 エルキュール殿下はハレノ様のことをかなり失礼な表現で結婚拒否をしていたけれど、今の……すこしふっくらしたハレノ様なら結婚を嫌がらないのでは……。

 いえ、だとしてもハレノ様が嫌がったら意味がない、か。


「じゃあ、行こう! まだ君と旅ができるのだと思うと、嬉しいし心強いよ」

「あ、えっと……わ、私も……」


 ん?


「さっそく他の騎士たちに報告してくるね! 食事も一緒にとってもいいかな?」

「は、はい。ユリッシュさんが、いいのなら」

「僕が君と一緒に食事したいなって思っているんだから」

「は、はい」


 ん……んん?


「それなら、俺もあなたと食事としたいのだが、いいだろうか? ロゼリア嬢」

「へあ!? あ、え、ええと……は、はい。食事は、はい。構いませんわ」


 ブリジット様に声をかけられて、変な声が出てしまう。

 いかんいかん、やはりブリジット様相手だと、わたくしいつもの調子が出ないというか。

 変な感じになってしまうわ。

 これはいったいなんなのかしら?

 それに……ユリッシュとハレノ様の、お互いを見る眼差し。

 なんだか、王都にいた時とは違うような……?


「あ、そ、そうだ。ブリジット様に聞きたいことがあったんですが……」

「なんだ?」

「使ってみて思ったんですが、私の聖女の力をフィアナの中の女神に返すことはできないんですか?」

「聖女の力を女神の生まれ変わりに与える、ということか?」

「は、はい。今回自分で使って見てわかったんですが……本当に、なんというか……自分の力、っていう感じじゃなくて……えっと……なんかこう、自分に、なにかすごい存在が、宿っている? みたいな感じで……。多分、それが女神様の力、というやつだと思うんです。だからあの、それをフィアナちゃんに渡すことって、できないんでしょうか?」

「ふむ……」


 ハレノ様の説明を聞いて、ブリジット様が顎に指を当てて考え込む。

 文献を読んだだけのわたくしだが、聖女の力を女神の生まれ変わりに渡すなんて聞いたことがない。

 そもそも、女神が人間に堕とされてしまったから、女神は自らを守るために力だけ切り離して自分と同じ女性の中でも力を使える適性がある者へ譲渡したはず。

 できるのかしら?

 確かに、聖女が亡くなってから別の女性に聖女の力が移った例は多くあるようだけれど……。


「聖女が亡くなったあと、別の少女や女性が聖女になった例は数多いが……女神の生まれ変わりが聖女になった例はない。女神の生まれ変わりは亡くなれば次の転生者が生まれるまでは不在になるが、聖女は比較的絶え間なく存在している。聖女の力を他者に移動させる方法も、存在しないはずだ。他国では有力者や王女などに聖女の力を移動させようと試みたことがあったらしいが、適性がない場合が多く無理だったと」

「女神の生まれ変わりに試したことはあったのでしょうか?」

「俺が調べた限り、見たことはないな。そもそも女神の生まれ変わりは、バミニオスから逃れるために人の身に堕ちた。力を戻し、女神に戻ればバミニオスから狙われるのではないか?」

「今も狙われるじゃないですか」


 ハレノ様に言われて、思わずユリッシュと顔を見合わせてしまった。

 そのあと、ブリジット様も「……確かに」と納得する。



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