表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使徒様と呼ばれて、  作者: 愛加 あかり
12/30

ビカーリア司祭

ガグリップ王国に、異変が起こっている。

長男のラワーッドを、後継者にするか。

次男のクモリッデの馬鹿を、王にするのか。

国を二分する戦いに、ダガルプ神殿が加わろうとしている。




 ダガルプ神殿に入り、半年が過ぎた。


 カリナフ嬢は、神殿の奥で、贅を尽くした物を身に着けている。


 そうでは無い。

 私たちの功績が実を結んだのだ。

 ガグリップ王国のダガルプ教の信者達が、クラージツ平野に集まりつつ有る。


 ガグリップ王国の王様が、跡継ぎを誰にするかで揉めている。


 長男のラワーッドにするか。

 次男のクモリッデにするか。

 貴族たちの間で亀裂が生じ。国が二分されている。


 肝心の王様は、病にフケ。寝込んでいる。


 そこへ、ダガルプ神殿のある、クラージツ平野で。使徒様が、民の為に奮闘していると噂がなかれ。


 クラージツ平野に、ダガルプ教の信徒が集結している。

 内戦で、命を失うぐらいなら、神に捧げる。

 民、百姓の為に動いた、使徒様を崇める。


 信徒は、徐々に集まり。

 最終的に、58ヶ所の巡礼の旅が始まった。


 最初の街で、スタンプ手帳を求めて。

 58ヶ所のスタンプを押す。


 スタンプ手帳の表紙一番人気は、天使様だが。

 2番人気は、以外にも、『レッド』だ。

 使徒ではない。


 使徒を、表現して良いのか、議論になり。通らなかった。


 レッドは、ナガールッツ子爵の砦に戻されて、巡礼者達からの、施しを貰っている。


 野生に返されては居なかった。


 動物園の猛獣のように、高い塀に囲まれて、見下ろされる形で、餌を貰っている。



 ナガールッツ子爵領で採れた、綿を布に変えて、真っ白なフード付きのポンチョ風のローブを作った。


 頭からスポって、着れる。タイプのローブ。ボタンも無く、薄手で着ている服からでもかさばらないようにと、作られた。

 司祭の気分を味わえる。


 次に、ベイルドマー準男爵領で、大量の樹木を伐採して、移住の為の家屋が建造され、余った木材で、杖や紙が作られている。


 ナベービックも、この領内に有る。

 未開拓の土地で、開墾が進められている。


 内戦が始まる前に、多くの民を救おうと、ダガルプ教の司祭たちは、神父たちに触れを出した。


 税が、引き上がる前に。

 領の砦が、自由に通れるうちに。

 赤紙が、届く前に。


 貴族のメンツの為に、死ぬのだけは嫌だった。

 他国が攻めてくるなら、自国を守るが。

 内戦ほど、無意味なものは無い。


 兄弟喧嘩などで、無駄死になど、報われない。


 しかし、それらが全て裏目に出た。


 民が、逃げる訳でも、土地を捨てる訳でも無く。

 少しでもお金にしようと、売り払った。


 領民たちは、領に有るお金を、クラージツ平野に移したのだ。

 戦場に、駆り出される男も、クラージツ平野に移動して。

 次の世代の子をなす、女性も居なくなった。


 最小限の持ち物だけで、クラージツ平野を目指した。

 これには、内戦に反対する貴族や商人も、加わり。

 大移動が始まる。


 貴族や商人たちは、穀物を大量に買い込み、クラージツ平野へと送り。

 内戦より先に、兵糧攻めが行われた。


 物価が高騰しても、貴族たちには、関係なかった。

 生き残り、敵対する貴族たちを、滅ぼせば勝利だ。


 『兵を、集めよ』


 皆、砦を通らずに、獣道を通り。

 命からがら逃げた。


 ある者たちは、野党に殺され。

 ある者たちは、獣に襲われ。

 ある者たちは、同族に『抜け道』が有ると、そそのかされて、貴族に売られた。

 


 クラージツ平野では、難民キャンプが作られ始めた。


 ビカーリア司祭も、その中にいる。

 人々を助ける為では無く。人を探していた。


 ビカーリア司祭は、過去に南部の港町で神父として、ダガルプ教を教えていた。


 ビカーリア自信も、孤児として教会に拾われて、ターレブルの港町で育ち、ターレブルの教会に身を捧げていた。


 だが、ターレブルの神父だった、バレーヴィが死去して、ダガルプ神殿から神父が派遣されなかった。


 誰も、知らせを出さなかった。


 孤児を、養うだけで精一杯で。

 バレーヴィは、後継者を作らずに、突然逝ってしまった。


 子供達が大きくなると、外に出して。働き口も世話していた。

 そんな働き者だったが、早くして亡くなった。


 そんな時に、一番年上だっただけで、神父の座が回って来た。

 ビカーリアは、神父を名乗り。祈りを捧げ、施しをいただき、孤児たちを世話した。


 そんな時だった。


 孤児を引き取りたいと、名乗る者が出てきた。

 『奴隷商』のガンザイで。


 最初は、農家の老夫婦が、跡継ぎを欲しがっていると嘘を付き、子供を一人拐った。


 次に、その子に嫁を与えると言い。女の子も拐い。


 子供たちは、教会から離れて行った。


 だが、お布施が届く。


 休息の日に、バレーヴィのマネをして、ダガルプ教の本を読む。

 これは、子供の頃から、バレーヴィの側に居たので、難なくこなしたが。


 お金の使い方が分からない。

 子供たちは、里子へと出して。

 お金は、ダガルプ神殿へ使わずに、懐を肥やした。

 最初の頃は、罪悪感も有ったが。

 年を重ねるに連れて、薄れて行った。


 そんな時に、バレーヴィの師であるサヌタオ司祭から連絡を受ける。


 『バレーヴィへ、


 すまないが、金貨を5枚融通して貰えないだらうか。

 司祭への道が開けそうなのだ。

 私が、司祭になったら、お前を助祭にして、神殿へ呼ぶ事も可能になる。

 悪い話ではないだろ。


 金貨5枚必要なんだ。

 宜しく頼む、サヌタオ』


 丁寧に、ロウソクで封をしてよこしている。


 ビカーリア神父は、バレーヴィ神父が死去した事と、金貨を5枚包み。

 神殿のサヌタオ司祭へ送った。


 サヌタオ司祭は、ビマージグリズリーの討伐資金に、金貨5枚を充てることができ、小さな村を救うことが出来た。


 その小さな村から、僅かではあるが、献金が届くようになり、ダガルプ神殿は、少しずつだが潤っていく。


 そして、ビカーリア神父は、神殿の門をくぐり。助祭の地位を得た。


 そして、ナベービックの村で、使徒が誕生したと手紙を浮かた時に、アザッガテ司祭に、金貨を2枚献上して、司祭に登りつめた。


 だが、ここまでだった。


 最近、港町からのお布施が滞り、焦っていた。

 手元に、心許ない金子しか持ち合わせてなかった。


 「サッタフレー神父、こっちだ」


 「ご無沙汰してます、ビカーリア司祭。お元気そうで、何よりです」


 「そっちは、大変だったと聞いている。無事で何よりだが。例のものは持ってきたか」


 「それが、少々手違いがございまして。彼が、持っています」


 「よぉ。久しぶりですね。ビカーリア司祭様、出世したそうで、おめでとうございます」


 「ガンザイ。お前は、クモリッデ派の人間だろ。ここは、難民キャンプだぞ。知っているだろ」


 「この薬を、誰に使うかは分かりませんが。兵士を、4、5人連れて帰りたい。先ずは、男だ。女は今度で良い」


 「分かった。夜そこの林に来てくれ」


 「こいつより、話が早くて助かる。夜まで待ってるよ」


 「宜しいのですか、あのような事を言って」


 「問題無い。あの薬を使うのだから、一人も2人も関係ない」

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ