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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第1章
6/175

狂獣

その威圧感に()はここに来て初めて興味を抱いた。



()はここに来るまでは自分がなんなのかすら朧げだった。そして、自我を得た時に自らの使命があの2足歩行の生き物を滅するということを理解した。



途中、やってきた羽虫を眷属に任せて2足歩行の生き物が多くいる場所へと向かおうとした時、光の柱と共に強い威圧を感じた。



そして、光の柱はまるで吸収される様に発生源へと消えて行き……咆哮が響き渡った。



『ガアアアアアアア!』



ソレはまるで理性を失った獣の様に荒れ狂い、絶えず悍ましい量の魔力を放出していた。



ソレは彼からすれば先程の羽虫と同じサイズで本来なら気にも止めないものだった。



しかし、ソレは先程の羽虫と違い、獣の耳と尾を生やしており、全身を黒い痣の様なドス黒いものに身を包んでいた。



そしてソレは彼が瞬きをした瞬間、彼の目の前に跳躍(・・)していつの間にか手にしていた禍々しい黒い大鎌で頭を真っ二つに切り裂いた。



頭の頂点から身体の中間まで一息で切り裂かれ辺りに真っ黒な血が雨の様に降り注ぐ。



しかし、彼はその程度で死にはしない。2つに切り裂かれた頸は双頭となり、ソレを忌々しく睨みつけた。



ソレは彼の殺気を物ともせず、それどころか笑みを浮かべて舌舐めずりをした。





彼はその狂犬を『敵』と見做した。





***




殺せ。ころせ。コロセ。目の前の化け物を殺せ。



今の理玖の頭の中にはそれしか考えられなかった。



あの長い奴を切り裂いて切り裂いてきりさいてきりさいてキリサイテキリサイテ。



だが切り裂いた分だけ頸が増えた。



なら、減らせばいいと理玖は考えた。



だから切っては喰べて喰べてたべてたべて減らした。



最後は頸が無くなって霧になって消えた。




お腹すいた。




次に理玖が思い浮かんだことは空腹だった。



気づけば周りには美味しそうな匂いがする何かに囲まれていた。



さっきの長い奴よりは量が少ないけど、さっきのよりはマシな気がした。



理玖がそれらに笑みを浮かべて狩りを始めようとしたその時───



「はいはい、ストップ。待てだよリク」



なんだか軽い雰囲気の声が聞こえてきた。その声に何故か理玖は従ってしまった。



「随分とド派手に喰い荒らしたねぇ………。しかも、まだ喰い足りないときた。余程の大食いワンコだ。まぁ、それが僕のハウンドらしいってことだけど」



その声の主はそう言いながら周りの獲物の静止も聞かずに軽い足取りで理玖に近づいてきた。



理玖はそのよくわからないナニカに向かって唸り声を上げて手に持つ鎌で追い払おうとした。………しかし



「……リク──"待て""おすわり"」



その声の主にそう言われたら何故か理玖の身体は動かなくなって力が抜けた。理玖は訳も分からず混乱した。



「あんまり使いたく無いんだけど、今回は仕方ないからね。──ねぇ、リク?お腹空いているでしょ?あんな蛇や周りの戦乙女(ヴァルキリー)なんかよりもずっといい物あげるからじっとしていてね」



その声の主は優しい声で未だ唸り続ける理玖にそう言って理玖の顔に手を添えて止められる。



なんだと理玖が思っていると口に弾力性のある暖かい物を押し付けられた。頭を固定されているのに加えて何故か身体が言うことを聞かない為逃げることも出来ない理玖はそのまま甘くて暖かい美味しい液体を一方的に飲まされた。



それは先程の蛇よりも上質で周りにいる獲物よりもいい匂いがした。



それは不思議と飢えた腹を満たしていき、全身にほのかな暖かさが周った時にはふっと急な睡魔に襲われて意識を手放した。

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