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使徒様と呼ばれて、  作者: 愛加 あかり
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ピンクワーム

私たちは、ベイルドマー準男爵領へと入り。一番小さな集落を訪れた。

そこでも、移住者が溢れ。済む家を求めるために、森の中へ入り。丈夫な木を探している。





 私たちは、数ヶ月かけて、ベイルドマー準男爵領へ入っていた。


 今は、開墾が進み。森の奥に動物たちが、追い込まれている。

 それが原因なのか、森から靄が出ていた。


 「使徒様、森の奥に渦がかかっています。疫病が、発生しているのでしょうか」


 「まだ分からないですね。マズーパの時は、離れた所まで、靄がかかっていましたから。発生したばかりなのかも知れませんが。確認する必要があります」


 「ソレでは、脳筋に偵察させますか」


 「まず、村で働く人々に話を聞いて。必要なら、調べに向かうことにしましょうか」


 「使徒様、聖女様。向こうの森が、どうかされたのですか」


 「良く無いモノが、発生したかもしれません。サライテ、村長や村の人と話をしますので、用意をお願いします」


「聖女様、私も聖女へ成るべきではないですか。側室としてで構いませんので、ご考察下さい」


「クドいぞ。私は、聖女様以外を不幸にする気はない」


「聖女の役割は、私がしますので。サライテは、私の見たモノを、調べて下さい」


「それでは、村長に謁見する機会を、設けさせます。以上で宜しいですか」


 サライテが、棘があるような形で絡んできる。


 前に訪れた村でも、ピザ窯の前には、多くの人々が並び。聖女様からの施しを受けていた。


 この村でも、到着前から人々が並び。

 先行して運ばれた小麦は、ピザ生地として練り上がり。円形に形成されている。

 トマトゥーのソースを塗り、貴重なソーセージを散りばめて、大量に取れるジャガイモとコーンを敷き詰め。チーズを振りかける。

 移動式の窯で焼いた。


 ターランドの移動式の窯は、休み無く働き。

 綺羅びやかな模様や、天使の像は、ススや煙で黒く染まり。


 貴族が使うモノとしては、年季が入り過ぎている。

 新たに作ってもらうしか無いが。


 聖女は、旅の証として残して。ターランドの砦の横に、黒いまま展示しようと考えている。


 理想は、人々が多く触れて。窯が少しずつ削れ。

 黒いススが無くなり。角も丸みをおびて、未来永劫に、使徒様の物語が、語り続けて欲しいと願っている。



 私たちは、村長の家に通された。

 この集落では、一番大きな屋敷で。

 次の集落とも離れてない為に、通過点となり。隣の町が栄えるようになっている。


「大した、おもてなしも出来ず。使徒様、聖女様には、ご不便が有ると思いますが。精一杯のお心付けをさせて頂きます」


「そんなお気を使われないで下さい。勝手に炊き出しの旅を続けているだけですから」


 全身を布で覆った私が、頭を下げ


「村人に、異変が起きたり。森の動物が、奇妙な死体で発見される事はございませんか」


「些細なことでも構いません。使徒様と私には、危険なものが見えるのですが」


 私と聖女様は、真っ白なベールで顔を隠し。村長に尋ねた。


「はい。1週間前辺りから、森に入るなと警告しているのですが。何分、移住者が増えまして。住む家が足りなく、柱になる木を探しに森の奥へ進むものが絶えず。困っています」


「やはり森で何か有ったのですか」


「いえ、大した事は無いと思うのですが。数人が行方不明になり。戻って来ないと、小さな騒ぎが起こっているのです。移住者が森の中へ入るものですから、人数の把握が出来ていませんし。本当がどうか、探っている最中でした」


「使徒様、早く手を打たないとなりません」


「明日、カパードを連れて、森に入る事にしましょう。何人か探して、ナガールッツの遺跡のように、一度、生態系を破壊しましょう」


「宜しくお願いします」

 村長は、深く頭を下げ。テーブルに額を擦り付けた。



 翌朝、カパードに『マックス刈刃』を装備させて、森へと向かい。聖女様とサライテを、村で寝かせ。

 ターランドの兵を、10人ほど護衛に付けて、少数精鋭で森の入り口に辿り着いた。


「カパード、腰の剣を地中深く刺せ。早くしろ」


 私は、自分の短刀を確認した後、カパードの行動を後ろから見ている。

 カパードは、腰のロングソードを地面深く突き刺した。


 カパードの突き刺した剣は、深くまで刺さり。

 根本まで行かずとも、かなり深く刺さった。


 ダメ押しに、柄に体重をかけて、踏み抜こうとしているカパードの姿があり。それを私が止めた。


 「ありがとう、カパード。少し、下がっててくれ」


 カパードは、レッドの事件以来、素直に言うことを聞いてくれる。


 私は、カパードが刺した剣を握り。力を込めて、剣に電気を流した。


『10万ボルト』と、心で叫び。

地中から、肌色のミミズが現れた。


 私は、地中から這い出たミミズに、自分の血を分け与え。

 20匹の巨大ワームを、森に放った。


 胴回り、100cmを超えるミミズが樹木の根を耕しながら、森の奥へと進み。

 森の生態系を破壊し、生態系の再生を試みている。


 カパードを連れ出したのは、万が一の為だ。

 ビマージグリズリーが出た時に、後々文句を言われたくないから、寝かせずに連れてきた。


 襲い来る獣や動物たちは、カパードや兵士に任せ。

 邪魔な倒木は、カパードの力で排除された。


 ピンクワームのお陰で、開墾が進み。スタンピードの危機が去り。

 村は、広大な農地と、大量の木材を手にして。

 私は、聖女様とサライテから、お叱りを受けた。



 翌朝、1日ズレて、炊き出しが行われ。

 行列は、倍の人数になっていた。

 巡礼の人々が、聖女様に追い付こうとして、休まずに、無理をした結果だった。


 各村を、訪れる度に。

「聖女は、6日前に、通られました」

「三日前に、ピザをお配りしてました」

「昨日、旅立たれましたよ。急いだら、追い付きますよ」


 巡礼者の足は、自然と足早になり。一目見ようと。あわよくば、ビザを受け取ろうと。

 ある者は、グローブ越しだが、聖女様に触れたと。言い触らし、我こそは。私が、真の信徒だと、お目にかかりたい、一心で心を走らせた。


 聖女様は、揺るぎない笑顔を振りまき。私の側を離れない。

 ピザを受け取った人々は、かつて森だった場所から、木材を荷車に乗せ。集落の中央へと運んだ。


 ピンクワームは、大量の死骸を土に変えたあと、ベイルドマー準男爵領の森を開拓して。来年の豊作を確信に近づけた。

  

 次の村では、危険な黄色い蜂を仲間に加え。

 その次の村では、保護色が得意なカメレオンを仲間に加えた。

 残るは、青だけだ。

読んでいただき、ありがとうございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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