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逃げ延びた先で待ち受けていたものは

ここリーキウ市はルーリア自治共和国の首府かつ最大の都市である。人口は二〇万人と連邦内の都市と比較すると巨大都市とは言えないが、首府であるため同規模の地方都市より栄えている。この都市は九〇年前、ルーリアの森をレーシアが支配したときに建設され、住民の大半は人間だ。均等に揃った建物群を見ると、まるで社会主義国家の計画都市のように見える。


そんな街中には悲壮感が漂っていた。店は閉まり、住民は荷物を道路に投げ、避難の準備を進めている様子だった。


宿も当然のごとく軒並み閉まっていたが、一箇所だけ開いているところを見つけた。


「お嬢ちゃんどっかの町から避難してきたのかい?今はまだ営業してるが、そろそろ私も避難しようと思っているんだ」


「とりあえず一泊したらどっかに行こうと思ってます」


「それならいいさ。もうこの町も長くはないだろうし。嬢ちゃんもミティシテェリアル軍が来る前に逃げるんだぞ」


財布に残っているわずかなお金を取り出し、一泊分の料金を支払おうとすると宿主に止められた。


「お代は結構さ。そのお金は食料とかに使いな」


「あ、ありがとうございます」


宿主に感謝して部屋に向かった。


部屋についた後、明日以降の生活費を稼ぐため手元のスマホで仕事を探そうとしたが、こんな状態で私がありつける仕事もなく、困っていた私はイワン中尉から言われたことを思い出した。


軍か・・・・・どんなところなんだろ。調べてみるか。


スマホを開き、ベッドの上でレーシア陸軍について調べた。自分の射撃スキルを活かせるし、何より衣食住は保証されるのでこれが最適解なのだろう・・・・・か。


調べていると急に眠気に襲われ、そのまま寝てしまった。目を開けると朝になっていた。早速行動に移そうと荷物をまとめ、私はリーキウの外れにある軍司令部に向かった。中に入ると志願しに来た若者や、書類が入っているだろう段ボールを搬出している軍人がせわしなく移動していた。


「やあ嬢ちゃん。君も志願しに来たのかい?最近の若者もしっかり愛国心があって助かるよ。」


「いえ、イワン中尉から呼ばれていて」


「イワン中尉か。そういやエルフの少女が着たら連絡しろって言ってたな。案内するよ」


そうして奥にある応接室に案内された。出された紅茶を飲みながらしばらく待っていたところ、イワン中尉とほかにも偉そうな軍人たちが何人か部屋に入ってきた。一人の男が私に話しかけてきた。


「私はメルヴェージェフ大佐だ。エルフが志願しに来たのは久し振りでな、話によると君は猟師だそうだな」


「はい」


「そうか。獲物を仕留めることができるということは、狙撃がうまいということだ。早速だが今から射撃場でその腕前を見せてくれないか?」


なんという無茶振りだ。今から狙撃をしろと・・・?私が使ってる猟銃は散弾銃であって狙撃銃じゃないって!


そうして射撃場に移動したあと、銃を渡された。軍で使われてる狙撃銃みたいだ。普段使い慣れた猟銃とは使い方も何もかも違い困惑した。こんなのでどうやって的を狙えばいいんだ・・・・・


ここで失敗して大勢の前で恥をかくことだけは絶対に避けたかったので、今までの経験とあとは感だけでトリガーを引いた。


お願い当たってて!的の中ならどこでもいいから!


的を見てみると命中しただけでなく、なんと中心をきれいに撃ち抜いていた。奇跡だ・・・!


「おお、素晴らしい。狙撃銃を使うのは初めてだと言ってたがこんなにも正確に撃てるのはなかなかいないぞ。まて、この跡はなんだ。間違いない魔法の跡だ。もしかして君、魔法特性があるのでは?ちょっと検査機器を持ってきてくれ」


私が魔法士・・・・・?そんなことあるのかな・・・・・今まで一度も魔法なんて使えたことないのに。簡単な魔力検査をやってみたところすぐに結果がでた。どうやら私には魔法特性があるらしい。


検査結果を見ながら驚いているとメルヴェージェフ大佐が話しかけてきた。


「おお、魔力適正があるのか。さすがエルフだ。魔法適性が高いだけある。羨ましいものだ。君、年はいくつなんだい?」


「一五歳です」


「一五歳だと?まだ中学に行ってる年じゃないか。学校と家族はどうしたんだ・・・・・いやこんな状況じゃ学校はないな。それにここに来たということは家族も・・・・・。すまなかった。今の質問は忘れてくれ。この年で軍にいれるわけにもいかないし、どうしたものか。そうだ、この学力試験を受けてみてくれ」


流れで学力試験を受けることになった。中学校は父が死んでからあまり行けてなかったが、勉強はできるほうだと自負していた。決して簡単な問題ではなかったが、日頃勉強していたおかげでなんとか解くことができた。


「学力もそこそこあるじゃないか。材料はそろった。君を陸軍士官学校に推薦しようと思う。試験日までほんのわずかな日しかないが私の権限でねじ込んでおこう」


「し、士官学校に私なんかを、本気ですか?」


「もちろん本気さ。私の勘だが君はきっと優秀な軍人になると思うぞ。明日の朝、駅前に来てくれ。早速だが、首都ウェルナに向かうぞ」


まさか高校に行く余裕もお金もなかったしある意味チャンスかも。けど私はニーナと一緒に暮らせしたかったな。ニーナ、私ウェルナに行ってもいいよね・・・・・


もう悔やむなアイーシャ、未来のことだけを考えるんだ!


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