外伝
隣国、ランゴーデン聖王国にも、使徒が誕生していて。自らを、ベルガメッシュと名乗り。神に、変わろうとしている。
何処にでも、自分たちの土地を守ろうとし。戦争が始まろうとしても、動こうとしない者たちは居る。
耐えた後は、笑い話に変わり。国は、良くなると信じている。
そんな田舎の農家を、直接訪れて。僅かばかりの小麦を分けてもらう、商人の親子がいたが。
日増しに、砦の通過は困難となり。税の取り立ても増えた。
税が、払えないと。男は兵へ、女は慰み者へとなり。盗賊と変わらないレベルにまで落ちた。
「やはり、遠くまで来ていたようだ。大量の小麦を求めて、クラージツ平原を離れたのが、良くなかった。なぁ」
「だけど、私たちを救ったのは、あの井戸水です。疫病に侵され、死の淵から舞い戻れたのは、使徒様からの奇跡です。ご縁を返さなければ」
「だが、馬車に小麦を積み過ぎたようだ。このまま、砦に入ったら、全てを没収されてしまう。ここは、一時、隣国へ避難すべきなのかもな」
「お父さん、クラージツ平原へは、戻れますよね。噂に聞く、聖女様誕生の絵画を、見に戻れますよね」
「ハルーユは、心配性だな。戦争など、直ぐに終わる。そうなったら、大手を振って、クラージツ平原へ行き、そこで暮らそう。ダガルプ教の方に、嫁げば、安泰だ」
「はい。ダガルプ教徒の方でしたら、嫁いでも。ヤッていける気がします」
「あそこは、豊かな国となる。この国が、平和に戻ったら。なぁ〜に、3年も待たずに、平和が戻るよ」
「このような内乱で、商人を続けるのは、無謀ですね」
商人の親子は、ガグリップ王国を離れ。隣国、ランゴーデン聖王国へ逃げた。
ランゴーデンの神殿にも、同時期に使徒が誕生している。
名を、ベルガメッシュと名乗っている。
己を、進化させる為に、左手の平をナイフで刺し。自ら啜ったと言う。
ベルガメッシュは、生後2年で、2m以上の巨漢になり。筋骨隆々の仁王像を彷彿させる体を得ている。
真っ白な体に、筋骨隆々。更に、胸板におっぱい乗り。二段の胸が入り、巨大なペニスを備え。銀髪に、バランスの悪い顔がついた。
「じい、今度のシスターも駄目だった。途中で、気を失い、中に出したら、いつものように、溶けて消えた」
ベルガメッシュは、謁見の間から出てきた。
贅を尽くした、謁見の間だったが。2年で、血なまぐさい部屋になった。
「さようですか。ですが、問題有りません。来週も、女は用意しておりますし。使徒様のお世継ぎが出来るのなら、シスターの300人や400人は、関係有りません。お体の方を、大事になされて、来週までお待ち下さい」
「分かった。奥で休ませてもらう」
ベルガメッシュは、奥の自室へと戻った。
ランゴーデン聖王国の砦を抜けて、最初の村へ逃げ込んだ親子は、ガグリップ王国の話わさせられた。
拷問では無く、歓迎された。
お酒を出されて、料理が並び。
商人は、多くを語り。娘も、使徒様の話をした。
「ダガルプ教の使徒様は、本当にお優しい方なのです。可愛らしくもありました。綺羅びやかな、ドレスを来て、微笑み、手を振るのです。触れる事は、叶わぬようですが」
「お優しいのですね、ダガルプ教の使徒様は」
「ですから、可愛らいく、お優しい方です」
翌朝、商人の父親は、死体となり。川に流された。
娘は、村の犠牲者となり。ランゴーデン聖王国神殿へ運ばれた。
持て成した、村長は。
自分の娘を庇うために、商人の娘を神殿へ送った。
命からがら、逃げてきた者たちを、軽んじている。
小麦や蓄えを奪い。父親の命を奪い。娘の自由を奪い。馬や馬車も金に換えた。
ガグリップ王国のサママーテパ子爵でも、小さな事件が起こりつつある。
サママーテパ子爵夫人は、代々伝わる文献を読み漁っていた。
「有った。これだは」
ふるぼけた書物を、引っ張り出しては、ページを捲った。
「そう、コレコレ」
夫人は、指でなぞりながら、文字を読んだ。
『聖女の脱糞で、シワが伸び、ハリと艶が戻り。シミが消えて。年が30年若返る。
触れるだけで、若返る。ある者は、顔に塗り、卵のような肌を得た、ある者は、垂れた乳が針を戻し。バストアップを成したと。
諸説あります』
こうしていては、時間の無駄です。
急がねは、なりません。シワが増える前に。シミを消す為に。腹の肉を、胸に移動させねば。
サママーテパ子爵夫人は、宝物庫にある、デスサイズを手にした。
『マックス刈刃』を手にした。
国宝とも呼ばれ。サママーテパ子爵家に、代々伝わるお宝。
一振すれば、襲いかかる兵を10人まとめて、なぎ払うと謳われた代物だ。
サママーテパ子爵の先祖は、武勲を上げて子爵の座に就いている。
「これを、ダガルプ神殿経奉納すれば、聖女への謁見は叶うはず。そこからは、頭を下げるしかないけど。若さを取り戻すチャンスよ」
サママーテパ子爵は、教会へ多大な寄付をして。ダガルプ神殿の情報を聞き出し。ターランドへと向かった。
ハルーユは、ランゴーデン神殿の謁見の間に、通されていた。
入口から、2段高くなった玉座まで、赤い絨毯が敷かれ。金属と樹木が一体化したような玉座に、ベルガメッシュが裸で座っていた。
全ての窓が、ステンドグラスで。ダガルプ神殿と似たような、天使が描かれている。
だが、目の前に居るのは、天使に似つかぬ。白い悪魔だ。
壁や床には、無数の血の跡が有り。異臭も放たれ。空気の縦貫できない謁見の間は、夏になると、使えなくなるだろう。
ハルーユは、下着姿で首に鉄の首輪を付けられて、鎖でつながらた先に、ランゴーデン司教が居られた。
「本日の贄に御座います。平民からの貢物ですので、お受け取り下さい」
「イヤー。こんなの使徒様なんかではない。本物の使徒様、お助け下さい」
ハルーユの希望は消えて、残酷な現実が押し寄せた。
「ああ、皆そう言うが。私が、本物で、これが現実だ。伝承や、絵画なんて、当てにできた物じゃない」
「誓う。そんなんじゃない。使徒様は…」
「うるさい小娘。黙っていろ」
司教は、大司教のように殺されたく無いから、鎖を引いて、ハルーユを黙らせた。
「じい、もう良い。コヤツも、オレが触れたらおかしくなる。心配するな。それとも、一緒に混ざるか。大司教のように」
「私は、遠慮させて頂きます。では、ごゆっくりお楽しみ下さい」
司教は、その場にハルーユ残して、その場を去った。
1時間後、予想打にしないことが起きた。
あろう事か、ハルーユは事を終えても、生きていた。
ベルガメッシュは、世継ぎが出来ると思っていたらしいが。
ハルーユが、ダイイングメッセージを残し旅立った。
「ダメ。井戸水を下さい。井戸水を、飲ませて下さい。このままでは、…」
ベルガメッシュの子種は、ハルーユの卵子と結合した後。直ぐに、着床してハルーユの養分を吸い取り。母子共に、力尽きた。
ハルーユは、目に見える勢いで細くなり。骨も残らぬほど、子供に吸われて消えた。
「じい、井戸水とは何のことだ」
「分かりかねます」
「地下にある聖水の事か」
「お戯れを。あれは、ベルガメッシュ様が、『タダの水だ』と言って、右腕ごと切り落とし。ヘドロの悪臭漂う場所へ、変えたでは有りませんか」
「使えねぇ~な。ググれないのかよ、この世界は」
ベルガメッシュは、左手で司教を進化させた後に、闘技場で大司教と戦わせた。
そして、村長の娘が生きていると知り。
情報を聞き出したが、何の成果もなかった。
村長が、話したのは。ガグリップ王国の内戦についてだ。使徒様に関しては、話したが。薬の井戸水については、話してなかった。
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