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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第4章
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講演会の後の日常〜2

気分が乗るとスラスラと書けますが、気分が乗らないと書く内容に悩んでしまいます。


今回はそんな悩みませんでした。







〜side愛莉珠〜



リクの機嫌を損ねてしまった。



いやまぁ、こうなるだろうなぁ……とは思っていたけど。リク、あまり目立つの好きじゃないし。でもちょっと周りの牽制としてやらなきゃいけなかったんだよね。



元々、あの講演会の講師は僕じゃなくて神崎がやる予定だった。その枠を僕が無理言って代わってもらった。



理由はリクに群がる虫を追い払うため。



リクは気づいていないのかそれとも敢えて無視しているのか知らないけど、毎日魔法が掛けられた時に発生する残滓みたいなものを引っ付けて帰ってくる。しかもその残滓を見るに使われた魔法は主に法律に引っかからない程度の強さの精神支配系や隷属系の魔法。



精神支配系は○○をしたいといった暗示を植え付けるタイプだけど、隷属系はガッツリアウト。いくら学生でもバレたらしょっぴかれるくらいアウト。まぁ、どっちもアウトだけど。



まぁ、リクはその手の魔法というか魔法全般が効かないから意味がないんだけど。掛けるなら前に僕がやった様に時間をかけてゆっくりじっくりやらないと。



リクに危険がないとしても主である僕からすれば、そんなことされてるのはちょっと気分が悪い。例えるなら目の前でムカつく変顔されながら刃物を振り回されている気分である。



ちなみにこれは魔術師としての僕に対しての煽りで魔術師の決まりとして返り討ちで殺されても仕方ない常識的な事だ。これに関してはリクが分からないのは仕方ない。



だからこそ、僕はリクに嫌われようともあの場であの大勢の視線のあるあの場でリクは僕のものだと証明した。



……………その結果が毎日お昼のお弁当が白米と梅干しオンリーになって、一緒のお風呂と同衾を避けられたとしてもっ、やらなきゃいけなかったんだッ!



ま、それはともかく、そろそろリクの方が限界だ。見るからに不機嫌になって来てるし、だんだん纏っている雰囲気もピリピリしてきてるし。



ここは僕が謝っておこう。この件は先に言っていなかった僕が悪かったし。




「───というわけでそろそろ許してよリク。なんでもするからさぁ!!」



「……………」




そんなことで僕はリクよりも先に帰宅して古来より伝わる全身全霊の全力謝罪のポーズのDOGEZAを玄関先でして学校から帰って来たリクを迎えた。



結果……現在進行形で本人からは非常に冷たい視線を頂いております。



なんかもう不機嫌過ぎてリクの影からバチバチガウガウドッカンとやたら不穏な音が漏れ出ている。……………………失敗したか?



失敗したならちょっとマズい。おそらく今まではまだ好感度がプラスになっていたからおかず無しのお弁当と一緒のお風呂と同衾を避けられていただけだったけど、これがマイナスになったら今度こそ家出する。しかも家出先は確実に柳龍宅(魔王城)だからマジギレ魔王がやって来る。



そしたら色々終わる。




「…………………………今日の夕食残さず食べ切ったら許す」




そんなことをDOGEZAをしながら考えていたらリクは溜息を付いてそう言った。



なんか緩くない?とその時の僕は思ったけど、すぐに頷いた。だってそれだけで許されるなら僕としてもいいから。どんなゲテモノでも食べてやろうじゃないか。



───そして夕食刻。



僕にとってゲテモノより酷かった。



まず食卓全体の色合いが茶色一色。他の色なんてない。そして嗅ぎ覚えのある香ばしい匂いと独特なフォルムのそれ。でっかい傘に丸い円柱の茎を持った植物と言えないもの。



キノコだった。あらゆるキノコが調理されてお皿に盛り付けてあった。




「今日の夕食は肉の味がするミートマッシュルムの厚切りステーキに野菜の性質を有したマジカルフレッシュピルツの炒め物、生食ができて川魚の味がするツァオユィーモグの冷製刺身だよ。買ったのはいいけど使い所がなかった物だから残さず食べて」




リクがそう説明してくれたけど、ツッコミどころが多すぎる。まず、なんでそんなマジカルなキノコを見つけて来たんだ。



いや別にそれらは以前食べた事があるから味は知っている。というか双子の姉に無理矢理食わされた。



そもそも僕がキノコが嫌いになったのは昔死ぬほど食べさせられたせいではない。



まだ僕が学生だった頃、同学年だった現ラビュリンス監獄長と現ラビュリンス看守長とあともう1人の後輩で現ユグドラシル医療研究チーム長が結成してできたたマッドサイエンス部が開発した『なんでも覚醒♡キメラ薬』を調味料と間違えて、同級生と一緒に作ったキノコ鍋に入れてしまって爆誕した発情マイコニドに半日ほど追いかけ回されたからである。



というかなんで魔法薬を寮の共用スペースの調味料入れの……それも判別しづらい容器に入れていたんだアイツらは。



ちなみにそのマイコニドの見た目は身長が3メートルあり、胴体と頭がエリンギで両手がホンシメジで足が束のブナピーで四つ足、腰には何故かキクラゲと舞茸を腰蓑みたいに纏って動くたびにヌルヌルのなめ茸を撒き散らして、鳴き声が『oh♡マリッジ♡※ド低音ボイス』だった。



なんで発情してたかわかったって?…………………………………察せ。



しかもそのマイコニド、僕にターゲットを絞ってきやがったから、必死に逃げたさ。



だって人間誰しも婚約者や恋人の意味深なキノコでロストヴァージンするなら兎も角、マジもんのキノコでしたくないだろ?いや、意味深なキノコでも僕はしたくないし僕はされるというかやる側だ。そう、生やしてやる側だ。誰にかって?そりゃあもちろんリクにだ。



動きを止めようと雷魔法ぶち込んだら、更に活性化して俊敏且つ臨戦状態の超スーパーマイコニドになって黄金のなめ茸の膜を纏って宙飛んできたし。



最終的に同じ学院に通っていた兄様と双子の姉の集中砲火でこんがり焼けて倒されて、こんがり焼けたマイコニドは好奇心旺盛なお年頃魔術師の生徒によって余す事なく食された。



ちなみにその覚醒マイコニドを食べた生徒は男子は顔を真っ赤にして股間を押さえて前屈みになって『ち○○がッ……爆発、するッ……!!』と呻いて数日動けなくなり、女子に至っては性的な方の肉食獣にクラスチェンジしてか弱い後輩男子や草食系ホワホワ女子生徒を襲っていた。



…………なんで女子のほうが野獣になったかは突っ込んではいけない。きっと、閉鎖空間で溜まっていたのだろうさ。



ある時、仔兎系男の娘後輩くんが息の荒い生徒会長系お姉様数名に言葉巧みに騙されて防音結界と逃亡防止結界が施された空き教室にドナドナ出荷されて数時間出てこなかったのは悲しい事件だった。



そしてその後輩はそれがきっかけで一時期女性不信になってBLに走って色々あって僕の兄様に惚れて何をとち狂ったのか自分自身に生涯解除不可の性転換の呪いをかけて押し掛けて、その容姿が兄様の好みにドストライクしてそのままゴールインしたのもまたぶっ飛んだ事件だった。



その当時、家族全員が『どうしてそうなった?』とマジで思ったけど、当主のパパが本人達が幸せならそれで良いだろうと結婚を認めた。



そういえば最近、兄様とTS後輩くんの間に第二子が生まれたとか知らせが届いたな。今度お祝いの品とか送らなきゃ。



そうして600年くらいの歴史を持つ由緒正しき魔法学院内はしばらくイカ臭くて生臭くなって一時閉院した。



…………とまぁ、キノコに関しては嫌な思い出しかない。今でもあのマイコニドは悪夢に出てくるし。




「…………食べないのか?食べないなら下げるけど」




と昔のことを思い出していたら前に座っているリクからそう言われた。若干悲しそうな声に聞こえたのは気のせいじゃないだろう。




「いや食べる。食べるから下げないで」




そう言って僕は夕食を下げようとするリクを止める。キノコには罪はないのだ。悪いのはあの学院内をドピンクに染め上げたマイコニドとその原因のマッドサイエンス部だ。



だから僕は食べる。例え食べたら悪夢見るからとかじゃなくて、リクを悲しませたくないから食べるんだ。



そうして僕はまずミートマッシュルムを口に入れた。匂いと食感と舌触りはキノコなのに味は普通の牛肉だった。





***




「……………吐きそうだった」



「お疲れ様。よく食べたね」



「………褒めて」



「はいはい………よく頑張ったね。えらいえらい」




無事にキノコ料理を食べ終えてリクから接近禁止を解除してもらった僕は早速彼女と一緒にお風呂に入った後、そのまま寝室に行き彼女のマシュマロ巨乳にダイブして慰めてもらった。



しっかしまぁ、なんでこんな張りがあるだろうか。こんなにデカいのにブラ要らずで形を保ってるなんて。若さなのかな?いや、それ言ったら僕もまだ若いけど。




「なぁ、お嬢。講演会のアレってなんかの牽制とかだったのか?」




リクのマシュマロおっぱいを堪能していたらリクがそう聞いてきた。




「…………そうだよ。リクにちょっかい掛けようとしていたガキンチョ共がいたからね。……ただ先に言っておいた方が良かったね。ごめん」



「ちゃんとした理由があったならいい」




リクはそう言って僕と体勢をごろんと入れ替えた後、ずるずると自分の顔を僕の胸の位置に移動させるとぐりぐりと顔を押し付けて抱きついてきた。



僕はそんなリクの頭をわしゃわしゃと撫でるとゴロゴロと喉を鳴らして尻尾も風が起きるくらい振って、顔を綻ばせた。



…………確か犬も嬉しくなれば喉鳴らすんだっけ?というか遂に狼からわんこになっちゃったのかな?まぁ、可愛いからいいんだけど。



ただまぁ、何かと溜め込むリクがこうやって自分から甘えてくるって事はそれだけ精神疲労が強いってわけだから、色々対策考えないといけないか。



確かどっかに実家(うち)の庇護下っていう証明代わりのちょっと見た目がゴツい首輪とかあった筈。あとはリクの契約紋に張ってある隠蔽魔法を解いとくか。しっかり教育受けている子なら契約紋見た時点で手を出さなくなるし。



………………さて、これからの事をあれこれ考えるのはここまでにして。



僕は今だに僕の胸に顔を埋めているリクを引き上げて軽くキスをする。そして彼女を押さえ込む様にして体勢をまた入れ替える。




「さてリク。明日は僕も君も2人揃って休みだ。それからしばらくご無沙汰でもある。………………あとはわかるね?」



「…………ん」




リクのパジャマ代わりのジャージを脱がしながら僕がそう聞けばリクは短く返事した。



リクがストレスとか溜まっているなら、それを別の形に発散させればいい。僕も色々溜まっているし。



そうしてリクの服を脱がし終えたら、僕も勢いよく脱いで事を始める。



───今夜はあのマイコニドの悪夢は見なくて済みそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] かなりブッ飛んだ内容だけど何気に愛莉珠の家族構成に触れてるけど(٥↼_↼) 訳ありながらも結婚済みの兄?双子の姉?(ʘᗩʘ’)その内出てくるのか?(٥↼_↼)
[一言] Ohマッシュルーム
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