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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第1章
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幕間〜愛しきハウンドの出会い1

僕は彼に出会って初めて理解できた。



本当の意味でハウンドを持つ者がなんであんなにも自身のハウンドに執着するのか。



僕はそれに理解できずにいたけど、愚かだったのは僕の方だった。



だって、本当のハウンドはこんなにも愛おしいと思える存在だったからだ。




***




ボイド殲滅と人類の救済を目的とした組織『テルゼウス』。



それは今や人類の平和にとってなくてはならない存在である。司法財団から建設業や医療機関、果てには飲食店までどこへ行ってもその組織の名が至る所に見られ、その巨大さと影響力の強さがよくわかる。



そんな巨大な組織であるテルゼウスの本拠地であり、テルゼウスの要である戦乙女(ヴァルキリー)を収容しているのが『ユグドラシル』である。



戦乙女(ヴァルキリー)単騎でもその気になれば街1つ壊滅させることなど容易である為、万が一暴走した時に対処できる様一纏めにされているのだ。



戦乙女(ヴァルキリー)は一部例外を除いてユグドラシル内で生活を義務付けられている。出撃以外でユグドラシルの外に出る際には面倒な手続きが必要なのだ。



もっとも、ユグドラシル内はそれこそ1つの都市の様なものであまり不自由を感じることなく生活できるが。



そんなユグドラシルの中心部にある訓練所に数十人の戦乙女(ヴァルキリー)達が互いに自主練をしていた。中には自身のハウンドと行っている者もいる。



ハウンドは戦乙女(ヴァルキリー)と契約すると異能力が強化される。異能力とはビーストの中でも少数が扱える力のことで、狐系ならば発火系、猫系なら隠密系など種類が様々である。



また、ビーストには『覚醒』というとある条件を満たした者のみが戦乙女(ヴァルキリー)との契約時に発生する現象もある。



覚醒すると見た目が動物から神話などに登場する幻獣に近いものになる。当然、こうなると力も増大し異能力も変化してその者限定の固有能力となる。



ただ、覚醒したビーストはその条件故に非常に数が少なく、現在テルゼウスに所属しているビースト数千人に対して覚醒したビーストの数は僅か15名に留まっている。



現在、15名のうち12名は外部援護に、残る3名はユグドラシルに駐在している。



それでも契約してハウンドとなったビーストは強い為、あまり変わらないが……





そんな訓練所の様子を遠くから退屈そうに見ている戦乙女(ヴァルキリー)が1人



月の様に輝く長い銀髪を一纏めにし端正な顔に嵌る少し釣り目気味な紅眼は他者を無意識に威圧を掛けていた。体格はまるでモデルの様な誰もが一度は羨む完璧なもの。



彼女の名は礼華 愛莉珠。



テルゼウスに所属する戦乙女(ヴァルキリー)の中でも5本指に入るほどの実力者だ。



そんな彼女は今、片膝を抱えて頬を乗せた状態で口をへの文字にしている。そして、明らかに不機嫌な雰囲気を出している。



「……つまんない」



「仕方ないじゃろ愛莉珠。汝が出たら訓練ではなく蹂躙になるであろ?」



と愛莉珠がそう愚痴た時、その愚痴に1人反応した。



愛莉珠が首だけを後ろに向けて見れば、そこには1人のビーストがいた。



紫色の髪に眠そうな顔貌、横に垂れた大きな狐耳にはそれぞれ札の様な耳飾りを付けており、腰から生えている尾は9本ある。



彼女は神崎(かみさき) (みお)。テルゼウスのビースト管轄長で15人いる覚醒したビーストのうちの1人だ。



彼女の相棒(バディ)はユグドラシルの局長であり、こちらは常に多忙である。故にたまに使いの役割を担っていたりする。



「なにさ神崎管轄長。蹂躙だって格上に対しての訓練にはなるでしょ?それに、ずっとこのままだと身体鈍っちゃうし」



「それは局長に言え。──出撃じゃ。場所は第2都市圏でボイドの現界反応があった。タイプは群行型。汝はもしもの時のバックアップを」



「はいはい分かりました。行けばいいんでしょう?────ほらお前たちッ!!出撃準備ッ!!ボイドが出たよッ!場所は第2都市圏だから被害を最小限に抑える為に急げッ!!」



『『了解ッ!!』』



愛莉珠の号令に訓練所にいた戦乙女(ヴァルキリー)とハウンドは一斉に出撃準備をして現場へと向かった。



愛莉珠はというとあまりやる気無さそうに武装を整えると先に出撃した戦乙女(ヴァルキリー)たちの後を追った。

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