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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
22/182

服屋にて

ユグドラシルの商業区域にあるとある服屋にて2人の女性があっちへこっちへ忙しなく動いていた。




「違うでしょ!リクはこっちが似合うってば!」



「そんなわけあるか戯けめ。そこはもっと清楚な感じにするんじゃよ」




そのうちの1人は毎度お馴染みの愛莉珠。手にはワインレッドの甘ロリ風ワンピースが握られており、もう1人は神崎で手にはクラシカルロリータの落ち着いたデザインのワンピースが握られている。



周りには既に購入を決めた服が何着か畳んであり、今もなお増えている。




「ねぇリク!リクはどっちがいいかな?」




と愛莉珠は先程から妙に静かにしている理玖にそう聞いた。




「…………………シャツとズボンで充分だよ」




聞かれた理玖はむすっとした表情のまま不貞腐れた様にそう答えた。彼女が今着ている服は水色の無地の服に薄い赤色のカーディガン、膝辺りまでの可愛らしい白っぽいスカートであり、首にはハート型の金具で装飾された赤い首輪が付けられていた。




「そうするとさっきみたいに男物選ぶでしょ?確かにリクなら似合うと思うけど、やっぱり可愛いスカートがいいに決まってる!」



「……ならせめてロングスカートで」



「それは駄目!だってそうしちゃうとリクの健康的な太ももとか見えないじゃないか!」



「………………もういいよ。なんでも」




愛莉珠の回答に理玖は投げやりな感じでそう言った。紫色の瞳が死んだ魚の様な目になっているのはきっと気のせいではない。



──こうなった経緯を話すには少しばかり長くなる。



まず理玖の首輪は昨夜の件(暴走(仮))のペナルティである。これに関しては理玖は文句は言わなかった。



記憶は曖昧だが、『迷惑をかけた』という感情はなんとなく感じていたからである。……ちなみに首輪を付けるか愛莉珠に美味しく頂かれる (意味深)かという2択だったのだが、真っ先にどちらを選んだかは言うまでもない。



服屋に関しては理玖の持ち合わせの服のバリエーションが少なかったからだ。



元々お洒落など興味がなく、服に金を使うなら食材やらなんやら買うことを優先していた理玖。更に言えば服は着れれば良いという考えを持っていた為、理玖の手持ちの服は寝間着兼普段着用のジャージ3着と学校指定の制服とシャツ3枚、あとは外出用に2着程。



それに愛莉珠はこれはちょっとまずいと考え、ちょうど休みの日だったことで理玖を服屋に連れて行くことにした。



途中、仕事が休みでたまたま偶然出会った神崎も愛莉珠から事情を聞いて同行することになり、まずは理玖自身が服を選ぶという事になったのだが………



理玖は普段の感性からメンズのダボったい地味な物を選んで来た。



不思議と似合ってはいたが、女性2人の感性からは駄目だった様でそこからは愛莉珠と神崎がそれぞれ服を選んで着せていき………



その結果、理玖の着せ替え祭りが始まったわけである。




「さぁ!次はこれだよリク!」



「待て待て、次はわっちじゃろが。ほれ理玖坊、早よ早よ」




子供みたいにキラキラとした表情で際どいチャイナ服を進める愛莉珠にニマニマと面白がる様な笑みを浮かべながら着物ドレスを薦める神崎。



理玖が逃げようと思っても、着慣れない服を着てこの2人から逃げられるかというとほぼ不可能。更に言えば、理玖は昨日の暴走一歩手前の件で負い目を感じている為、逃げる気力がない。



結局理玖は2人の着せ替え人形に徹する事にした。




───ユグドラシルの服屋にコスプレじみた服が多いのには理由がある。



戦乙女(ヴァルキリー)というよりかは魔法を扱う魔術師全般に於いて魔法を発動させるのに必要な主な要素は魔力と知識とイメージ力である。



前者2つは言わずもがな。魔力は魔法を発動させるのに必要な燃料、知識は発動した魔法の制御に必要である。



イメージ力は意外と重要な要素である。



例えば水魔法の『水噴射(ウォータージェット)』。これは名前の通りで水を噴射させる魔法で普通ならば目眩しやら火消しなど使用用途は様々である。



しかし、単に『水噴射(ウォータージェット)』と言っても水の出方は様々。蛇口を捻った時の出方や高圧洗浄機の様な出方などある。



イメージ力というのは自らが思い浮かべたそうした要素を魔法で具現化させるものである。



詠唱や触媒、魔法名などはそのイメージ力の補強の手助けでもある。



そしてこれは戦乙女やハウンドの戦闘用スーツにも適応される。



戦乙女もハウンドも使用能力や魔法は人それぞれであり、衣服や装飾品など使用能力の威力や制御をしやすくする工夫がなされている。



例えるなら服のデザインやアクセサリーで調子が良くなったり、逆に悪くなったりするいわゆる気持ちの問題。



しかしその気持ちの問題が魔法を扱う者にとっては極めて重要な要素である。



また日常生活においても魔力の回復という目的で戦闘用スーツと似たデザインの服を着ることもある。故にユグドラシルの服屋にはコスプレじみた服がいくつかあるのだ。



ちなみに愛莉珠の戦闘用スーツは真っ白で豪華な装飾がある軍服ドレスで使用武器は2本の半曲刀タイプのサーベル。レイチェルはスチームパンク風で使用武器は戦闘改造戦車ポッド。夜奈は炎の紋様をあしらった和風軍服で使用武器は大太刀である。



理玖の場合は能力がまだはっきりと判明していない故に未定である。ただ、ハウンドはバディとなった戦乙女と似通ったものになる傾向がある為、理玖も軍服になる可能性が大いにある。



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― 新着の感想 ―
[良い点] よく考えたらなんでこのキャラこんな服着てるんだって所を魔法は気持ちで威力が変わるからコスプレじみた格好をしてるって設定好き過ぎる [一言] 主人公には是非ともへそ出ししてもらいたい そして…
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