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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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来たるお調子者〜1

テルゼウスの戦乙女(ヴァルキリー)部隊は戦闘部隊や復興部隊など様々な種類がある。



そんな戦闘部隊の中で有名なのが2つ。



まずは第一近衛部隊。これはユグドラシル局長である柳龍 夜奈を隊長とした精鋭部隊である。隊員全員が1級で隊の中の戒律もかなり厳しい。



次に第二特殊戦闘部隊。これは愛莉珠が指揮する部隊で所属人数も多い。あらゆる局面に対応出来る様に訓練されており、またどの様な能力でも使えれば採用される。



………その為か第二特殊戦闘部隊は変わり者が多いとされている。




***




ところ変わってここは第二特殊戦闘部隊の区域。ここでは隊員の訓練の他に事務作業や武装のメンテナンスなど様々な設備が備え付けてある。



また宿舎と併合して建てられている為、常に人で賑わっている。



そんな第二特殊戦闘部隊……通称、特戦隊に於いて話題になっているのが部隊長である礼華 愛莉珠についてである。




「礼華隊長ってなんか変わったよね。明るくなったというか何というか」



「そうだよね〜。前まではいつもムスッとしていたし」




と2人の隊員が道すがらそんな会話をしていた。



──ボイド都市部襲撃のあの日、万が一の戦力として残っていた隊員が見たのは………



半裸で気絶している茶毛の狼娘を抱え、見た事ない程キラキラとした笑顔で高笑いしながら猛ダッシュする礼華隊長とそれを鬼の形相で追いかける数十人の執行官(ジャッチメント)たち、そして今にも死にそうな顔で必死について行くボロボロになった同僚と先輩であった。



執行官たちは新たに確認された覚醒ビーストである理玖の保護の為、引き渡しを愛莉珠に要求したが念願のハウンド(理玖)を手に入れてテンションがハイになっていた愛莉珠はそれを拒否&全力逃走。



ちなみにこの時愛莉珠か発したセリフがこちら。




『渡すかボケェ!!これからリクを精神的にも肉体的にも離れられない様に仕込ませるんだ!戦乙女?知ったこっちゃねぇ!!それじゃ僕はこれからリクを連れてトンズラするよ!アデューッ!!』




それを他の執行官経由で聞いた保護者たち(日暮と縁流)は直ちにユグドラシル全区域に戦乙女(ヴァルキリー)弱体化用結界を発動させ、何がなんでも愛莉珠を捕まえる為に全執行官に応援要請。更に愛莉珠を指名手配し多額の報酬を餌に他の職員も味方に付けた。




………理玖は知らないが、実は日暮と縁流は執行官(ジャッチメント)の管轄トップである。柳龍局長には及ばないもののそれなりの権限は有しているのである。




しかし、弱体化を受けてもユグドラシル全区域の職員及び住民を敵に回しても愛莉珠は中々捕まらなかった。



それもそうだろう。



テルゼウスに所属する戦乙女(ヴァルキリー)の中でも5本指に入るほどの実力者でもあり、更には理玖とのハウンドとしての仮契約により能力が軽く見ても5倍ほど上がっている。つまり、あまり弱体化が意味を成していないというわけだった。



だが、魔法など戦乙女(ヴァルキリー)の要となる技術は使えない様で常に走り回っていたが。



そうした逃走劇は半日ほど続き、最後は何故か戦闘用スーツ姿となっていた柳龍局長のバーニングラ○ダーキックを真横から受けて吹き飛ばされようやく止まった。もちろん、理玖はキックの際に柳龍局長が回収済みである。



ちなみにそのキックを脇腹にくらった愛莉珠は5つほど鉄筋コンクリート作りの建物を突き抜けて崩壊させたのちに、射線上で待ち構えていた神崎に正拳突きを頭に当てられて気絶した。





……………余談であるが、愛莉珠の暴走した際に発したセリフは柳龍局長の耳にも届いてブチ切れて、亡き妹夫婦の忘れ形見を穢そうとする愛莉珠を粛清するべく完全武装したところを神崎が死に物狂いになって止めていた為、武器無しの戦闘用スーツだけに留まっていたのである。





「あの時の礼華隊長、すんごい勢いで飛んでったよね………」



「弱体化状態であんな破壊力ある蹴りをする局長もだけど、それを耐え切った礼華隊長も凄いよね。そんであの後、後始末の書類整理で4日くらい?缶詰め状態にされてたよね」



「あぁ、そうだったね……」



「───なぁなぁ?何話してるん?」




と2人の会話に第三者が割り込んで来た。




「あ、レイチェル先輩。今話してたのは礼華隊長のことですよ。………そういえば、レイチェル先輩ってよく礼華隊長の家に遊びに行ってましたよね?何か知っていますか?」



「いや全然。最近ウチもアイツの家に行ってらんのよ。それに行こうとすると絶対止められるし。そこまでして自分のハウンド隠したいんかねぇ?」




とレイチェルと呼ばれたその人はそう答えた。



現在、愛莉珠のハウンド……理玖についての情報が全くと言っていいほど出回っていなかった。普通ならば、みんなに自慢するか紹介するなどする。レイチェルが知る愛莉珠の性格からして自慢しないというのはあり得ないのだ。



しかし、愛莉珠は他の隊員や仲のいい同僚に聞かれてものらりくらりとはぶらかして、一向に答えようとはしないのだ。



ちなみに現時点で彼女達を含めた特戦隊の隊員達が知り得た理玖に対する情報は次の通りである。




〜〜

1.身長150センチ程の茶色の毛並みの狼系ビースト。



2.仮契約直後で暴走状態であったものの、大型群行型ボイドを蹂躙出来るくらい強い。



3.魔力に関してはかなり大食い。……これはテルゼウスの戦乙女の中でも指折りに魔力が断トツある愛莉珠が毎日魔力全回復状態で帰って、次の日には5分の1しか魔力残量が残って無かったため。



4.料理が美味いらしい。……愛莉珠の暴走から何日か経った日、手作り弁当を持って来たことから。ちなみにファンシーなキャラ弁だった。



5.男の子みたいな口調らしい……愛莉珠がポロッと漏らした貴重な情報。



6.現在、愛莉珠からエロい意味での調教を受けているらしい。……少し過激目なアダルトショップに入って大量に商品を購入していく愛莉珠が目撃されていることから。

〜〜




「異能力は……武器錬成と超身体能力?あ、でも身体能力はハウンドになれば格段にあがるから武器錬成かな?」



「1つはそれで確定やろ。現場にいたもんが言うには死神みたいなでっかい鎌出してぶん回しておったみたいやし。あとは………捕食系だと思うで。なんかボイドの内側に潜り込んで貪ってたみたいやし」



「……それは魔力枯渇のせいでは?」




そんな風に3人はあれやこれやと考察したが、結局は具体的なものは浮かばなかった。




「やっぱし、直接乗り込むしかないんかなぁ………よし、行くか」



「いや行くって礼華隊長の家にですか?行くなって言われてるって言ってませんでしたか?」



「行くなって言われたら、人は行きたくなるもんや。そんじゃな!」




そうしてレイチェルは2人の静止を背に愛莉珠と理玖が住むマンションへと向かった。

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