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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第3章
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姫の猟犬は寂しがり屋〜2

理玖は自分の机に突っ伏したまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。



特に気になる物が外に見えるわけではなく、青空に雲が少し掛かっており、ビル群が立ち並ぶいつも通りの光景が広がっている。




「理玖くん、なんか元気ないね。どうしたの?」




そんなぼんやりとしている理玖の顔に詩織が覗き込んでそう聞いてきた。




「…………朝も同じ事言われたけど、そんな風に見えるのか?」



「うん。だって尻尾と耳の艶無いし、表情いつもよりも暗いし」



「…………なるほど」




そう言われた理玖はのっそりと身体を上げた。確かに詩織の言う通りで耳はいつもよりも垂れており、尻尾も萎んで見える。表情は変わっていない様には見えるが昔から交流がある者から見れば暗く見えるだろう。




「それで何があったの?」



「………強いて言えばお嬢が1週間くらい前からいなくなってる事ぐらい」



「絶対それでしょ?もしかしてずっと1人?」



「いや、澪姉さん……母さんの知り合いのところでお世話になってる」



「そっか……もし1人だったらうちに泊まりに来る?って言おうと思ったけど」



「契約したハウンドも戦乙女(ヴァルキリー)と同じでユグドラシルの定住が義務付けられてるんだ。余程の事がないと無理だ。俺の両親は俺が生まれたから外で生活する許可貰ったみたいだし」



「色々と面倒なんだね」



「そう。色々と面倒なんだよ」




そう言って理玖はまたぼんやりし始めた。




「…………理玖くん、そのお嬢って呼んでる人のこと好きなんだね」




理玖がぼんやりし始めると詩織は理玖の席の前の方へと移動し彼女と視線を合わせる様に屈んでからそう言った。すると理玖は分かりやすく詩織の言葉にサッと視線を逸らした。




「お〜お〜??どうしたのさ理玖君や。そんな分かりやすく目を逸らして。しかも段々顔も赤くなってきてるじゃない」




そこに先程まで静かにしていた美桜が理玖にそう言いながらニマニマとした笑みで彼女の肩に手を置く。




「…………別にそんなんじゃない」



「なに恋愛系の物語でお約束なセリフ言ってるのよ。やっぱり好きなんだお嬢っていう人」



「よくわからない。…………誰かを好きになるとかそういうのなった事ないから」



「それって"like"か"Love"かって事?」



「…………そういうこと」




そうして理玖は机の上にまた突っ伏した。



詩織と美桜は顔を見合わせ、そして視線で会話した後、現在今の理玖の悩みに的確な答えが出せるであろう詩織が切り出した。




「えーと……別にそんな難しいことを考えたりしなくてもいいんじゃないかな?その人と一緒にいたいっていう気持ちだけでもいいと思うよ」



「……それだけでいいのか?」



「そう。あんまりあれこれ考えちゃうとかえって息がしづらくなっちゃうから。あ、あときちんと自分の気持ちを行動にしてみるとかいいと思うよ」



「なるほど………わかった。ありがとう詩織」




そうして詩織のアドバイスが終わった。………ちなみにこの時美桜は今度の休日に荒れるであろう親友にスイーツの食べ放題を奢ろうと決めた。





***





今日は理玖が夕食当番な為、帰りに学校近くのスーパーに寄って食材を買っていた。先日は肉だった為、今日は魚にし刺身が安かったので海鮮丼にする予定である。尚、神崎から夜奈が帰って来ているという連絡もあった為、多めに買う予定である。



そうしていつもの影移動で夜奈と神崎が住む和風建築の平屋建てへと帰り、一旦買ってきた物を冷蔵庫に入れようと台所に繋がるリビングに入るとそこには……………ペンギンがいた。




「お帰りなさい理玖。久しぶりですね」




いや、ペンギンではなくペンギンの着ぐるみを着た夜奈がいた。



全体的に丸みがかったフォルムで首元の黄色みがかった色合いとオレンジぽい色合いの嘴からコウテイペンギンだとわかるが、その大きさが大人サイズで開いた口から夜奈の顔が覗いているのはかなりシュールである。



更に言えば、さっきまで晩酌していたのか机にはビールジョッキと山盛りのナッツ類があって、今の夜奈の格好との格差が凄いことになっている。




「………………夜奈姉。何その格好」



「私が開発した寝巻きです。着用者にとって最も快適な温度を感知して内部の温度を調整でき、冬は暖かく夏は涼しくなります。内部に仕込まれた魔法陣により軽度の怪我の治癒、自動洗浄、心身のリフレッシュなどを常時行ってくれます。防水防火防塵に優れ、更にこの口を閉じれば60分間の潜水にマイナス40度までの気候に耐える事が可能です。


物を掴む際には中の手と魔術リンクをして念力で掴んだり触ったりします。ちなみにオプションで目の部分を暗視とサーモグラフィー機能を搭載できます」



「パジャマだよねそれ?」



「そうですよ。ちなみに名前はペンペン快適パジャマ……略してPKパジャマです。理玖の分もありますよ。着なさい」




妙にキラキラとした目で夜奈はPKパジャマ(コウテイペンギンの雛バージョン)を手にしてそう言った。



そんな目をして言われれば着るしかないと理玖は考えた。





…………その後、帰宅した直後に理玖と夜奈の親子ペンギンモードを見た神崎は笑い過ぎて腹がよじれてしまったのは別のお話。



夜奈のPKパジャマの姿の雰囲気は『魔法使いの夜 ペンギン』と検索してもらえばイメージが掴みやすいかと。


というのも私の中のイメージがあのまんまなので

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか前回とは打って変わってほのぼの展開だな(ʘᗩʘ’) ご主人様を待つ忠犬・理久と今回はボケキャラの夜奈だけど(٥↼_↼) 一つ言っとくがペンギンは基本、横になって寝ないぞ(?・・) 寝…
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