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使徒様と呼ばれて、  作者: 愛加 あかり
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マズーパの死骸

『婚姻の儀』が行われた、遺跡へと向かった。

 原因は、クマの上位種のマズーパだった。

 それと、大量の苔だ。



 私達は、東へ向けて馬車を走らせていた。

 どこまでも続く、盆地の広大な農地。

 黄金色に輝く、麦や穀物。

 小川で、牛を洗う農夫。のどかだった。


 井戸を薬に変える旅は、順調に進み。2つの集落を、解放した後で、ナガールッツ子爵領へと入る所だが。


 ナガールッツ子爵領の砦で、長蛇の列を作っている。

 

 ナガールッツ子爵の兵が、ターランド伯爵家の馬車を見かけて、近寄ってきた。


 「どうかなさいましたか」

 カパードが、御者の席から尋ねた。


 「銀髪の子を探している。ダガルプ教の司祭が、銀髪の子を探していて。見つけるだけで、褒美がもらえるらしい」


 「っで、見つかったのか。差し出したら、いくら貰える」


 「見つかっていたら、砦の門は開放されているよ。それに、捕らえては、行けないらしい。馬車を、足止めするだけで良いってよ。楽に稼ぎたいよ」


 ナガールッツ子爵の兵は、右手で手綱を持ち。左手を差し出した。


 「っで。ターランド伯爵の馬車が、事前連絡も無く、ナガールッツ子爵領へ訪問とは、穏やかじゃないねぇ」


 書状を出せと言ってきている。


 「直ぐに、戻るよ。亡き、カリナフ様の荷物を、『婚姻の儀』の遺跡に忘れたみたいで。それを、回収したら、ターランド伯爵家へ、急いで届けないとならない。こっちは、金にならない仕事ですよ」


 「それは、大変だな。そのまま、砦を抜けていいぞ」


 「お~い、ターランド伯爵家の馬車だぞ。そのまま、ここを通せ。問題にされたくない」


 馬上の兵士は、大きく手を振り。

 砦の兵に、通すように命令した。


 私達は、検問のような取り調べはなく。

 砦を、難なくバスすることが出来た。


 「フ〜。取り敢えず、一安心ですね。ですが、カパードに、私を亡くなった事にしてもらって。正解でしたね。ナガールッツ子爵領へ潜ることが出来て、砦を通り過ぎる作戦が成功しましたね」


 「でも、本当に、亡くなった事にしても、大丈夫なのですか」


 「問題ございません、使途様。私は、ダガルプ神殿の奥で暮らし。この身を捧げる覚悟はできています。カリナフ・ターランドは、疫病で亡くなられたのです」


 カリナフ嬢は、笑顔でスラスラ答えている。

 私の頭を、膝の上に乗せて。


 「頭は、上げないで下さい。何処で、司祭が見ているか分かりません」


 少し、獣臭い革の手袋で。僕の頭を撫でてくる。


 「そろそろ、宜しいのではないですか。私のの膝の上に、乗りたがっていますよ」


 「何を言っているのです。その無駄に重そうな2つの脂肪を、使徒様の頭の上に乗せるなど、言語道断だ。ターランドへ帰れ」


 「宜しいのですか。私がターランドへ戻りますと、マルーリ様がこちらにいらっしゃいますが。いかがなさいますか」


 「次は、頭の上になど乗せません。次は、裸になり、頭を挟んで差し上げようと思います」


 「却下だ。失礼にも程がある。わきまえろ。いずれ、私も、サライテやお母様をよりも、大きく育てるつもりだ」


 「お辞めになった方が楽ですよ。無駄にデカいと、肩が凝りますから。マルーリ様が、『肩が凝った』と言わないのは、イーガージ伯爵様が、肩を揉もうとするからです」


 「肩ぐらい、揉ませたら宜しいのに」


 「カリナフ様は、ご兄弟を所望なさりたいのですか。私は、構いませんが」


 「大変なのですね」


 私は、寝たふりするので、精一杯だった。


 やがて、道が二手に分かれている所に出た。


 「そこを、左です。ナイフを持つ方です」


 カパードは、二刀流でナイフを持つことがある。その時に、左手にナイフを持つ。


 テーブルマナーではない。

 脳筋は、そもそも、テーブルマナーを知らない。


 「分かりました。ナイフの方で」


 カパードは、本線から脇道に向けて走らせた。


 のどかな風景に、黒い靄が立ち込めてきた。


 「馬車を、止めて下さい。これ以上は危険です。また、疫病で倒れますよ」


 「ですが、危険な場所に、御一人で向かわせる理由には行きません」


 「私たちは、使徒様のカナリヤでも構いません。お供させて下さい」


 「こうなる事を承知で、同行しているはずです。ここは、疫病のスタート地点かも知れませんので、私一人で参ります」


 「カリナフ様、失礼します」


 私が、手をかざすと、小さな車内が大きく揺れた。


 本線から、脇道へ入り。人気がなくなると。

 ターランド伯爵の馬車の車内が激しく揺れた。

 普通の馬車と違い。バネなので、3倍激しく揺れる。


 「大人しくなれ」

 「お断りします」

 「カリナフ様を渡せ」

 「嫌です。私を守りなさいサライテ」

 「お辞め下さい、使徒様」

 「却下だ、お前たちは此処で」

 「私は、カナリア出はなく。豚としてお使い下さい」

 「なら、お前が先だ、サライテ。豚として、床で寝ていろ」

 「キャー。サライテ大丈夫ですか。起きて下さい」

 「カリナフ様、外へお逃げ、下さい」

 「逃す理由なかろう」

 「お許し下さい、使徒様」


 だが、その揺れも、直ぐに収まった。

 カリナフ嬢を、私のかざす手のひらを、かいくぐっいたようだが。車内は狭かった。


 モノの5分と持たずに、静粛を取り戻した。

 私は、車内から出て。


 「フ〜」っと、大きな息を吐いた。


 社内では、2人の女性が眠りについていて。

 ピクリとも動かない。


 私は、スカートを捲り。激しく動いたせいか、少しズレた膝上ドロワーズを持ち上げて、紐を結び直した。


 「カパード、2人を頼む」


 ただでさえ、身体が小さいのに。

 先の集落で薬に変えた、井戸水が大きな水袋に入っている。

 私は、それを肩に背負って、遺跡へと向かった。


 外だと言うのに、黒い靄は晴れそうにもない。

 少しづつ、靄が濃くなる方へと進み、

 苔の祭壇を見つけた。


 ここが、現場なのだが。

 靄は、遺跡の奥から来ていた。


 取り敢えず、井戸の水を口に含み。霧状に散布した。

 苔には悪いが。遺跡を、清めさせて貰った。


 手入れがされておらず、昼なのに暗い。

 靄のせいで、暗い理由ではなく。光が差さない。


 私は、間伐するように、大きく育った木に右手をかざして。

 木のエネルギーを吸収して、大木を枯らした。

 それを数回繰り返しながら、奥へ奥へと進み、根源を見つけた。


 マズーパの死骸だ。

 罠にかかったのだろう、足元に大きなトラバサミがあり。

 生々しく見える骨に、痛々しく突き刺さっていた。

 マズーパに、大量の苔が根を張り、生きようと必死なのだが。

 靄を発生させていた。


 発光したり、薬になるなら、見逃したかもしれないが。


 マズーパごと、チリに変えた。

 その後は、間伐作業を行い。吸収ししたエネルギーを、井戸水ごと散布して。

 光の差さなかった森に、虹を作り出した。


 私が、馬車へ向かうと。

 カリナフ嬢とサライテが、ボサボサ髪で出迎えてくれた。

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願い致します。

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