秘め事の露見〜2
「……………はい、もしもし?」
『あ、もしもしリク?学校は楽しんでるかい?』
「まぁ、ぼちぼち。それよりそんなことで連絡して来たわけじゃないんだろ?」
『そうだね。君に掛けておいた術式が破られたからね。ちょっとその子に代わってくれない?』
「いいけど………言っとくが、俺がやっていいって許可したからな。咎めんのは無しだ」
『わかってるわかってるって。あの術式はそういう許可出さないと破れないやつだからさ。………なになに?僕がその子に酷いことするとでも?』
「この前秘密探ったら両手足の指全部関節と逆側に折った上で丸裸で鞭打ち千回やって家の前に晒しもんにするとか言ってたのはどこの誰だっけ?」
『あれはもしもやったらっていう具体例だよ。本当にするわけないだろ?さ、早く代わってよ』
「はいはい………了解」
ある程度会話が終わり改めてその件の女子生徒の方を見ると顔が可哀想なくらい真っ青になって固まっていた。
「あー………その………巻き込んですまない。お嬢が君と話したいそうだ」
そうして理玖がスマホを手渡すと彼女はぎこちない動きで受け取り通話にでた。
「………も、もしもし」
『───君の名前と家名を言いなさい』
「は、はいっ!!わ、私はマキリア・フローレンで、ですっ!え、えっと、その」
『はいはい落ち着いて。今回は単なる事故というわけだから別に君をどうこうするつもりはないからさ。………なるほど、ニコラスヒリの直系の子だったんだ。道理で条件付きとはいえあっさり解けた筈だよ。ところで僕のこと、その場にいる誰かに言ったりしてないかい?』
「い、いえ!言っていません!」
『なら良し。まだリクはデビュー前だしあまり目立ちたくないんだよ。だからこの事は内密にね。もし喋ったら…………わかっているよね?」
「はいッッ!!わかっていますッ!!絶対に漏らしませんッ!!」
『いい返事だ。君は長生きするね。………あ、それと僕は今回の件で君に興味が湧いたんだ。良かったら今度お茶しようか』
「はい!もちろん喜んd───ぇ?」
愛莉珠にそう言われたマキリアはまた固まった。それも当然の事だろう。自分が暴いた隠蔽の先にあったのは自分より遥か目の上の御三家の契約紋。それを暴いた瞬間、そのご本人から電話がかかり、しかも秘密を探ったらなんか酷い目に合わされると前にも言っていたそうだった。
そしてなんとか無事に話が終わりそうな時にそんな提案もされれば思考が止まりもする。
『───い。おーい?どうしたんだい?急に黙り込んで』
「───え、あ、す、すみません………今何と?」
『今度一緒にお茶しないかってこと。まぁ、これはお茶会というよりスカウトってな感じかな?こっちは今人員不足でさ。少しでも優秀な子をお迎えしておきたいんだよ。僕が施した術式を破れるくらいなら尚更ね』
「………わ、わかりました。お受けします」
『ヨシッ!予定日が決まったらリクを通して伝えるからね。あ、一応希望とかある?』
「………えっと、出来れば土日にお願いします」
『わかった。ありがとねフローレン。それじゃ、リクに代わって』
「あ、はい。わかりました……」
そうして2人の会話が終わり、電話の相手が変わる。
「終わったのか?なんか途中で固まったりしてたけど」
『お茶に誘っただけだよ。それよりリクぅ〜もうちょっとお話しよ?』
「駄目だ。今は学校だから帰ってからだ」
『えぇーー………わかったよ。じゃあ、また帰ってからね』
「わかった」
そうして愛莉珠からの電話は切れた後、再度フローレンの方へと向き直り頭を下げた。
「色々とすまなかった。その………なんか大事になってしまって」
「い、いえ!私が自分からやったことだから謝らなくても………ところであの方、なんか前から聞いていたイメージと全然違ったんだけど………」
とフローレンはそう戸惑いながら理玖に聞いた。
「まぁ、今までが猫被っていたんだろ。お嬢の本質は底抜けに明るい変態だ」
「へ、変態って………」
「毎朝俺の腹か胸に顔突っ込んで寝てるし、風呂の時だってやらしい手つきで俺を触ってくる。あとは自分の欲望に素直ってことで──」
理玖がそこまで言ったその時、また連絡用のスマホから着信音が鳴り響いた。
「…………なんだお嬢?伝え忘れた事でもあるのか?」
『リク、今日帰ったらペナルティで裸エプロンだからね!拒否権無し!そんじゃね!』
「はぁ!?おいマジで言ってんのか!?あんなの絶対着な──あ、切れた」
愛莉珠は一方的に理玖にそう伝えるとすぐさま通話を切った。伝えた時の声がやたら嬉しそうだったのは気のせいではないだろう。
理玖はそのまま無言でスマホを自身の影の中に叩き込んで入れた。
………ちなみにこの出来事のせいで大体の女子生徒が次の授業に遅れたのはまた別のお話である。




