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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第5章
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鏡に咲く二季草〜8

気づけばブクマが700越えに………



ありがとうございます




───刻は少し遡る事、ウィステリアが自身が運営する闇サイトの依頼を受ける前。



愛莉珠の元に1通のメールが入った。その内容は………




『やっほー礼華ちゃ〜ん!ボクちゃんだよ〜☆依頼の件、終わったからそっちに送るねぇ』




と送り主の顔を知っている者なら脳裏にピースサインにキメ顔をしている赤子プレイ大好きロリババァの非常に軽いノリの文体だった。



そのメールには1つのWebリンクと今回の事件の依頼主のアカウントとその詳細が書かれていた。パルモンから送られて来た情報によると依頼主は以前夜奈が行った大規模援助審査で弾かれて研究費を打ち止めされた旧家であった。



尚、情報の最後の方にはパルモンのコメントで『乗っ取りとかの対策せずに実名表記の本垢でアクセスするとかアホなの??』とあった。



ウィステリアが運営しているWebサイトの特定は済んだが、これではまだ彼女の所在地がわかっていない上に、怪しまれてサイトを削除されれば捜索にまた時間がかかる。



そこで愛莉珠が思い付いた作戦は次の通りである。



まず、今回の件の依頼主のアカウントを乗っ取り、そのアカウントで似た様な依頼を出す。依頼を受けたウィステリアを目的地に誘導したのちに結界で建物ごと閉じ込めて捕縛するというシンプルなものである。



愛莉珠はその作戦案を神崎に持って行った所、状況が状況な為にすぐに可決され、実行に移された。



そして、作戦通りウィステリアは依頼を承諾し、作戦当日に彼女は捕獲現場となる雑居ビルに入っていった。



尚、今回の捕縛には魔法系を全て無効化できるという点から理玖が送られた。



───その判断が当事者にとってトラウマ物になるとは知らずに。




***




『明星都市部』の商業区域の一角にあるテルゼウス所有のとある雑居ビルには建物を丸ごと覆う大規模な結界が施されており、建物周辺には戦乙女達が武装して取り囲んでいて、物々しい空気を纏っていた。



……………ただ、戦乙女達の表情はなんとも言えないものになっていた。



というのも先程から建物内部から大砲さながらの炸裂音に狂った笑い声が建物中に響き渡っており、時折絶叫じみた悲鳴が外まで聞こえてきているからだ。



更に付け加えるとビルの周りにはホラー映画に出て来てもおかしくないグロテスクなゴーストが壊れたレコードの様にケラケラ笑ったり何かを叫んだりしてビルの壁の中を行ったり来たりしていた。




「………………なぁ、愛莉珠よ。アレはなんじゃ?」




作戦の外部連絡の為に来ていた神崎はゴーストがわちゃわちゃしているビルを指差しながら愛莉珠に聞いた。ビルを見ている神崎の視線は死んだ目になっていた。




「獲物の判断力を下げる為さ。ほら、ホラー映画でも気の弱いキャラは恐怖で動けなくなることが多いし。だから事前にホラー映画見せて、こんな風にしなよって言っておいた」



「確かにウィステリアは気の弱い方ではあるが………彼女は爆弾を持っとるんじゃそ?混乱して爆発させかねんじゃろ」



「それならさっき、リクから無効化したって連絡があったよ」



「………………あのゴーストはなんじゃ?」



「あれはリクのワンコ達だよ。この前、対象の体毛を入れると一定時間見た目だけ変身できるっていう魔法薬をウチの倉庫で見つけて、リクに変身して夜の彩りに添えようかなと思っておっ始めたんだよね」



「その話だと理玖坊は自分の顔とヤったのかの?」



「見た目だけ変身するだけで色は僕のまんまだよ。………ワンコ丼、結構楽しかったし向こうも楽しんでたよ?んで、まぁ行為なんだからディープとか色々やるんだけどさぁ。なんか僕から口移しするみたいにその魔法薬の残り滓を飲んじゃって、うまいこと魔改造された結果、ワンコ達はお化けに変身できる様になった」



「いみがわからん」




愛莉珠の説明に神崎が真顔でそう言った時、その日1番の悲鳴がビルから聞こえて来た。






***






sideウィステリア





私はがむしゃらに走っていた。




軍服を着たナニカはどうやってるのかさっきまで後ろを歩いていたのにしばらくすると走っている先にある個室になっている部屋から出てきたり、階段を下って逃げていたらいつの間にか下の階の踊り場で笑っていたりしていた。



……………窓から外に逃げようにも。




『コッチダァァァァアアアヨヨヨオオオオ』



『アハハハハハハハハハハハハハ』



『アソボァソボアソォボアソボォォォ』



『キャハハハハハハハハッ!!!!』




びっしりと窓に血みどろのスプラッターなゴーストがへばりついていたから出れなかった。さっきからゴーストの笑い声が反響しているせいで軍服を着たナニカの場所がいまいち把握出来ずにいた。



加えて、先程まで普通の内観だったビルは至る所に血がばら撒かれているせいで異臭が立ち込めており、ビーストの特権のひとつである嗅覚も役に立たなかった。



心臓に痛みが感じるほど鼓動が早くなって、息も絶え絶えになりながら、なんとかアレの追跡を振り切って、目についた扉に入って鍵を閉めて棚やら机やらを扉の前に置いてバリケードを作った。



…………改めて考えればそんなの意味がないのはわかっていたけど、その時の私は必死で気づかなかった。



バリケードを作り終えた直後にもう聞き慣れてしまったアレの足音が部屋の外から聞こえて来た。



私は上がった息をなんとか抑えてやり過ごす。



ガシャン………ガシャン………とゆっくりと歩いてきて、ちょうど私がいる部屋の前で足音が止まった。



ガチャガチャとドアノブを捻る音が続いてそして………ドアノブがバキッ!!と音を立てて壊れた。それだけで心臓が跳ね上がり生きた心地がしなくなる。



しかし、軍服のアレはそこから何もせずに何故か部屋の前から離れて行った。



やがて、足音が聞こえなくなって、ひとまず一息吐こうとして顔を上げたら…………


















「 み ぃ ぃ つ け た ぁ 」


















軍服のソイツが目と鼻の先にいて、パックリと口を裂けさせながら笑っていた。




「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?──────────────────────────────────────………」



そこから私の意識は途切れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い [一言] 最新話に追いついちゃった…
[一言] ハイ保護対象、確保〜直ぐにストレッチャー寄こして〜保護対象失神及び呼吸器系に乱れ有り、酸素吸入器の準備もね〜(⌐■-■) あ、あと精神に影響も考えられるからマタタビのお香も忘れずにね〜(´…
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