表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/30

転生したら殺人事件の被害者でした 5

「出発は明日じゃなかったのか?」

「うちの祖母さんが、明日は日が悪いから今日に行けってせっついてきたんだよ。祖父さんが死んでからも元気なこった」

「ははっ! 気をつけて行ってこいよ。最近、夜は冷えるからな」

 コリーと門兵の会話を、アキラは荷台で荷物のふりをしながら聞いていた。

 移動手段は馬車。明日の出発のために用意はできていたので、すぐに出立することができた。門兵と言ったが、城壁があるわけでもなく、街道へつながる通りに、人の流動を知るため、人が置かれているだけだ。馬車の何かを調べられるでもなく、挨拶程度で進められた。

 街を離れ、やっと緊張が解けた気がした。

「これでエレンは死んだ。私は世間に疎いただの美少年(※他称)だよ。それでもついてくるのかい? スレイ」

「もちろんです。何かご都合が悪いのですか?」

「うーん、半々かな。当面は路銀と案内人が必要だ。この世界に慣れるまでは。ただ、私は一人大好きの人間嫌いだからね」

「ご安心ください。私、犬でございます」

「私が言う人間は、言葉と人格と知性を持った者、くらいの意味だから、十分に対象だよ」

「犬で! 犬でいさせてください!!」

「……コリーさん、古くからの知り合いみたいだから聞きますけど、もとからこうなんですか?」

 御者台のコリーに問う。

「崇拝の対象が変わっただけで、あまり変わらないな」

 首輪のせいかもしれないと思っていたが、本来の姿らしい。

「人間嫌いというわりに、そうは思わせない人当たりに見えるけど?」

「一番面倒なのは無駄な軋轢です。適当に付かず離れずが、面倒がないですから。ただし対人関連動作は何でも社会性擬態耐久値(SGT)が減少します。メンタルポイント(MP)と同種なので、寝て回復するわけでもないです。今も少しずつ減っています。スレイは、もうしばらくは割り切るしかないかなと思っています」

「ポイント? スレイは、頭はいいはずなんだが、夢中になると一辺倒になる。頭はいいはずなんだが」

「頭がいいからこそ、だと思います。直接身体への刺激でなく、思考や感情といった脳への刺激で快楽を得られる」

「あぁ、うん。そういう感じだ。それで、美少年くん。エレンが死んだっていうなら、美少年くんは何者かな?」

「“アキラ”です」

「アキラ様ですね! 聞いたことのない響きですが、どのような意味なのでしょうか?」

 スレイはやっと聞けたアキラの名前に飛びついた。

「私の国では表意文字をつかっている。太陽を表す文字を三つ組み合わせて一文字で、“(アキラ)”と読む。明るくてキラキラ輝くという意味だ。あぁ、アキラという名前は男でも女でも名付けられる名前なんだが、私は元の世界では女だったよ」

「……エレン様のお名前も、輝く光という意味を持っています。スレイという名は、エレン様にいただいたものです。エレン様にお返ししますので、新しい名前をいただきたいです」

「え、やだめんどくさい。コリーさん、スレイの前の名前って何ですか?」

「新しい名前をくださいぃ~!!」

「ポチとハチ、どっちがいい?」

「それはどのような意味が?」

「ポチは一般的な犬の名前。ハチは有名な忠犬の名前だ」

「これからはハチとお呼びください!」

 スレイあらためハチは食い気味に宣言した。

「ハチ」

「はいっ!」

「うるさい。声だけじゃなく、まとわりついてくるのもうるさい。静かにして」

「……はい」

 ハチはしょぼくれて隅の方に縮こまってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ