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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第6章
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幕間〜鏡猫の療養記録1

sideウィステリア



鉄臭く湿った匂いが満たされた薄暗い廊下を私は走っていた。



アレから逃げる為に。あの夜と同じ靴音と時折聞こえる笑い声を響かせながらやってくるアレから。



ケラケラと子供みたいな複数の笑い声が段々と私に迫ってくる。姿は見えない。だけど、確かにいる。



アレから逃げていたら急に身体がズシリと重くなった。



ガシャン………ガシャン………とゆっくりとアレは歩いて近づいてくる。逃げ出そうにも背中の重みは増していくばかりだった。



そして、足音がほぼ真後ろで止まり…………




「ナ〝ァ〝ァ〝ァ〜〜ゴ」




なんだか気の抜ける猫の鳴き声が聞こえてこれは夢だと気づいた。





***




「………………」




「ナ〝ァァ〜〜」




目が覚めると目の前にはペチャ鼻のブサイクな猫の顔のドアップとは如何なものだろうか。



しかもこのブサ猫、一体何食べたらそんなにデカくなるのか気になるくらいデカくて、その大きさは大型犬くらいだ。重いし、暑苦しい。




「ナ〝ァ」



「……わかったから。起きたからちょっと退いてニーナ」




ブサ猫……ニーナは身体の下に入れていた前脚を出して、寝起きの私の頬をブニブニと押してくる。ただ、その巨体故か力が普通の猫よりも強い。



そしてこのまま二度寝しようものなら脳に直接響くニーナ猫パンチをくらう事になる。あれは痛かった。



ニーナを退かした後、私はベッドから降りて着替えと身支度を済ませる。支度が終わるとニーナは私の背中に飛び乗ってきた。



ニーナは何故かわからないが私をよく乗り物代わりにしてくる。




「重い………」



「ナアァァ〜」




そうして私は居候先の自部屋から出た。




***




───拝啓、天国にいるであろう家族のみんな。私は今、療養中です。



あの日の夜……軍服の悪魔に捕まって気絶したおそらく次の日。目が覚めるとそこは清潔感のある知らない天井だった。



腕には異能封じのバンドがしてあり、窓には格子があった。………まぁ、バンドをされてるのと身体が異様にダルく感じた事から逃げる気なんてもうなかったんだけど。



それでしばらくぼんやりしていると看護師が来て簡単な検査をした後、柳龍副局長……今は局長か……がハウンドの(神崎)を連れてやって来て、今までのことの謝罪とこれからの私の処遇を説明をされた。



まず、異様な身体のダルさは身体に蓄積していた薬を抜いた為に起きている事でしばらく続くそうだ。普通ならば抜く際の副作用などで苦しむ筈だったが、あの軍服の悪魔……現特戦隊隊長のハウンドの異能力で副作用ごと抜いたそうだ。



……………あの見るからにヤバそうな奴が現特戦隊隊長のハウンドって。しかも目の前の柳龍局長の姪っ子で前特戦隊隊長と副隊長の子って見るからに手出しちゃいけない血筋じゃんか。



実際にあのクソアマ(グラウシス)はいつもの様に手を出して、取り巻き共々あの軍服の悪魔が今までに喰ってきたボイドと魔獣と一緒に生きたまま肉団子にされて今でも肉餌として生きているそうだ。



実物の写真を見せるか?と提案されたが、絶対に吐くと思ったから断った。



今まで私がして来た事については情状酌量の余地があるという事で数年はテルゼウスの監視下に置かれるとのことで、薬による身体のダメージの治療とその他諸々の審査や検査が終わった後にユグドラシルの本部ビルの後方勤務に向かう事になった。



そして療養についてだが、穏健派で協力的な魔術師の家で行う事になった。



というのも私はハウンド契約が切れてはいるものの、異能力を扱えるビーストだ。何かあった際の対処としてその心得がある魔術師の家系の家に向かった方がいいだろうという事だった。



これに関しては私から言う事はない。そもそも私はあのクソアマ(グラウシス)が嫌いなだけで魔術師とかそういうのには忌避感はない。



そうして療養先に選ばれたのが、代々魔導具やら呪いやらの鑑定と解除を家業としていて、今では魔術師向けの酪農業を兼業しているフローレン家である。



家長のジェイコブさんは真っ白な髭に小太りな感じで魔術師というよりかは農家みたいな人でその奥さんのマーシーさんは肝っ玉母ちゃんでお二人はラブラブだった。



子供は女2人と男3人で上からレイチェル、マキリア、ダードリー、ボブ、チェーニだ。



レイチェルは家長になる条件のひとつの魔眼の力が1番強く、いつも目隠しをして過ごしている。そして1番性格と見た目が濃い。



マキリアは姉ほどではないがそれなりに強力な魔眼を持っていた。見た目は清楚系でどことなく苦労性な感じが見て取れた。



ダードリーはジェイコブさんそっくりで性格は大人しめ。ボブはひょろりと背が高くいたずら好き。チェーニは1番筋肉質だが泣き虫だった。



そこにブサデブ猫のニーナを入れたフローレン家に私はお世話になっている。

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― 新着の感想 ―
[一言] よかった、変なトラウマになってなくて(٥↼_↼) 本人(理玖)に会ったら会ったでビビるかもしれんが(ʘᗩʘ’) この分なら精神障害の類は無さそうだな(゜o゜;
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