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手の平の上でコロコロ


 フォークを置いて、俯くハレノ様。

 そうよね、怖いわよね。


「あれは最悪の想定のお話ですわ。お互いがお互いを尊重し合える関係性を、わたくしどもは望んでいますの。一方的な関係性を望んでいるわけではありませんわ。そう思っているからこそ、エルキュール殿下はわたくしにハレノ様とヒメナ様の心内を聞くよう、相談役に命じられたのですわ。わたくしは少なくとも、ハレノ様に出会ってお友達になりたいと思いました。色々なお話をしたい、と。そう思うのも迷惑でしょうか……?」


 不安気、申し訳なさそうかつ、悲しそうに最後の方を呟くと、善人のハレノ様は罪悪感を覚えて「そ、そんなことないです!」と即座に否定してくる。

 そうよね、ハレノ様はそんな人ではないわよね。

 しかし、しおらしい態度はそのままに、視線だけハレノ様へ向ける。


「で、では……ハレノ様はわたくしとお友達になってくださいますか?」

「へああああ……!? あ、あ、あ、あ、あ、そ、それはあの………………は、はい」

「嬉しい! たくさん、色々なお話をしましょうね。わたくしのことはお気軽にロザリアとお呼びください」

「は、はい」


 ふふふ、扱いやすい方でよかった。

 まあ、でも……今の状態でフィアナに会わせるのは時期尚早な気はする。

 継母はうるさいけれど、ハレノ様の精神がもう少し安定しないとあのヒステリックな継母には会わせられない。

 ハレノ様の希望は元の世界に帰ること。

 ジヴェさまへのお手紙はこのあと書くとして……今日のハレノ様の予定は服選び。

 明日以降、ハレノ様のやるべきことは――。


「そうだわ、ハレノ様。今日は服選びをされるからお忙しいとは思いますが、明日からこの世界の文字の読み書きを学んではいかがかしら? 文字の読み書きができれば、魔法を学ぶことができるようになりますもの。きっと楽しいし便利ですわよ、魔法」

「ま、魔法……! た、確かに……きょ、興味あります……」

「あとは……ダンスやお作法もお教えしますわ。わたくし家庭教師の仕事をしておりますの。ハレノ様に色々教えて差し上げたいですわ」

「か、家庭教師……」


 いずれ聖女としてパーティーに呼ばれることもあるだろう。

 その時にマナーが完璧ならば、見た目の太さなど些細な問題。

 というか、ダンスをしていれば自然に痩せそう。

 食事を再開したハレノ様はとても綺麗にナイフとフォークを扱えている。

 これならばすぐ、淑女らしくなれるだろう。


「仕事……してるんです、ね」

「ええ」

「な、なんか、この世界、漫画の世界みたいで……き、貴族の女の人は、あまり、仕事しないのかと思ってました……」

「そうですわね。貴族の女性はほとんどは嫁として他家に入り、社交などで家を支え世継ぎを産みます。わたくしのように自分で働く女性は、多いわけではないかもしれませんわね。城仕えの女性は基本的に行儀見習いの意味合いが大きく、長く働くことはあまりないですわ」


 たとえば昨日城にいた女官は貴族学園在籍中の試験結果上位、またはそれなりの爵位を持つ女性が前提条件。

 どちらも賢く、礼儀作法が一定以上身についていなければならない。

 城の中で見初められることが多く、結婚して出産したあとも職場に戻って働くことができるし出世も見込める。

 最終的に高貴なお方――王妃様の侍女などになることができる。

 城仕えのメイドは若い女性限定。

 それこそ本当に行儀見習いが目的。

 肉体労働が多く、長期間働くことはない。

 もしも結婚後も働くという場合は女官試験を受けなければいいのだ。

 ただ、そういった働き方を望む女性は『旦那の稼ぎが悪い』などの誹りを受けやすい。

 女性を通して政敵となる相手を罵り、評価を下げる目的が含まれている。

 爵位が高い女性は尚更家にこもって『旦那に養われて家を守る淑女』をやるのだ。

 わたくしはそれももったいないと思っている。

 こんなにも才能あふれる女性がたくさんいるのに、旦那様と家を守るために自身で仕事をすることを諦めているのだから。

 家族を支えるために仕事をする――のでなければ、家族を守るために仕事をしない。

 もっと多くの女性が気軽に仕事をできたらいいのだけれど。


「ハレノ様はお仕事に興味がおありですか?」

「えっと……まあ……その、は、はい。今は高校生、ですけど……いつまでも、お世話になるのは……あの、気になるので……自活できるように、なりたい、なって……」

「まあ……! 素晴らしいお考えですわ」


 自分で稼いで生活したい、なんて!

 素晴らしいわ!

 なんという志の高さ!


「でしたらなおのこと文字の読み書きはできた方がよろしいですわね! あとは計算でしょうか。領地の名前も覚えた方がいいですわ。あ、ですがまずはどんな職業に就きたいのかを考えなければなりませんわよね。なにか目標や、希望はございますか?」

「え……あ、え……わ、わからない……」

「それでも構いませんわ。この世界のことを色々知って、その中で興味が出たものを目指したりやってみたりすればよいのです。そうだ! わたくし、弟と妹がおりますの。二人は学生で、わたくしよりもハレノ様と歳が近いのです。もしハレノ様が望まれるのなら、貴族学園に通ってみるのもいいかもしれませんわね」



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