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使徒様と呼ばれて、  作者: 愛加 あかり
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バタマーザ・ナガールッツ子爵

バルーガタ・ナガールッツ子爵が、成人を機に、当主の座に付いた。

バルーガタは、ダガルプ神殿への献金を減らし。兄弟喧嘩のクリモッデ様側に付いている。




 私たちは、レッドを野に返す為にナガールッツの砦を越えた。


 聖女様が、幼き頃に疫病に侵された場所で。出会いの切っ掛けを作った場所でもある。


 砦の者たちが、マズーパを罠にかけて。マズーパの子供たちを、手懐けようとしたのが原因でもある。


 巡礼の度は続き、ターランド伯爵家から馬車1台分の小麦を借りて。移動用のピザ窯をを引き、炊き出しを行った。


 「レッド、ここでお別れだ。森の生態系を維持する為に、お前が必要なんだ」


 『婚姻の儀』を行う祭壇に、大量の食料を並べて、レッドとの別れを行った。


 「使徒様、私の給金を減らしてもいいので、レッドを、ダガルプ神殿の奥で飼えませんか」


 「何度も、話しましたよ、脳筋。使徒様や聖女様を、ここで困らせないで下さい」


 「そうです。使徒様の優しさに、つけ込まないでください」


 「すまないが、生態系を保つためなんだ。レッド程の大きな動物が、木々の隙間を広げて、地面に光を与えたら、苔が生えることはない。分かってくれ、カバード」


 「それなら、『マックス刈刃』で、隙間を作りに来ますから」


 『マックス刈刃』からの靄は消えて、私に触れるように専用のグローブが有れば、誰でも振り回す事が出来る。


 サママーテパ子爵のご子息から連絡を受けて、返還を求められたが。

 ダガルプ教とターランド伯爵家が、断固拒否したが。

 サママーテパ子爵側が、専用のグローブの購入を勧められた。

 『マックス刈刃』と、対になるもので。


 『封陣のグローブ』と『頼陣のグローブ』を、セットにして。金貨80枚の値を付けて来た。


 元がタダで、『フェロモン風呂』を薄めたヤツが売れに売れ。商人たちの懐から、金貨も入って来ていたので、マイナスは出なかった。


 「カバード、分かってくれ。自然に返すのが、良いんだ。森が再生をして、生態系が戻りつつある。別な個体が出てきたら、困るのはナガールッツの砦の兵士たちだ」


 「そうです。ビマージグリズリーとか出たら、軍を動かさないといけません」


 「その時は、私が先陣を切らせて頂きます。ビマージグリズリーと、一騎打ちなんて。今から、腕が鳴りますね」


 「脳筋かと思えば、バトルジャンキーなのですか。呆れるくらいですが。例えばの話です」


 「その時は、ユニコーンを出しても構いませんので。被害が出る前に、信徒を命がけで守ってください。カバード」


 「はい。使徒様、聖女様。私が、ビマージグリズリーを、必ず討伐いたします」


 私達は、レッドを野に放ち。『婚姻の儀』の跡地を後にした。

 6年近く経ち、レッドも大きくなり過ぎた。

 動物園では無く、野生で鍛えるべく解放した。


 時折、砦の者たちに、生態系の調査をするように伝え。砦を後にして、ナガールッツ子爵の城下を目指した。


 聖女様の噂の伝達早く、3件先の村まで走り。


 「お迎えする準備が、間に合っていない。足止めをしててくれ」

 「不作な時に、何を差し上げましょう」

 「聖女様が、炊き出しをされているようだ。手渡しで、ビザを受け取っているらしい」

 「前日の夕方から並んで、間に合うのか」

 「迎え入れる準備が先だ。並んでいる隙があるのは、老人と子供だけだ。大人たちは、食い物を掻き集めろ。大丈夫だとアピールをして、心配事を増やすな」



 私たちは、ナガールッツ子爵の城下に来ていた。


 歓迎ムードで、行列ができている。

 巡礼の方々も、列に並び。聖女様からの、ビザを手渡しで受け取ろうとしている。


 6年前とは違い、巡礼者が増えていて。

 どの街にも、活気が溢れている。


 ナガールッツ子爵領も、その一つだ。

 綿を、布に変えて。白いポンチョを作り。巡礼の衣装として販売を始めていて、懐を肥やしている。


 だが、ダガルプ神殿への献金は少なく。次男のクリモッデ側に、流れていた。

 ナガールッツ子爵家は、王家の闘いに加担していた。


 「クリモッデ様が、王位に付けば。ターランド伯爵家を、失墜させ。ナガールッツ伯爵として、クラージツ平野を収めることが出来る。今しばらくの辛抱だ」


 バタマーザ・ナガールッツ子爵16歳の野望は、始まったばかりだ。



 流石に、ナガールッツ子爵城の街。いつも以上に、釜をフル稼働で動かしても足りずに。街の竈も3軒借りた。


 熱々のピザの半身を、バルーガタの大きな葉で包み。一人ずつ持たせた。


 「今しばらくの辛抱です。頑張ってください」

 「来年は、豊作になりますから、頑張りましょう」

 「お熱いですので、気をつけてください」

 「いっぱい食べて、大きくなってね」


 聖女様は、信徒を鼓舞して。希望を与えた。

 信徒も、聖女様の言葉を貰い。活力に変える。



 お昼を過ぎ、途切れることの無い列に、ナガールッツ子爵の馬車がやって来た。


 2頭引きの馬車で、型が古く装飾がいくつか欠けている。

 馬は、立派そうだが、馬車はみすぼらしかった。


 ゆっくりと、戸が開き。最初に、バルーガタが、降り立ち。

 皆に、膝を付かせた。


 それでも、聖女様は、手を止めずに。膝を付いた老婆に手を差し伸べて。ピザを、手渡した。


 「ゆっくりで、大丈夫ですよ。慌てて、立ち上がると、ケガをしますからね」


 老婆は、若い領主のバルーガタを無視して立ち上がり。聖女様に、感謝をした。


 ナガールッツ子爵の馬車から降り立ったのは、23歳のサユークべ様だ。

 バルーガタ様が、14歳なった時に式を挙げて。今は、3人目を身ごもっている。

 19歳まで、お相手に恵まれず。カリフナ嬢の後釜についた方だ。


 男爵家で育ち。長女ながらも、次女三女と抜かれて、19歳に、縁談が持ち上がった。


 勧めたのは、イーガージターランド伯爵様だ。


 バルーガタも、側室を設けたが。

 サユークべ様が、城の中に入れず。城下で暮らしている。


 大きなお腹を抱えている、サユークべ様を、御者が気を使い。

 ステップや手を差し出している。


 バルーガタは、振り向きもしなかった。


 「老婆、頭が高い。膝を付け。不敬罪で死罪にするぞ」


 立ち上がろうとした、老婆は聖女様の手を強く握り。ゆっくりと膝を落とした。


 聖女様は、ベールを捲り。力強くバルーガタを睨んだ。


 だが、一瞬の事で。直ぐに我に返り、ベールが下ろし。私の後ろで、丸くなった。


 成長したとしても、聖女様は、バルーガタと『婚姻の儀』を交わしている。

 カリフナ・ターランドが、生きている事を世間に発表してはならない。

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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