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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第3章
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変化する日常

理玖の誘拐&暴走騒動の後始末も終えてから1週間が経過した。



あの後、主犯格であるグラシウスを含む取り巻き6人は全員行方不明という処理がされ、代わりに彼女達の家系は財産没収からの取り潰しという処罰を言い渡された。



当然ながらその処罰は厳し過ぎるという声があったが、あの『天災』に匹敵する災害を引き起こしかねなかった状況を作った事とあの(・・)御三家の1つのレイブンハルト家の御令嬢である愛莉珠に喧嘩吹っ掛けた挙句そのハウンドを危険な目に合わせたという事で夜奈が物理的に黙らせた。



そうしていつも通りの穏やかな日々が戻って来たのかというと実はそうでもない。




「失せろオオオオオオオオッ!!!!」




第二特殊戦闘部隊、略して特戦隊の訓練所にはそんな品のない怒声と共に青白い豪雷が降り注いでいる。



周りの安全など一切考慮していない無差別破壊を繰り返しているのは第二特殊戦闘部隊隊長の礼華 愛莉珠であった。



普段の澄まし顔とは打って変わって般若の如く人相で彼女が広範囲魔術を繰り出す対象はテルゼウス・ユグドラシル局長の柳龍 夜奈である。



こちらは普段とほぼ変わらない表情で夜烏色の髪を靡かせながらあっちへこっちへ全力疾走している。



2人が何故こんな事をしているのかというとこの1週間での出来事が関係している。



理玖が完全に愛莉珠の魔力に染まり切り、更には本契約まで完了した事で愛莉珠は今まで本契約をするまでやらないと誓っていた事を実行しようとした。



それは理玖を食べること (性的に)



魔力に染まり切ってしまえばもうほぼ堕ちたも同然。あとは向こう側(理玖)が自覚すれば完璧。そして理玖は押しに弱いということで一発ヤればいい。という事でいざ実行に移そうとすると毎回邪魔が入るのであった。



………そう夜奈である。



理玖との血縁関係を公表した夜奈は今まで抑えていた姪っ子を愛でる欲求を一切自重せずに解放して構い倒そうとしている。そしてそんな姪っ子を穢そうとする輩は排除……とまではいかないが全力を持って阻止している。



具体的な行動を言うと愛莉珠がかなりグレーな手法で言葉巧みに理玖をその気にさせる様に誘導していると夜奈が窓を突き破って突入してくるというもの。



これが1週間も続けば短気な愛莉珠のストレスもMAXとなる。そして本日、遂に爆発したのであった。




「毎度毎度邪魔ばっかり!あとちょっと堕ちる所だってのにぃッ!!なんでさ?!僕はただリクが身も心も僕無しじゃ生きていけない様にしたいだけなのにさ!?」



「それを阻止するのが私の役目です」



「ア゛ア゛ッ!?」




そんな2人の会話が訓練所でされている時、他の特戦隊の隊員と理玖はどこにいるかというと食堂にいた。



食堂はほぼ毎日同じ時間帯で開いており、食事を作る者は専属の者ではなくその隊の隊員達で当番制である。理由は遠征時に簡単な料理くらい出来なくてはやっていけないからである。ちなみに愛莉珠はこの当番制には入っていない。



そしてそんな賑やかな食堂のカウンター席に近い場所で理玖は厨房に立ってひたすら料理を作っていた。



伸びた髪を後ろで団子にしてその上から手拭いを被り、服装も動きやすいワイシャツとズボンのみである。………ただ、そのワイシャツの後ろにはデカデカとやたら達筆で書かれた『満々食堂』の文字がプリントされていた。



理玖は両手で中華鍋を軽々と扱い、途中で飛んでくる野菜などを鍋と包丁を瞬時に持ち替えて切り刻み、一欠片余す事なく鍋でキャッチ。そして鍋を大きく振るえば具材は宙を舞い、溢す事なく皿に盛り付けていた。




「はい出来た。向こうの人に運んで」




理玖はそう言って魔狼の頭に料理が載ったお盆を置いて指示した。魔狼は小さく頷くとスイスイと運んでいった。




「いつ見ても理玖坊は多彩じゃのぉ」




そんな理玖の様子を見た神崎はかき揚げ蕎麦を啜りながらそう言った。




「毎日同じことやっていたら覚えるものじゃない?」



「いやそれ覚えるんのも実行すんのも容易いことじゃないで理玖ちゃん。普通に見せ物商売できるレベルや」




理玖がそう言いながらノールックで飛んできたブロック肉を一瞬で挽肉にする光景をレイチェルは呆れながらそう言った。




「確かにのぉ。じゃが、以前の理玖坊ならば一度視認しなければ出来んかったぞ?つまり能力が向上したという事じゃ」



「もうそれ些細なやつ………。あ、そういえば理玖ちゃんってもうすぐ復学するやってな」




とレイチェルが今思い出したかの様に理玖にそう言った。



理玖が愛莉珠のハウンドになってからは万が一という事態も考えて、理玖は休学していた。勉強の方は料理以外(・・)ならば完璧超人の愛莉珠のワンツーマン指導で問題ない。




「というか理玖ちゃんは真面目やなぁ。正式なハウンドになったちゅう事は就職先確定なわけやし、そっから落ちるなんてまずあり得へんからな」



「友人とかの付き合いとかありますし、学校は勉強するだけの場所というわけではないじゃないですか。それにあと1年で卒業しますし、ここまで来たら最後まで通い続けるのがいいじゃないですか」



「まぁ、それもそうやけど。……礼華っちはなんて?」



「ここから通うという事で了承は得ましたよ……………はいできたよ。夜奈姉」



「ありがとうございます理玖」




とレイチェルとの話の途中で理玖が山盛り牛丼をカウンター席に置いた。その席を見るといつの間にか夜奈が座っており、夜奈は理玖から牛丼を受け取ると口一杯に頬張りながら食べ始めた。




「……………マジで神出鬼没やな。というか局長さんってこんなやったけ?」



「此奴は元からこうじゃぞ?ズボラでマイペースで趣味が爆弾作りで性欲が猿並m──」



「……今晩は九狐の女体盛りですね。楽しみです」



「………………………」




夜奈の小さな呟きに青い顔で固まる神崎。その隣ではカツ丼を食べていたレイチェルがむせ込んでいた。




「夜奈姉。あんまり澪姉さんを虐めないでやりなよ。澪姉さん、あんまり体力ないんだからさ。明日の仕事に支障きたすよ?」



「そうですね。では休みの日にやりましょうか」



「………………なぁ?わっちがキチンと休める日は来るんかの?」



「それは澪姉さんが夜奈姉に余計なことを言わなかったら来るんじゃない?」




そんな風に会話をしていた後、夜奈を索敵した愛莉珠が魔術を放ちながら食堂にやって来たせいで食堂が崩壊したのは別の話である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦乙女は性欲猿並じゃなきゃいけない決まりでもあるんじゃなかろうか [気になる点] 友人とかの付き合いとかありますし、学校は勉強だけじゃないですか。 これだと学校は勉強だけって事になりませ…
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