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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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来たるお調子者〜2

理玖が愛莉珠の家に来てから1週間が経過した頃には理玖も今の生活に慣れてきた。ちなみに愛莉珠のセクハラに関しては諦めた。



今日も夕食を作りながら愛莉珠の帰りを待っていると来客を告げるチャイムが鳴った。




「……はーい?」




理玖は一旦料理の手を止めて来客の確認に向かった。そしてドアスコープから覗くとそこには蜂蜜色の髪をした頭にヘルメットとゴーグルを合体させた奇妙な被り物をした女性がいた。




「………どなたですか?」



「どうも!ウチは第二特殊戦闘部隊技術部門長、第1級機巧技師(マキアクラフター)のレイチェル・ローグアリナと言うもんや!家主の礼華っちはおるん?」



「居ません。では」



「いやいやいや待って待って待ってッ!!ちょっとは話しようや?!」




理玖はそのまま玄関から離れて夕食作りに戻ろうとした。愛莉珠から知らない人が来たら無視しろと言われている為である。




「ん〜〜……、しゃあない。開けるか」




と外のレイチェルがガチャガチャと何かし始めて……二重に締めてある鍵が開き始めた。




「…………は?ちょッ、ちょっとッ?!」



理玖は慌ててドアガードをかけるとその直後に扉が開いた。




「お〜!やっぱ可愛い子ちゃんやないか!どうや?ウチとそこで一杯お茶しようや〜?なぁな『──チェストオオオオオッ!!!』──は?なんッブフォオオオオオ?!?!」




理玖を見た途端、ナンパするイケメン擬きみたいな笑みを浮かべてそう言ったレイチェルは荒々しい走りと叫び声と共に飛び膝蹴りをかました愛莉珠によって廊下をバウンドしながら吹っ飛んで行った。




「リク無事ッ!?」



バギャンッ!!とドアガードを破壊して愛莉珠は理玖に飛びついて全力で抱きしめた。




「無事だけどっ……、お嬢に、絞められっ」



「ん?…………あ、ごめん」




愛莉珠の馬鹿力で理玖の身体が上下に分かれそうになったがまぁ……置いておこう。




「な、なぁ、礼華っち。いくら、なんでも……ガチの蹴りは、なくない?ゴフッ」




とここまでズルズルと這ってきたのかちゃっかり入ってきたレイチェル。しかし今にも死にそうな顔で吐血していたが。




「僕の愛しい子犬に手を出そうとしたからだ。ほら、さっさと帰れエロガッパ」



「禿げとらんわぼけッ──ゲフォッ!?」




愛莉珠が非常に冷めた目で言ったことに対してレイチェルは大声をだして否定した瞬間、本格的にやばい量の血を吐いた。そしてその場にパタリと倒れ込み、死にかけの虫の様になった。




「なぁ、お嬢。これ………やばいんじゃないか?」



「大丈夫大丈夫。だってコイツ前に至近距離でダイナマイト受けて生きてたし」



「いやなんでそれで生きてたんだよ……」



「…………なんで2人ともウチを助けようとせんの?」




とさっきまで虫の息だったレイチェルは何事も無かったかの様に起き上がって胡乱げな顔でそう言った。




「ほら治った。リク、紹介するよ。彼女は僕の同期で腐れ縁のレイチェル・ローグアリナ。僕の隊で技術整備顧問をやっているんだよ。ちなみにコイツの得意魔術は再生と解析」



「再生?………あぁ、なるほど。だからすぐ治ったのか。………大泉 理玖です。よろしく」



「おう宜しゅうな!そんじゃ、お邪魔しまー───」



「なに勝手に上がろうとしてるの?ほら回れ右。あ、ついでにドア直しといてね」




と自然な動きで家に上がろうとレイチェルの頭を鷲掴みした愛莉珠はそのままくるりと玄関の方へと促した。




「嫌やぁ!!ご飯食べたい食べたい!礼華っちが自慢しまくる理玖ちゃんのご飯食べたいんや!」



「子供かお前は………ねぇリク。今日はなに?」



「お嬢が食べたいって言ってた北京ダック。付け合わせはそれなりに」



「待ってなんで北京ダックなんか作ってるんやこの子。あれかなり時間かかるやつやろ。やっぱ食べたい!」



「別に食べてもらってもいいんじゃん。沢山あるんだしお嬢の腐れ縁?なんでしょ?交流は大事」



「…………………………………………………………わかったよ」




レイチェルの駄々というよりかは理玖の言葉で渋々……非常に渋々といった感じで愛莉珠はレイチェルを追い出すのをやめた。




「よっしゃああああ!!!北京ダックゥゥ!!」



「あ、こら!待て!」



そうしてレイチェルはドタドタと居間へと走っていき、続いて愛莉珠も彼女を追いかけていった。




***




食卓というのは人が多ければ賑やかになる物である。



「マジで美味いやないか礼華っち!おまっこんな美味いもん毎日食べとったんか!」



「口に物入れたまま喋るなレイ!あ、それ僕のだッ!」



「まだあるから落ち着け」



勢いよく騒がしく食べるレイチェルに釣られ愛莉珠も普段ならあまりしない食べ方をしている。一方で理玖は2人の配膳に回っており、理玖は子供が2人増えた様な錯覚を覚えていた。




「というか理玖ちゃん。こんな美味い料理の腕どこで鍛えたん?」



「バイト先で。俺の保護者の実家でしてマンションの家賃稼ぎの為に働いていました。少し古臭くて大きい店でそこの店長がメニューに和洋中しっちゃかめっちゃかに取り入れたせいで全部覚える羽目になったんですよ」



「ということは大抵のもんは作れるちゅうわけか。なるほどなぁ……」



「作ったことのあるものならですけどね」



「ええのぉ……礼華っちとは大違いやで。昔の礼華っちといえば、全くを火を使わないサラダや、電子レンジを使った調理ですら……全て得体のしれない焦げた何かになってしもうてたからなぁ。今は電子レンジぐらいならばセーフか?」



「さすがにサラダくらいは出来るよ。前に作ったし、ねぇリク?」



「…………あの皮ごと爆砕された人参の山をサラダと言い張るのか?」




理玖にそう言われてサッと目を逸らす愛莉珠。それをゲラゲラと品なく笑うのはレイチェル。今日の食卓は一段と賑やかになっている。




ちなみにその人参の山は風呂上がりにジュースになっている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] TS娘の嫁力はいくら盛っても良い、古事記にもそ書かれている [一言] 家に友達を上げたくない娘とそれを説得する母親みたいだ・・・
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