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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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目が覚めて〜1

理玖は夢を見ていた。



1匹の狼になって、ただ1人で右も左も真っ暗な場所を駆けているだけの夢。両親が死んでから見る様になった夢。



何をしても満たされず空っぽの空洞を抱えて、飢えと渇きを満たす『何か』を探す夢。



苦しくはない。だって、周りには仲間がいるから。生き物の様で生き物ではない彼らは日を追う毎に増えている。



彼らはただ理玖の側から離れようとせず、ひたすら駆けていく理玖について行く。



………だけど、理玖は何も満たされなかった。



今日も何も満たされずに終わると思ったその時、目の前に誰かが立っていた。



顔は見えない。身体の輪郭もはっきりしない。だけど、月の様に輝く長い銀髪だけはわかった。



その人はゆっくりと狼の理玖へと近づいてくると膝を屈めて頭を撫でてきた。そして、飼い主が飼犬にやる様に理玖の両頬辺りをわしゃわしゃする。



その人の顔は相変わらず見えない。



けれど、何故だろう。



理玖は今まで満たされなかった自身の空洞が少し埋まった気がした。





***




「─────っ」



暖かな日差しが瞼を指して目を開けるとそこは真っ白な天井だった。見渡せばそこは壁も床もベッドも白で統一されており、理玖はここが病室だと理解した。



(確かあの後………契約だのなんだと言われてあの人にキスされて、痛みで………)



ズキズキと痛む頭で理玖は自分が意識を失う前に起きたことを思い起こした。



そして意識がはっきりしていくにつれて身体に痛みが走り、違和感がする。特に頭、喉、胸部、下半身全体。視界も違う気がする。



(………?)



声を出そうにも痛みでヒューヒューと風音しか出なかった。



その時、部屋の入り口が開いてナース服を着た看護師が入ってきた。



「あ、目が覚めたんですね」



理玖はとりあえず現状を聴きたくて、身体を起こす。すると何かが視界を遮る。



「………?──ッ?!」



それを振り払おうとすると、頭皮が傷んだ。瞬時にそれが自身の髪だと言う事に気づいた。そこまで伸びるまで眠っていたのかと理玖は思い、混乱する。身体を動かそうにもまるで自分の身体ではないかの様に動かせない事に理玖の混乱は更に上乗せされる。



「お、落ち着いてください!大丈夫ですから!」



「理玖くん!どうしましたか?!」



「何があった?!」



とここで理玖がよく知る人物が現れた。それは日暮と縁流だった。



「……ァ、ぇん、りぅ、さ……ひ、くぁしさ……」



「大丈夫です理玖くん。落ち着いてください。まずは落ち着いて息を整えて。何も考えずに頭を空っぽにして」



日暮に頭を抱え込まれながらそう言われ、理玖は素直に従った。その時、何故かいつもよりも日暮の匂いが濃い様に感じた。



そして、しばらくそうしていると日暮は理玖を解放した。



「……落ち着いた様ですね。あぁ、まだ喋っては駄目です。身体の方がまだ完全に安定していないですからね。何か聞きたいことがあるときはこのタブレットでお願いします」



「ではまず君が聞きたいことを先に言っておこう。理玖、君はボイド都市部襲撃から4日ほど眠っていた。そしてここはテルゼウスの本拠地ユグドラシルの特別軍病棟だ。君の身体に起こった異常を検査する為にも普通の病院では無理だったからな…………」



『俺の身体はどうなっているんですか?なんか身体中に違和感が凄くて』



理玖がタブレットで2人に聞くと2人はなんとも言えない表情となった。



「鏡を見ればわかりますが………理玖くん、先に言っておきます。信じられないかもしれませんがこれが今の貴方の姿です」



日暮はそう言って少し大きめの鏡を理玖に向けて今の理玖の姿を見せた。



鏡に反射していたのは確かに理玖だった。毎日洗面台の鏡で見る自身の顔ではあったが、その鏡の中の理玖の頭には髪と同じ茶色の狼耳が生えており、髪も白のメッシュが入って長さも背にかかるほど長くなっていた。



そして、薄手の病衣のしたには誰から見てもあると分かるほど胸が膨らんでいた。



しばらく鏡を見たまま固まっていた理玖が右手をあげると、鏡に写る自分は右手をあげた。そして、頭に手をやると確かに耳の感触があり、鏡の中の自分も同じ様に自身の耳を触っていた。



理玖は最後に布団に手を入れて違和感のある下半身を触り、自分のアレが無くなって代わりに穴がある。



「─────ッ!!」



現状を理解した理玖は文字通り声にならない叫びをあげた。

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