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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第3章
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戦闘用スーツ〜素材集め2

ユグドラシルの倉庫は基本的に個人所有の魔導具や予備の武装、その他貴重品などを保管するのに使われる。



上から順にランクが低い者が使っており、最下層辺りともなれば歴代の特級戦乙女の秘蔵区域になっている。



そして理玖達が向かっている場所はまさにその最下層のひと区画。今は亡き特級戦乙女『千剣の貴公子』大泉 翔太とそのハウンドの『百群の狂犬』華重 幸子が所有していた場所である。




「最近、何人か抜けたから場所が入り余っとるんよ。上のもんを下げても広過ぎるって言われるしなぁ」



「そんなのヌシの能力で変幻自在じゃろ」



「ウチの能力の特性知っとるやろ。頭痛くなるんよあれ」



「………そういえば金持姉さんの能力って?」



「ん?ありゃ?神崎さんから聞いてなかったんか?ウチの能力は『等価交換』と『領域掌握』、そして『徴収地獄』や」




全員が地下へ降りる為のエレベーターに乗っている最中、理玖は金持にそんな質問をし金持が説明を始めた。



『等価交換』は魔力に応じて物資を生み出す能力でこれは魔力が含まれていないものに限定される。魔力が含まれていなければ食糧や武器などなんでも生み出す事が可能である。



『領域掌握』は自身がマークした区域内の部屋の構造を組み替えたりできる能力である。マークはそれぞれ種類があり、8つの同じマークで1つの『部屋』を形成する。そしてこの方法で創った『部屋』は能力者である金持か金持が許可した人物以外は入る事も内部の物を動かすこともできない。ユグドラシルの地下倉庫はこの金持の能力で形成されているのだ。



そして最後に金持の覚醒ビーストとしての異能力『徴収地獄』は………




「『徴収地獄』は簡単に言うとタチの悪い借金取りや。ウチが価値を定めたモンやブツを傷つけたり危害を加えたモンはその対価の倍の価値まで根こそぎ奪い取る。……根こそぎなぁ。まずはここの倉庫から。次にソイツが持ってるもん。最後はソイツ自身の身体や。内蔵、皮膚、筋肉、体液、骨なんか諸々。


防ぐ手段なんざあらへん。泣き言も狂ってもどこに行こうとも全部奪い取ってぜぇーんぶウチとタマとポチが喰べちゃうで」




金持はそう言うとニィ……と口角を吊り上げて笑った。ポメラニアン人魂も金持と同じ様な表情を取っている。




「………喰べる?」



「原理は理玖坊と同じじゃよ。喰べた分だけ力が上がるというわけじゃ。違う点は金持が指定した物か人物にしか適用されず、また対象の能力は奪えんという事じゃ」



「ん?理玖ちゃんの能力はなんでも喰べて奪うやつなんか?」



「そうです。ただし、魔力を有するものに限りますが」



「それでも良いやないか。ウチなんて戦闘向きやないからずっとここに居座っているしかないんや。主はんも完全に裏方やしな…………さて、あとは降りるだけやで。とりあえずローグアリナをこれで縛っとき」




そう言って金持は宇佐美にロープの束を手渡した。宇佐美はしばらくそのロープを黙って見ていたが、やがて何か納得したのか彼女はレイチェルをぐるぐる巻きにしていった。




「……………なぁ。なんでウチが簀巻きにされなきゃあかんのや?」



「それだけエラいもんがあるわけや。お前さん、貴重な素材やらなんやらに目がないやろ?暴走を未然に防ぐためや。………さて、そろそろや」




金持がそう言って少し経つとエレベーターは全面ガラス張りで地下倉庫全体がはっきり見える通路に到達した。



通路から見えるそれは見る者が見ればまさに宝物庫の様であった。



数十ある2メートル四方の木箱には夥しい量の魔石が入っており、他にも夥しい量の魔獣の骨に毛皮に爪に牙、保護魔法がかけられて瓶詰めにされている血や内臓類、多種多様な鉱物に植物関係、魔導具や魔術書など所狭しと保管されていた。




「これは…………想像以上じゃな」



「これ……全部で総額いくらなんでしょうか?」



「おそらく、これだけでユグドラシルを2〜3年賄えるくらいじゃな」



「…………………マジですか」




縁流の質問に神崎はそう引き攣った顔でそう答えた。



一方でレイチェルはというと………




「ホ、ホアアアアアッ!?!?あ、アレはッ!1メートルだけでも 豪邸建つレベルのお値段する暴虐牛鬼(ベヒーモス)の皮かぁ?!それにあっちは海流癒龍(リヴァイアサン)の全身骨格ッ!?他にもオリハルコンにミスリルに魔動樹(トレント)の材木が山ほどォォ!!」



「レイちゃん落ち着いて!!」



「なんですかこの馬鹿力は?!」



「離せ芽依ッ!!日暮ッ!!あそこに!あそこにお宝ガアルンジャアアアアアアアッ!!!!」




簀巻き状態であってもそのお宝に飛びつこうとしていた。それを宇佐美と日暮が必死に止めているが若干引き負けている。




「な?縄用意して正解やったろ?そんじゃ理玖ちゃんはこっちや。神崎さんはローグアリナとスーツの素材の事詰めといてなぁ」



「おぉ、わかった」




そうして彼女達は二手に別れた。





理玖と金持がついた場所は他の場所と違って色々と古い物が積み上がっている場所だった。よく見ると棚には埃の被った賞状やらなんやらあった。




「理玖ちゃんに直接渡すもんがあるんよ。幸子ちゃんと翔太くんからの頼みでな?あの2人、もし自分達の身に何かあったらって言ってここのもんとは別にウチに預けておったんよ。はいこれ」




そうして金持が手渡してきたのは少し大きめで表面に剣が刻印された腕輪と狼が刻印されたラウンド型のイヤーカフだった。




「これはあの2人が理玖ちゃんにって。イヤーカフは幸子ちゃんからで腕輪は翔太くんから。…………戦乙女ちゅうのはいつ何があってもおかしくない役職やからせめて形のある遺品でもというわけや」



「……………ありがとうございます金持姉さん」



「お礼はええよ。それを付けてくれれば、きっと2人も喜ぶ筈や。そんで次は……」



「まだあるんですか」




金持はそうしてポメラニアン人魂と手分けしてそこそこ厚みがあるファイルをいくつか持ってきて、理玖の目の前に積み重ねていく。



そのファイルの中身を見てみるとそれはアルバムだとわかった。それも写真が若干色褪せてしまったいる事からある程度古い物だとわかる。




「それ2人に内緒で撮ったもんや。理玖ちゃん、戦乙女とハウンドとしての2人は知らんやろ?話に聞いてもわからん事あるからなぁ。つまりこれはウチからや」



「は、はぁ……?」



「あとは錬金術関連の魔導書と各種武器百科事典、これ覚えれば理玖ちゃん手数増える筈や。翔太くんは実物なけりゃ出来んかったが、話聞くには理玖ちゃんは実物無くてもできるみたいやからな」




そうして金持はどんどん理玖に分厚い本を積み上げていく。持ち切れない分は影の中に入れておく事にした。




その後、ある程度素材を調達できた神崎達と合流し、レイチェルはそのまま素材片手に自身の工房へと走り去っていった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 魔窟の魔窟と思ってたけどやっぱり世に出たら経済が傾きそうな代物ばかりか(ʘᗩʘ’) ゴ○ラの骨も有りそうだな(゜o゜;
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