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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第4章
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幕間〜とあるお家のお茶会2

招待状がきた時、家は上から下まで蜂の巣を突いた様に大騒ぎになりました。



そりゃあそうですよ。いくら御三家の血を引いてるとはいえ、うちは鑑定兼酪農でのんびり生計を立てている末端の一族ですから、そんな一族にしかも個人に御三家の自他共に認めるヤベェご令嬢からのお茶会の招待状が来たとなれば、お前一体なにやらかした?!ってなりますよ。



そんで事情を説明すると何故か口が開かなくなって、それに気づいた姉が少し『視てみる』とどうやら招待状に名前が書かれた人物に特定の事に関する情報を他者に伝えられない様にする魔法が付与されていたみたいでそれが発動したみたいでした。



遠隔でしかも特定人物のみに対して魔法を付与するとか流石は首席卒業というべきなのでしょか。



見るからにヤベェ所に片足どころか半身くらい余裕で突っ込んでいるであろう私を家族は見捨てなかった事に感謝しています。



そして、あのアリス様が自身のハウンドである大泉さんを大々的に発表した講演会を皮切りに大泉さんの情報がちらほらと出始め、どうやらご両親がアリス様の前任の第二特殊戦闘部隊隊長とその人のハウンド兼第二特殊戦闘部隊副隊長でどちらも既に故人。



異能力は驚異の3つでどれも戦闘特化型。魔力さえあれば無限に増える狼に本体(オリジナル)があればどんなものでも魔力を使って作り出せる錬金術、魔力が含まれるありとあらゆる物や術や能力を無効にし自身の力として吸収する規格外の能力。




なんで主従揃って規格外なんでしょうか。




…………とまぁ、色々ありましたが、それでも月日は流れてお茶会という名の勧誘が行われる当日。



普段着ない外行き用の服を着て、休日は全くしない化粧を軽くして、いざ出陣!………………そう心の中で言ってみたものの私はしばらく迎えが来るまで待ちます。



招待状に同封されていた出席確認のカードに参加するという旨を書いたらそのカードが鳥になって飛んでいき、次の日にまた鳥になったカードが帰って来て、日時と待ち合わせ場所と『行けばわかるとってもわかりやすい目印』という一文とホワイトブリムを付けた垂れ耳の犬?の絵だけ書いてありました。



……………前の2つはわかりますが、後の2つがわかりません。何かの暗号でしょうか?



待ち合わせ場所は高級雑貨店やレストランが立ち並ぶセレブやマダム達が足繁く通いそうな区域の入り口です。



ちなみに『行けばわかるとってもわかりやすい目印』はすぐにわかりました。入り口の脇の方にすんごく目立つ大泉さんがいましたから。



まず、服装が白と黒を基調としていて腰辺りに青薔薇の刺繍が施されたクラシカルタイプのメイド服でホワイトブリムを頭に付けています。首にはメイド服には似合わない荊の柄で留め具が竜の頭になっている首輪をしていました。



そして極めつきは大泉さんを取り囲む狼達。



なんか身体の両脇にマシンガン装備していたり全身が刃になっていたりとめちゃくちゃ凶悪な見た目になっています。



特に大泉さんの後ろにいる馬鹿でかいやつが1番やばいです。体高が10メートルもあり、首元からは赤黒い炎と青白い炎が立髪の様に燃え盛り、黒塗りの禍々しい鎧の様な外皮には全体に呪いの様な赤い光線が走っていて、それに内包されている膨大な魔力の影響か周りの景色が歪んでいます。



めちゃくちゃ行きたくねぇ………



私は心の中でそう愚痴りました。



確かに目立ちますが、あんな危険度MAXな所にはどんな大金を積まれても行きたくありませんよ。



それになんですかあの独占欲の塊みたいな格好は?あのメイド服って確かレイブンハルト家で実際に使用されているメイド服ですし、あの首輪に至っては『これは私のもんだ。手出したらただじゃ置かねぇぞゴラァ』って意味のやつですし。



そんなわかる人にはわかる独占欲の塊を大泉さんは知らずに身に付けているのか、それとも知った上で付けているのか、どちらにせよヤベェの付けてるのに変わりありません。



とここであちら側が私に気付きました。



大泉さんがこっちに向かって歩き出すと周りの小さい……といってもライオンくらいのサイズですが……狼はズルリと影の中に消えて一番大きい狼が残って大泉さんの後をついてきました。



いやなんでそっちが残るんですか!?牽制かけるならちっちゃい方で充分でしょ?!




「こんにちはフローレンさん。今日は色々苦労するだろうが、頑張って」



「…………はい、がんばります」




と大泉さんからの応援に私はそう答えました。そうして私は大泉さんの案内でお茶会という名の面接に向かうのでした。




「…………大泉さん。その服と首輪って」



「これはお嬢が自分の実家から要らなくなった物を譲って貰ったって言っていた。首輪はこれを付けていればとりあえず大丈夫だと」



「首輪はわかるけど、メイド服の意味は?」



「100%お嬢の趣味だ。………………だんだんこの手の服が増えてきてるんだ。俺はジャージがいいのに」



「……例えばどんな?」



「際どいスリットが入ったチャイナ服」



「………………あぁ」




遠い目をして話す大泉さんに私は大変そうだなぁと思いました。



そうして大泉さんと会話しながら進んでいき、着いた場所はこの辺りでは珍しいこぢんまりとした古い見た目の建物でした。



大泉さんはでっかい狼を影に仕舞うとポケットから黒いカードを取り出して、建物の入り口の側に付いている機械に当てると小さく電子音が鳴って扉が開いて大泉さんに手招きされました。



手招きされて入るとまず感じたのはコーヒーのいい匂いとスイーツとかでよくある甘い匂いでした。



そうして奥へ行くとそこはどこかレトロな雰囲気を感じさせるカフェになっていました。




「ここはお嬢が企画出して始めた会員制のカフェ。ここなら情報漏洩がし難いからっていう事でここになった」



「情報漏洩は分かるけど、なんでカフェで会員制?」



「それは知らん。あと会員制のカフェは探せば意外とある」



「そうなんだ」



「─────あ、来た来た。おーいふたり共、こっちこっち」




と奥から声が聞こえてきて、そちらを見てみればソファ席でくつろいでいるアリス様がいました。彼女の前のテーブルには色とりどりの美味しそうなケーキが並んでいて、それをコーヒーを飲みながら楽しんでいました。




「…………お嬢。また頼んだのか?夕飯食えなくなるぞ。それにもうしばらくしたら水着の撮影があるから低カロリーなやつにしろとかこの前言ってなかったか?」




大泉さんはテーブルのケーキ群を見て、そう呆れた様子でそう言いました。




「大丈夫大丈夫。戦乙女は体力勝負だからこれくらいすぐに燃やしちゃうよ。ほらリクも食べなよ」



「…………ただ苦いのやつは苦手なんだが」



「問題ないよ。ここのは甘い系が多いからさ」




アリス様はそう言いながら悪戯っ子の様な笑みを浮かべていちごのケーキを大泉さんに差し出しました。



大泉さんはしばらく考える素振りを見せた後、ケーキの乗った皿を受け取って近くの席に座ると黙々と食べ始めました。




「いや待たせてすまないね。さ、座って座って。───では"お茶会"を始めようかマキリア・フローレン」




先程の大泉さんに向けていた笑みとはまた違った笑みを浮かべるアリス様に私の背中には冷や汗が出ました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手が相手だけに無視も出来ず逃げるに逃げられずか(ʘᗩʘ’) 地獄への招待状か片道切符か(٥↼_↼)そう考えるのが妥当な相手だけに恐ろしい(─.─||) 理玖の奴も格好に関しては無頓着だ…
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