カリナフ・ターランド嬢
名は、まだ無い。使徒様である。
カリナフ・ターランド嬢を助け、ダガルプ神殿を守る為に、数年ぶりに外に出た。
私は、少女に問た。
「生きたいか」
キングスサイズのベッド中央で、苦しんでいる少女は、ダガルプ神殿の壁画の天使が、助けに来たと思い。辿々しく、声を震わせ。
「だす…て、くだ…い」
私には、「助けて下さい」と聞こえた。
少女は、布団から手を出して、私を触れようとしているのか、小さな手を伸ばした。
「私の体は、何人も触れてはならぬ、しきたりですので、御許し下さい」
幼い少女が、キングスサイズのベッドから手を伸ばしても、届くことはない。
私は、サイドテーブルの上にある、レターセットに目を移した。
インクに、万年筆、便せん、レターナイフ。
私は、足と手を伸ばし、サイドテーブルの上の、レターナイフに右手で触れて。
レターナイフを床に落とした。
次に、レターナイフを拾い。低いテーブルに置いて。陶器の水差しの蓋を開けて、中を覗いた。
中身は、良く知っている。地下の聖水だ。並々と入っている。
私は、迷わずに。レターナイフで、左手の薬指の先を傷つけ。ナイフが刺さったまま、血を数滴落とした。
私が、ナイフを抜くと、傷口は直ぐに塞がった。
私の血は、聖水と混じり。靄のように留まらずに溶けたが、ナイフに付いた血を洗うために、ナイフの先で、水差しの中をかき混ぜた。
ナイフを低いテーブルに置き。
水差の聖水を、小さな吸い呑みに移して、ベッドの縁に置いた。
次に、ベッドの下へ回り。
体力の無さと、小さな体に、不満を抱きながら、ベッドの上に登った。
やたら、ベッドが高すぎる。
足は、もう少し低くして、マットレスも、2枚は要らないと思う。
ベッドを這い上がるだけで、一苦労だ。
揺れ過ぎる、マットレスを四つん這いで歩き。
少女の枕元にたどり着いた。
少女の目には、銀髪の長い髪が、低い朝日を浴びて、後光が差してキラキラと見え、お顔だけだったのが、私よりも少し小さな体に、好感を持ち。美しく白い肌は、芸術にすら覚えた。
「いけません。私に触れようとするのは、お辞め下さい」
カリナフは、聞こえていないのか。手を伸ばし、触れようとする。
「駄目ですよ。近寄れません」
私は、シルクのマントを脱ぎ。少女の左手を、マントで覆いねじ伏せた。
次に、左手に跨り、体重を乗せ、吸い呑みで聖水を与えた。
少女は、苦しいのか。鼻息が荒くなっている。
今度は、右手を伸ばそうとしたので、『眠れ』と手をかざして、寝かしつけた。
マント越しに、少女の手に触れて。手を戻し。優しく布団をかけた。
次は、椅子に登り。便せんを借りた。
『数々のご無礼、申し訳御座いません。
これを読みましたら、侍女たちにも、水差しの聖水を、与えてください。
私の血が、混ざり込んだ聖水です。疫病の予防ができますので、必ずお読みください。
大事な事なので、2回書きました。
蔓延する前に、阻止してください。
では、よろしくお願いいたします』
私は、飛ばないように、レターナイフを重しに使った。
今度は、彼女が何処から来たのかだ。
色々と考えながら、真っ白いマントをなびかせて。
立ちはだかる、衛兵や助祭たちを、次々に眠らせ。
広い礼拝堂を抜け、大きな木の扉を通り。
眩しい光の中に出た。
衛兵は、信徒の民を近づけさせない為に、槍を横に持ち、威嚇気味に一定の距離を保った。
信徒も、膝をつき。ダガルプ教の天使のネックレスを、両手で包むように祈りを捧げた。
「有難うございます。私は救われました」
「ああ、天使様。ご降臨、有難うございます」
「キャー。天使様可愛い」
私は、調子に乗り。右手を上げて、信徒に応えた。
「間違い無い。アレは天使様だ」
「あんな小さな体なのに」
「マジか。デケー」
私は、最初の井戸にたどり着いた。
井戸は、私が覗くには高すぎた。
「何方か、椅子をお借りできませんか」
一人の女性が、名乗り出て。井戸の前で四つん這いになった。
「出しゃばるな、ブス」
「私と変われ、ブス」
「図々しいぞ、ブス」
私が困っていると、肉屋の亭主がボロボロの椅子を持ってきた。
「有難うございます。私は、人に触れることができませんので、お気持ちだけ頂きます」
私は、女性に礼を言い。
「肉屋さんも、有難うございます」
肉屋さんにも、頭を下げ。
私は、椅子に登ろうとした。
その時に、衛兵が近づいて来て、触ろうとしたので眠らせた。
私は、眠った衛兵のベルトから、ナイフを借りた。
少し汚れていたので、マントでナイフを拭いたが。あまり手入れがされてなかった。
使えなくはないので、そのまま手に持ち、椅子を登り、周りをヒヤヒヤさせた。
私が、椅子に登ると、博士喝采が起きた。
「何を、なされているのですか」
皆が求める、一人称を避けて、司祭が尋ねた。
「これから、私がする事に。騒ぎを、起こさないで下さい」
私は、井戸の縁に手を置き。井戸の中を覗き込んだ。
良くは知らないが、水は入っている。
これなら、大丈夫かな。
私は、左手を井戸の上にかざし。
右手に持っていたナイフで、左手の薬指を切り落とした。
出血した、ほとばしる血も、全て井戸に垂らし。
右手に持った、ナイフも井戸に沈めた。
「使徒様、何をなされるのですか」
司祭は、答え動揺し。私の1人詐称を口にした。
私は、振り返り。左手を皆に見せると同時に、近づく司祭に、『眠れ』と言葉を発した。
突き出した私の左手は、出血が止まり。気持ち悪い生き物のように、蠢きながら再生をした。
「使徒様、何をなされたのですか」
衛兵たちが、私を心配する数人の民を、押さえながら尋ねる。
「疫病です。疫病が、発生いたしましたので、蔓延を防止する為に、この井戸を薬に変えました。健康な方も、そうでない方も、ここの井戸水を1日1杯お飲み下さい。この都市での疫病は、食い止められます。歩行が困難な方、ここまで水を取りに来れない方には、何方かお手数ですが、届けて下さいませんか」
私は、深く頭を下げ。
「井戸の管理を、お願いします。水が足りなくなれば、他所の井戸から水を足して下さい。この井戸が薬なのです。よろしくお願いします。衛兵の方々」
私がそう告げると、歓声がわいた。
「有難うございます、使徒様」
「感謝いたします。ダガルプ教、万歳」
「必ず、疫病を止めてみせます」
私には、する事がある。
少女が何処から着たのか、確かめる必要がある。
「確か、カリナフ・ターランド嬢と言ったか」
何処の姫君なのか。
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