幕間〜とあるお家のお茶会3
最近、小説タグの『シリアス』を外そうか迷っています
「まずは自己紹介から。ちゃんと顔を合わせては初めてだね。僕はアリス・ドラゴローズ・レイブンハルト。今は礼華 愛莉珠って名乗っているんだ。出来れば礼華って呼んでほしいな。あ、様はいらないよ。これはあくまで非公式だし」
「わ、わかりました礼華さん。……私はマキリア・フローレンと申します。よろしくお願い致します」
まずは形からという事で挨拶から始まりました。
アリs……礼華様はあの様に仰っているが、彼方はこっちが言葉の選択肢を間違えて彼方の機嫌を損ねれば私達の一族が淘汰してしまえるくらいの権力を持っていますから。
「早速で悪いけど、君について軽く調べさせてもらったよ。通っているのが専門校じゃないのに、あのレベルの隠蔽を剥がす程の実力を持っているのはやはりフローレン家と言った所かな。あ、これ褒めてるよ?」
「あ、ありがとうございます………。ただ、私鑑定系以外は生活魔法くらいしか使えなくて……属性系は全く使えないんです………」
「え?使えない?初級レベルでも?」
「いえ初級レベルは使えますが、威力が子供のお遊びレベルで………。なんか治癒者によると私の魔眼との兼ね合いで属性系の才能が全部鑑定系にいってしまったみたいなんです」
「あー………代償って事かぁ。という事は君のお姉さんも?」
「………はい。私と似た様なものです」
こればかりは仕方ない事です。
強い力を持つという事はそれ相応の代償を支払わなければいけませんから。例えそれが本人が望まないものでも。
姉の方は鑑定系以外魔導具を使っても全く使えませんし、魔眼も私のよりも強力過ぎて私の眼鏡程度では意味がなく、普段は魔眼封じの目隠しをした上で視界制限の呪印を額に書いてあります。
本人はそれに関しては気にした様子は無く、毎朝両手に木の麺棒とフライパンを頭にプラスチックのボールを装備して、炎を吐く炎獄鶏と魔牛と大乱闘を繰り広げて美味しい卵と牛乳を獲得していくアニメ鑑賞が趣味の2次元オタクで筋金入りの陰キャだぼだぼジャージ合法ロリです。
言葉にすると属性が多過ぎるな私の姉。見た目は不審者そのものですが、家族想いの優しい姉です。
………ここで先程から静かな大泉さんの方を見てみました。
大泉さんの前には何故かマカロンがピラミッド型に積まれて置かれており、本人はコーヒー片手に背筋を伸ばして何やら本を読んでいました。
その本のタイトルは…………『誰でも出来る!ムキムキ☆エクササイズ♪〜これで君もボディビルダーだッ!!〜』でした。
…………………………色々と言いたいですが、どうしたらいいでしょうか。
見た目超絶もふもふ尻尾の無表情デフォの低身長巨乳美少女の覚醒ビーストに首輪付きメイド服にマカロンピラミッドにボディビルダーになる?本にと絵面が酷いんですが?
とここで私の視線に気づいた礼華様が大泉さんの方を見て……大泉さんが熱心に読んでいる本のタイトルを確認するとなんとも微妙な顔になりました。
「…………リク。そんなにゴリマッチョになりたいの?」
「…………前からの目標。最終到達点は身長190のマッチョ」
「いや無理でしょ。腹筋とか毎日やっているけどリクのお腹プニプニじゃんか」
「毎日の継続が身を結ぶ。いつかなれる」
「…………僕はプニプニでモチモチなリクがいいなぁ。ゴリマッチョなリクは見たくないなぁ」
「…………………」
「ねぇ〜〜、リクぅ〜〜」
礼華様の訴えに大泉さんはどこ吹く風と言わんばかりに淡々と返していくメイドわんこの大泉さん。
あのレイブンハルトの白い暴竜である礼華様相手にあんな返事で許されるのは他にはご家族の皆様か本当に気を許したご友人くらいでしょう。
大泉さんに抱きつきながら頬をぷすぷす突いている礼華様とそれを心底うぜぇ……というオーラを出しながらも淡々とマッチョになる本を読んでマカロンを頬張る大泉さん。
…………私のせいでかなり場が混沌としてきました。
そしてそのうち、礼華様の手が大泉さんのデカデカと実っている胸の方に伸ばされて、礼華様がそのスイカ……メロン?な大泉さんパイを躊躇いなく鷲掴みするとどこからともなく現れた大泉さんの狼に後ろから頭を丸齧りされました。
クラスの催眠ナルシストとは比にならないくらい強い噛みつきでなんかゴリゴリと鳴っちゃいけない音が鳴っちゃっています。
「「「………………」」」
狼の噛みつきにより静かになる私たち。聞こえるのは狼のゴリゴリ音とカウンターのキッチンから聞こえるコーヒーのドロップ音くらいです。
「…………話が逸れてしまったね。続きを始めようか」
「その前に頭の狼は大丈夫なのですか?」
礼華様が狼に頭ゴリゴリ齧られながらコーヒーを一口飲んで話の続きを始めようとしましたが、私は思わずそう聞いてしまった。
「心配いらないさ。噛まれている間は魔法が使えなくなって、無理に使おうとすると魔力回路をめちゃくちゃのズタズタにされて一生魔法が使えなくなるだけさ。ハハハッ!」
「いやそれ一大事じゃないですか!というか頭から血が出てますよ?!」
サラッと魔術師にとって死刑にも等しい状態を頭からダラダラと血を流しながら笑って話す礼華様。というかなんで主人が怪我負っているのに大泉さんは隣で呑気にコーヒーブレイクしてるんですか!?
「フローレンさん。これがお嬢の正常運転だから気にしなくていいぞ。噛みつきが終わったら自分で治す筈だし」
「私の心を読まないでください。というか止めないの?」
「魔狼達は普段は自由意思で行動する様にさせている。俺が止めてもいいが、止めたらお嬢がまた何かしてくるだろうし」
「そうだよ。僕はそろそろリク成分を補給しなきゃならないんだ。だから、そろそろ離してくれないかn─いだだだだだだ!!ちょッマ、マキリアッ!!この子剥がすの手伝ってぇ!!」
「えっ、あ……はいッ!」
私の思考を読んだのかそうなんでもないかの様に答える大泉さん。礼華様と私は狼を外そうとしていますが、狼は手脚をガッツリ絡めて意地でも離れようとしませんでした。
「ちょっとリクッ!この子に噛み付くのやめてって言ってよ!」
「お嬢が邪な考えをやめたらそいつは離れるよ」
「じゃあ、無理だね!!解散ッ!」
「いや礼華様、諦めないでくださいよ!?」
「いいかいマキリア。戦乙女は極一部を除いてユグドラシルか各方面の支部に箱詰めさ。そしてハウンド持ちの戦乙女の8割は自分のハウンドをどう性的に蹂躙するか日夜考えているもんだよ。だって娯楽といえばそれくらいなんださ。頭の中ピンクだらけさ」
「レジャー施設とかあるだろ」
「あんなの訓練の延長かハウンドを持っていない寂しい戦乙女が行くところさ!……いやまぁ、そいつらも終いに百合カップルになって夜にはお互いと熱い夜おっ始めてるけどさ。クリスマスなんて朝から晩までフィーバー状態さ」
「…………だからあんなにも目立つ場所にどデカいアダルトショップとかラブホがあるのか」
「そうそう。1番有名なのは柳龍局長だよ?あのババァ、この前新作の夜のオモチャを物色しに行ったら鉢合わせてね?エゲツないサイズのアレの張り子とローション1ダースを買っててさ。しかも出したポイントカードが月に10万以上の買い物を1年間続けた猛者しか持てないゴールデンブラックカードだったんだよ」
「…………………大丈夫かな澪姉さん」
「あの女狐なら大丈夫でしょ。それよりもその時買ったオクスリ試したいんだけどいいかな?効果は感度200倍の……」
「ちょっと貴女方は一体なんの話をしているんですか!?」
礼華様から暴露される世間には公開できない戦乙女の爛れた日常に頭が痛くなりました。
結局、礼華様から大泉さんの狼を引き剥がす事は出来ず、そのままお開きになりました。
最後に礼華様は戦乙女は給料が良くて自分の好きな事ができると仰っていましたが、爛れた日常の件を聞いた後ではどうしても躊躇ってしまいます………
フローレン家長女のイメージは色違い(≡ω≡.)にとあるGLGな最強先生の目隠しを付けて性格をぼっちちゃんにしてください
私はそのイメージでやりました




