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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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魔狼の狩り《ワイルドハント》〜2



※後半グロい表現が出てきますのでご注意を






魔狼の発生源……つまり理玖がいる場所は地獄だった。



地面が見えない程魔狼がひしめき合い、地面に収まらないものは空を飛び交い、お互いの身体が傷つくことも厭わず暴れ回っていた。


雷や炎を吹くもの、氷点下の雹や融鉄を降らせるもの、石化や強酸や錆化の煙を吐くものと様々な個体がいる。



更には理玖の異能である『空想錬金』も使えるのか剣や斧も飛び交っている。




「これは僕1人で来て正解だったねぇ……魔術無しでこれ突破するの無理でしょ」




そう呟く愛莉珠は暴走していない魔狼の背に隠れながら理玖の元へと向かっていた。普段ならば理玖ほどではないがバディである愛莉珠の言う事を聞く魔狼達だが、暴走状態である今ではその区別がついておらず、襲われる可能性があった。



降り注ぐ攻撃を避け、迫り来る魔狼達を吹き飛ばし蹴り飛ばしていきながら向かっていく愛莉珠達。そして、向かう先に見えてきたのは一際魔狼達が集まっているがそこだけぽっかりと円形状に空いている所だった。



ある程度近づけばその中心部には地面に書かれた紫色の古めかしい魔法陣の上で鎖と枷で繋がれた状態で倒れ込んでいる理玖が見えてきた。




「──リクッ!!」




愛莉珠は悲鳴に近い叫び声で理玖に駆け寄り、魔法陣を踏み消して枷と鎖を引き千切った。



…………魔獣を捕獲する用の枷と鎖なのでそう簡単には引き千切れない筈であるが、そこは置いておく。




「リク!大丈夫!?しっかりして!」



「……………………………ぅ………ぉ、じょ……?」



「──あぁ……よかった。………リクよかったぁ……」




弱々しくではあるが反応を示した理玖を愛莉珠は力一杯抱きしめた。




「………………くるしぃ」



「ん?あ、ごめん。大丈夫?」



「だいじょうぶ、じゃ……ない。からだ、うごかない……。だるい」



「それは魔力枯渇だね。ずっと吸い取られてたみたいだし……。ほらリク、口開けて」



「……?わかっ──んっ」




頭がまだ働かない理玖に愛莉珠は優しくキスをして魔力を与える。すると理玖の身体に変化が起きた。



まず髪の白色の割合が増え、茶髪の白メッシュから茶髪と銀色のグラデーションへと変化した。次に平均的なサイズだった2本の尾は3本になって大きさも3倍になった。そして左目の下には稲妻のマークが首には雪の結晶でできた首輪に見える黒い紋章が現れた。




「…………あれま。契約の準備が完了しちゃったみたいだね。これで君は僕のものだ」



「おじょうの、もの……?」



「そうさ。けど、僕のものといっても今までと変わらないよ。そう……いつも通りさ。………今日は色々大変だったね。もう安心していいよ。よく頑張った」



「……………ぅ……ん」




そうして理玖はまた眠りについた。理玖()の安全が確保できた事でそれまで広範囲で散っていた魔狼達は徐々に正気を取り戻して理玖の影の中へと戻っていった。



これで騒動は収束に向かうかというとそうではない。愛莉珠は理玖を抱きかかえると先程まで魔狼達が群がっていた場所へと向かった。




そこには奇妙な物体が鎮座していた。




それは直径が1メートルはあるであろう肉団子でぶよぶよと脈動していた。その"材料"でまともに(・・・・)見える範囲(・・・・・)ではヘドロを纏った黒光りする蛇の体表に様々な動物の部品、人間の手足などの部品などが見え隠れしている。



そんな耐性のない者にとっては視認するだけで吐いてしまう程の醜悪な肉団子の中で唯一顔が判別できるものに向かって愛莉珠は声をかけた。




「やぁ、グラウシス(・・・・・)。調子はどうだい?まぁ……そんなことになっていては調子が良いも悪いも関係ないか」



「…………こ、ろし……て……タスけ」



「助けるわけないじゃないか。───お前は僕の愛する子犬に手を出した挙句、自分勝手な理由でこの子を苦しめた。それに………お前はもう人間じゃないじゃん」




そう吐き捨てる愛莉珠の顔は先程理玖に向けていた優しい笑みではなく、感情の宿らない深紅の瞳にストンと感情の抜け落ちた氷の様に冷たい無表情だった。




「大方、今のお前たち(・・・・)は生き餌だろうね。今まで理玖とその子分の魔狼達が喰べた後の食べカスを無理矢理繋げて死ぬまで永遠に魔力だけを生み出す肉団子にしたという感じかな?しかもボイドの能力を付与されて超再生まである。それに肉体としては死んでないから痛覚とかもある。もしかすると、君の取り巻き達も表面に出てないだけで意識はあるかもね。


いやはや迷惑ばかりかけていたお前が有効活用されていて本当に良かったよ」



「ア……う、が、アッ………」



「だけど、お前たちの魔力とその他の寄せ集めだと魔力の回復が追いつかないみたいだね。……よし、これを入れようか」




そう言って虚空から愛莉珠が取り出したのはいくつかの赤黒い宝石が嵌め込まれたペンダントだった。




「──『蝕血紅玉(ブラッド・カースト)』。お前でも聞いたことあるだろ?少量の血を対価に魔力を回復する魔石であの『賢者の石』の劣化副産物さ。いくつか作った事があったんだけど、使い道が限られている上に使うにしてもちょっと難がある。処理しようにもこんなもの捨てるとなると色々手間がかかるんだよ。…………だから、お前たちにやるよ。ほら」




そう言って愛莉珠はその肉団子となったグラウシスたち(・・)に向かってそのペンダントを投げ込んだ。するとペンダントはグチュグチュと粘着質な音を発てて肉団子に沈んでいき、そして………………




「ア………ア、ァ…………ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」




グラウシスはその顔を苦痛に歪ませて絶叫をあげた。肉団子は激しく脈動し表面の肉は引き裂かれて血が吹き出した。



蝕血紅玉(ブラッド・カースト)』。効果だけを聞くと僅かな対価で魔術の燃料たる魔力を回復してくれる便利な魔導具だが実際は違う。



確かに血を与えれば魔力を回復してくれるが、傷がある状態で触れると所有者の体内に侵入して臓器などを損傷させて血を吸い尽くし所有者を殺してしまう。



故に現在では制作することも禁止されている魔導具の代表格である。




「ん〜……、これだけだと痛みで精神崩壊しちゃうな。崩壊しちゃうと生産魔力が落ちるし、なによりお前たちに対する罰にもならない。……よし、他にも入れようか」




そうして愛莉珠は効果は良いが規制があり尚且つ処理に困る魔導具や魔獣の素材を肉団子に入れていった。




「…………よし。これでいいだろう。───お前はこれから僕の大切なハウンドであるリクの子分達の生き餌だ。藻がいても叫んでも誰も助けやしない。死にたくても死ねないし、狂いたくても狂えない。リクが天寿を全うするまで永遠にずっとあの子達に喰われ続けるんだよ」



「……………ぉ、まぇ……」



「…………ん?なに?」



「お、まえ……に、んゲ……じゃ、な」



「僕は人間だよ。僕は人に対しては対等に接する。───それ以外はなにしたって問題ないだろ?現にお前はもう人間じゃない。ボイドでも魔獣でもない。ただの醜い吐き気のする寄せ集めのナニカさ。……………もう取り込んでいいよ。それとリクには見せないでね。それ」




愛莉珠がそう言うと最後まで残っていた魔狼達は頷いて数匹掛りで自分達の巣である理玖の影の中に引き摺り込んだ。途中、グラウシスだったものがなにか言おうとしたが愛莉珠には聞こえなかった。




「さてさて………帰ろうかリク。僕らの家に」




愛莉珠はそうして自分の腕の中で眠る理玖の額にキスを落として帰路に着いた。



書いている途中で私の性癖の一部が出てきてしまいました………

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[一言] 作者の趣味か~ ならしゃあない()
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