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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第3章
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変化した日常

理玖が通う高校には普通科と特別科というものがある。



普通科というのは読んで字の如くの意味であり、基本的に魔力を持たない又はビーストではない人………普人がここに在籍する。



一方で特別科はその逆で魔術師の家系やビーストが在籍している。



何故この様に分けているかというと単純に両者の能力の差が大きいからである。



魔術師の子供は言うまでもなく、ビーストもその元になっている動物に左右されるが、基本的に普人よりかは力など上である。



3つを混ぜてしまうとどうしても差が出来てしまい、勉学への意欲が無くなってしまう可能性がある。そういった面から科を分けているのだ。



そしてハウンドとなった理玖は以前ならば普通科であったが、今からは特別科に通うことになったのである。



現在、理玖は校門の前で詩織達と待ち合わせ中である。服装は以前から来ていた学校指定の男子生徒用の制服である。



………………制服に関しては昨日、愛莉珠と揉めた。



理玖はあと1年しか着ないからそのままでいいと言い、愛莉珠はやっぱり女の子だからセーラー服が見たいしそのまま夜に(・・)着せたいと言って譲らなかった。



もっとも、愛莉珠の下心満載な邪な気配は長年バディをしている神崎すらいつ習得したのかわからない謎超センサーで感知して地上40階越えの愛莉珠と理玖が居る部屋に外から生身でダイブして来て状況は更に悪化したが………



とそんな昨日の出来事を思い出していると遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。




「おーい!理玖くーん!久しぶりー!」



「おう、詩織か。久しぶr──うおっと」




理玖がその声の主である詩織の方を向こうとすると詩織が先にやって来て後ろから抱きついてきた。



大人の女性にあと少しというくらいの少女特有の柔らかさと優しい花の様な香りがする。普通の思春期の男子ならばノックアウトものだが、理玖はそういった感覚が元から欠けている上に四六時中愛莉珠から猛アタックを受けている為、慣れてしまっている。




「あれま、朝からいちゃつきやがって。ここ校門の前だぜ?」



「別にいいじゃない。大体ひと月振りなんだから。それより理玖君、また随分変わったわね……。なんか入れ墨?みたいなの出来てるし、色とか毛量とか凄いことに」




とそこに遅れる様にやって来たのが隆二と美桜だった。4人はあの面会の後、定期的に連絡を取り合っていたがこうして顔を合わせるのはほぼ1か月振りである。




「これはお嬢……俺のバディの魔力が染まり切ってハウンドとしての契約が完了した証拠だそうだ。今でも鏡を見ると違和感ありまくりだがな。…………………というかそろそろ離してくれないか詩織?」




理玖は自身の身の変化を簡単に説明した後、未だ抱きついたまま離れようとしない詩織にそう声をかけた。



いくら仲が良く今では(・・・・)同性であろうとここは人の行き交いが激しい朝の校門前。加えて詩織は学園の双女神の片割れと言われている程、人気がある。人の目が集まるものだ。



詩織は理玖の呼び掛けにも反応せず、ただ先程後ろから抱きついた体勢のまま微動だにせず沈黙を貫いている。




「あー……詩織?そろそろ離れたらどう?理玖君困っているしここ目立つしさ」



「─────────する」



「………?詩織、今なんて」



「知らない女の匂いがするべったりヘドロみたいにくっついている匂いが2つする緑の匂いとお酒の匂いと陽だまりみたいな匂いは知ってるけど甘ったるい匂いと花火みたいな匂いは知らない特に甘ったるい匂いは隅から隅まで入念に塗り込んだみたいにこびり付いているというか今までずっと10年間擦り込み続けた私の匂いすら消えてるんだけどこれどうゆうことおかしい許せない許せない許せない許せない許せない……」




そう呟く詩織の声は普段よりも2つほどトーンが低く、何か得体の知れないオーラを含んでいた。隆二と美桜は思わず後退りし、すぐ側の理玖は今までに感じた事のない気配に変な汗が出てきていた。



………尚3人からは見えていないが、詩織の顔からは表情は消えて瞳は闇属性の魔力でも有しているのかと思えるほど暗黒に染まっており、まるでカオ○シである。




「ねぇ理玖くんこれどういう事?なんで知らない女の匂いべったり引っ付いているの?ねぇ?ねぇ?」



「…………………多分その知らない匂いっていうのは俺のバディだと思う。一緒に暮らしてるからさ」



「……暮らしてるってどういう事?ねぇ?もしかして一緒にご飯食べたりのんびりしたりお風呂入ったり寝たりしてるの?」



「……………………………………………はい」




普段にない謎の威圧感を放つ詩織の質問に素直に答えていく理玖。ただ、理玖は何故かは知らないがとても悪いことをしている様な気がしてならなかった。




「ふーーーーーーーーん……………そっかぁ」




詩織はそれだけ言うとまた喋り出す前の状態に戻った。今度はやたら身体を押し付けながらだが。理玖が前にいる2人に視線で助けを求めても2人は苦笑いを浮かべるだけで近づこうともしなかった。



こうして多少の変化はあるが平和な日常が戻ってきたのであった。




***



一方、その頃ユグドラシルの本部では………




「は・な・せッ!!今僕の愛犬が泥棒猫に捕まって滅茶苦茶にされている気がするんだよ!!そんな事絶対許すもんかぁ!!」



「なりません。理玖は現在学校です。貴女が向かっては混乱を招きます。ここは私が向かいます」



「ヌシが向かっても大混乱になるじゃろがッ!!大人しく待ても出来んのか馬鹿者がッ!!」




何かを察知してそこに向かおうする愛莉珠と夜奈を神崎が能力を全力解放して行手を止めているのであった。

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