グマーザラー14世
グマーザラー14世に、行く手を阻まれた。
使徒として、疫病を止めねばならない。
まずは、情報収集からだ。
私は、大司教グマーザラー14世と面会していた。
「そうでは御座いません。ご病気を発症したとして、緊急で来られたのです」
「それは、理解していますが。カリナフ・ターランド嬢は、何処の姫君なのですか」
目の前にいるヨボヨボの爺さんが、ダガルプ教のトップ。グマーザラー14世なのだが。
「お教えできませぬ、神殿の外に出るだけで、大騒ぎなのに。城壁の外に出るなど、言語道断です」
「このままだと、疫病が蔓延します。早く、手を打たないとなりません」
「手は、打たれたじゃないですか。井戸を、薬に変えたのでありましょう。問題はありません。信徒が、ここに来たら良いのです。使徒様が、危険を冒す必要はありません」
「それが、神託でもか」
「ダガルプ神殿の城壁内の民を救うだけで、満足できませんか」
「話にならん。寝ておれ」
私は、手をかざして、グマーザラー14世を寝かしつけた。
真っ白い石の壁に、贅を尽くした調度品の数々。
私が座る椅子も、ビマージグリズリーの良い部分だけを使い、1頭の革だけで仕上げてある。
非常に手触りが良いソファーだ。
勿論、履いていない、尻感での調べだ。
私の体が小さすぎるのか、あらゆる物の高さに苦労をする。
飛び降りる事も可能だが、少し腰が引けるので、足からゆっくりと、お尻を出しながら降りる。
ダガルプ神殿の者たちは、私を過保護に扱いすぎる。ターランド嬢の出身地も教えてくれない。
私の後ろには、何人もの僧や助祭が眠らされていた。
私は、カリナフ・ターランド嬢の眠る客間までたどり着いた。
2人の侍女が、部屋の入り口を守っている。
1人は、メイド服の上から、胸当てや剣やナイフが付いた、ベルトをしている。
髪の毛は、赤く短い。
もう一人は、卑猥な体でメイド服を着ている。
ブロンドの長い髪を結い上げて、夜会巻きに仕上げてある。
丸眼鏡の奥に、私を舐めまわす、下品な目がそこには有った。
わざわざ、膝を付き。私の目線に合わせ、触れたい衝動を抑える為に、右手で左手を押さえている。
その行動が、大きな胸を寄せている。
「この度は、私共の命まで助けて頂き有難うございます。使徒様」
カリナフの側仕え。侍女のサライテである。
幼少より、侍女になる為に育てられた、サライテは、16歳にして、卑猥な体と、ずば抜けた妄想癖も備えており。一般教養も身に着けている。
護衛のカパードは、あらゆる武器を使いこなし、怪力の女性で、脳筋である。
私は、銀髪の髪に、真っ白いからだ。
あらゆる書物をあさり、3度の飯より、本が好き。
そのせいで、前髪は、定期的に切るが。他は、ボサボサで、お尻の上まで伸びて。ボサボサで手入れもされていない。
私が、気にしていないが。周りがうるさすぎる。
「そんな事は、どうでも良い。ダガルプ神殿の者を守る為でもある。それよりも、ターランド嬢の疫病は、何処で、いつから発症したかを知りたい」
サライテは、一度、カパードと目を合わして。頷いた。
「カリナフ様が、ご気分を害されたのは、ナガールッツ子爵領に、赴いた時だと思います」
「ナガールッツ子爵領で、『婚姻の儀』とかで、森に一人で入って。出てきたときから、顔色悪いッス」
「では、ナガールッツ子爵領では、疫病が慢されているのですか」
「それは、分かりかねます。ナガールッツ子爵のバトラーと、同行して森に入ったので。街には立ち寄っておりません」
真面目な話をしているはずだが、サライテの視線が刺さる。
「その後は、ターランド領に帰らず、直接ここへ向かいました。カリナフ・ターランド嬢に変わりまして、お礼を申し上げます。命を助けて頂き、ありがとう御座いました」
「先程も、言いましたが、ダガルプ神殿の者を助ける為ですが。ターランド嬢が、こちらに、来なければ、疫病が蔓延していたかもしれませんし。今もなお、広がっているかもしれません。教えて頂き、有難うございます。で、ナガールッツ子爵領は、どちらにありますか」
「何故、そのような事を、起き気になられるのですか」
カバードは、隣で頷くだけだった。
「これから向かおうと思います。ターランド領にもより、ターランド嬢のご両親も、民たちも助けなければなりませぬ。神託なのです、ご理解ください」
「カパード。カリナフ様を頼みます。私は、使徒様と先に、ターランド領へ向かわねばなりません。頼みましたよ」
「抜け駆けは、許しません」
『バン』
客間の両扉が開き、寝間着姿のカリナフ嬢6歳が現れた。
濃ゆい紫色した髪の毛の少女。ウェーブがかかり、肩甲骨の辺りまで伸びている。
「私も、まいります」
「なりません。カリナフ様は、ナガールッツ子爵へ嫁がれる方です。同行されるなど、有ってはなりません。カリナフ様は、ここで、療養なされて下さい。私が、同行いたします」
「駄目ですよ。サライテと同行だなんて、ビマージグリズリーと旅するよりも危険です。私が、使徒様と同行いたします」
「それなら、私がちゃちゃっと、行って来ましょうか」
「「黙れ、脳筋」」
「流石は、脳筋。使徒様の虜にならないとは」
「そこは、同意いたします。カリナフ様」
私は、2人に手をかざし、『眠れ』と唱えた。
「脳筋、何故、私を守らなかった」
「脳筋、私の護衛だろ。間に入って、仕事をしろ」
2人は、眠りに落ちた。
「2人を、寝室に頼む」
私は、もう一度、礼拝堂を通り、ダガルプ神殿の外へ出た。
衛兵や助祭たちを、バッタバッタと寝かしつけて。大通りの真ん中を、3歳児が闊歩した。
問題は、別に存在した。
「使徒様が、城門から出てしまう。大門を閉めろ」
大門が、閉められ。大の大人が5人で担ぐ丸太の閂を、2本で鎖した。
外からも、中からも、苦情が発生したが。
グマーザラー14世の厳命で、誰も逆らえなかった。
私は、馬車や商人が蠢き、渋滞する中、前へ前へと進み。
どうにもならない現実を知った。
そこに、カバードが、空から飛んできた。
着地と同時に、砂ぼこりを舞い上げて登場した。
右膝と両手を地面に付き。
『デデン、デン、デデン。デデン、デン、デデン」
『安心して下さい、スパッツ履いてますよ』
カバードが、立ち上がり。拳を握って、構えを取った。
「カパード、出来るのか」
カパードは、構えを取ったまま、『コク』と頷いた。
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